要塞都市戦(二)
一
「牢屋?」
詩織は薄暗い通路を進む。その両端には等間隔に牢屋が設けられていた。
「まぁ、監獄って言うからにはやっぱりあるよねー。それにしても酷い光景・・・」
その牢屋の中には、目が死んでいる大人達が倒れていたり地べたに座っていたりした。
詩織は立ち止まらずに奥へと進む。しばらく歩いているとその先には一つの扉が現れる。
「この先、なーんか血生臭いなー」
詩織は扉をゆっくりと開けた。扉の先、その先には悍ましい光景が広がっていた。大人と思しき眷属崩れが子供達を追いかけ回していた。捕まった子供は捕食され、それを上階にあるガラス張りになった客席の様な場所から大人達が談笑しながら笑い、見下ろしていた。その空間は、まるで醜悪な見世物小屋の様だった。
「・・・・・」
詩織は無言で歩き出し、襲い掛かってくる眷属崩れ達を次から次へと鎮圧していく。
「・・・君たちは早く逃げなさいな。ほら、そこの扉から」
詩織に助けられ、生き残った子供達は詩織に一礼すると、開けた扉から走り去って行った。上階では、いまだに大人達が談笑しながらこの悍ましい光景を鑑賞していた。
「ゲス共が」
詩織は上階の客席であろうガラスを破壊しようと、巻物の力で風を起こして飛び、ガラスへと攻撃を加える。しかしガラスは傷一つつかず割れなかった。
(・・・強化ガラスねー)
詩織は上階へと続く扉を探していると、反対側に非常口のような小さな扉があった。おそらく、その先に上階への階段があると思った詩織が、扉へと近づいたその時、自動で扉が開かれ、中から無数の眷属崩れが現れる。
「こんなにいたんだ・・・まったく、同情するよ。哀れな人達・・」
詩織は巻物を一本取り出した。それを広げると自らの手をクナイで傷つけて、自身の血液を巻物に描かれた円に垂らし、詠唱を唱え始める。
「汝、我と契約を契りし物の怪よ、血の盟約に従え」
短い詠唱が終わり、巻物から一匹の悍ましい妖狐が現れる。
「痛いから、これは使いたくなかったんだけどなー。まっ、私ちょっと今機嫌が良くないからねー・・・・妖狐よ、あのゲス共のところへ行き、肉も魂も喰らい尽くせ」
詩織の言葉に反応した妖狐は、立ちふさがる眷属崩れ達の体をすり抜け、上階へと消えて行く。
「さてと、皆殺しだね」
詩織は眷属崩れ達を綺麗に皆殺しにしていく。上階、閲覧席では強化ガラスがあるせいで詩織の耳には阿鼻叫喚は届かないが、地獄の様な光景が広がっていた。
そして同時刻、紅羽はというと、選んだ道の先で行き止まりをくらって立ち止まっていた。
「はぁ、外れか。仕方ない。いったん戻って別の道へ行くか・・・」
紅羽が来た道を戻ろうと振り向くと、そこにいつの間にか一人の子供が立っていた。
「うわっ!・・びっくりしたなー」
「・・・お兄さん一人?」
「ん?まぁ、そうだな。ところで君は何故こんなところに?囚われていたのか?」
「そっか。一人ならいいか・・・・・じゃあ死んでね」
「!?」
突然、子供が紅羽へ向かって走り突っ込んで来る。目の前まで近づいて来ると、次の瞬間爆発した。
ドンッッッ!!!!
凄まじい爆発で行き止まりとなっていた壁が吹き飛んだ。しかし紅羽は咄嗟の判断でその爆発を躱していた。
「あっぶねー!・・・!?」
紅羽は振り返ると、煙の中にさっきの子供が無傷でそこに立っていた。
「避けないでよ!僕だって痛いんだから!」
「何してやがんだ!・・というかなんで生きてんだ!?」
子供は有無を言わせず、再び紅羽へと突っ込んできて、また爆発する。
ドンッッ!!!!
「くそッ!何だってんだ!」
二
「なぁ、ルクスリア殿。暇つぶしに私の話を聞いてくれ」
「はぁ。何だ?」
「子供というのは実に良い武器になる。大人は子供に騙されやすい。特に純粋な者なら尚更だ・・・っとその前に私の素晴らしい武器をお見せしよう」
ジャックは懐から手のひらサイズの小さな手榴弾を手に取ると栓を抜き、遠くへと投げた。そのまま投げた先で、手榴弾は普通に爆発した。
「なんだ?普通の手榴弾じゃないか」
「そう。普通の手榴弾ならここで終わりです。ですが、私が開発した手榴弾は持続性がある爆弾なんですよ!ほら見てごらんなさい!」
ルクスリアは、ジャックが指でさした方向を見る。爆発で起こった煙がはけるとその床にはいつの間にか手榴弾が落ちていた。数秒ののち、それは再び爆発した。
「なっ!?」
「良い反応ですね!こいつは爆発だけを起こし、栓を閉めない限り爆発をし続ける。でもこれには欠点があってですね。まぁ、欠点というか火薬量によって変わるのだが、10回が限界爆発数なのだよ。それ以上は外殻が保てんのだ。しかし!これだけではないぞ!これを死なない子供に持たせると、どうですか!そう、持たせて特攻させるのです!ほら、最強の武器の完成です!悲劇の爆弾と、私は名付けました」
「相変わらず、狂気染みてるな。この下種野郎が!」




