要塞都市戦(一)
三人は街へと入ると、一つの違和感を感じた。見渡す限り、街には子供しかいなかったのだ。道の端で座って、こちらの様子を伺う子、友人と走り回っている子、ただ虚ろに歩いている子。大人は誰一人としていなかった。
「なんだ、子供しかいないぞ」
「どう言うことだ」
「おーい君たち!ちょいちょい、話し聞かせてー」
詩織が、側を走って横切る子供たちに声をかけると、その子供は一瞬立ち止まったがそのまま何も言わず背を向けて走り去って行った。
「え?嘘、傷つくんだけど・・・・」
「はぁ・・・私がいくよ」
糸音は近くにあった家の扉をノックする。すると中から一人の子供が出てきた。
「ちょっといいか?話を聞きたい」
「・・・いいよ」
「ありがとう」
「え?なんで・・マジで傷つく」
三人は家の中へ招かれると、そこには数人の子供がいた。床に座り談笑している子や階段の影からこちらの様子を伺っている子もいた。三人は招き入れてくれた子に案内され、椅子に腰掛ける。
「なぁ、この街はどうなっているんだ?子供しかいないんだが」
「うん。ここはジャック様が統治する街、逆らったら収監される」
「待て。じゃあ、この行為はまずいんじゃないのか?俺たちを招き入れて」
「そう。だからこれは命令なの・・・ジャック様が、もし街に知らない人が来たら家に入れてやれと」
「なっ!?わっ、罠なんかい!なら、傷つかないな!」
「罠か・・・そうだとしてもどっちでもいいだろう。どのみち誘ったのはあっちだ。ここは乗っておこう」
「でも、どうするの糸音?流石に、私はこの場所でゆっくり寝れないよー」
「寝る時は見張りをしながら順番に寝よう。それよりも、この街について教えてくれないか?」
糸音は向かいに座る少年と目を合わせる。少しだけ気まずそうにしながらも少年は口を開いた。
「・・いいよ。でも、約束して。私達を助けて」
「わかった」
「ありがとうお姉ちゃん・・・・この街に居た大人は全員監獄に連れて行かれたんだ。ジャック様が来てから僕たちは奴隷だよ。一五歳を過ぎると強制的に監獄に連れて行かれる。逆らえば殺される・・・・この街を、アイツから・・・ジャックから解放して」
「なるほどな。そういうことか」
紅羽は子供の頭を撫でながら微笑みかける。
「安心しな。そのつもりで俺たちはここへ来たんだ」
「ありがとう」
「なら、ゆっくり寝てる暇はねぇな。ありがとよ少年、邪魔したな」
三人は立ち上がると扉へと向かって、そのまま外へと出る。椅子に座っている少年はその背に心配そうな目を向けていた。
「気をつけてね、お兄ちゃん達」
二
「さて、どうするよ」
「とりあえず乗り込んじゃう?」
「そうだな。私たちがこの街に来たことはジャックはもう知っているだろうしな。今さらこそこそするのは私たちのやり方じゃない。普通に正面から行こう」
「だよねー」
「よっしゃ!行くぜ!」
三人はこの街の最奥にある要塞ロンドルグへと向かう。その道中もやはり子供しかいなかった。
要塞ロンドルグは山から見たら遠くに感じたが意外にも近かった。数分歩いていると三人は要塞の正面へとたどり着く。重工な大きな扉が三人の前に立ちはだかる。
「なんだ?警備はいないのか」
「みたいだねー。とりあえずこの扉ぶっ壊す?」
「そうだな。罠があるかもしれない。堂々と行ったところで罠にかかったんじゃシャレにならないしな。できるだけ慎重に行こう」
二人が頷くと、詩織が巻物を取り出して広げてクナイで穴を刺す。すると、穴から勢いよく稲妻が扉へと走った。大きい轟音と共に扉は一瞬で吹き飛んだ。
煙が捌けると中から眷属崩れ達が糸音達に向かって襲いかかって来る。
「やっぱり来たか!」
「はぁー、しゃあない」
「よしきた!」
三人は向かってくる眷属崩れ達を次々と薙ぎ倒していく。しかし、糸音は一つの違和感を感じた。
「おかしい」
「え?なんだって?」
「こいつら、攻撃してくるというより・・・」
「・・・ただこっちに向かってくるだけみたいだな。それに動きも鈍い」
「今は考えても仕方ないんじゃない。とりあえず、ある程度蹴散らしたら中へ急ごうよ」
「・・・そうだな」
「あぁ」
三人は数匹の眷属崩れを残して、要塞へと侵入、奥へと進んでいった。扉の先は長い廊下が続いていた。廊下は思いの外広くて、薄暗くジメジメした場所だった。しばらく進むと三人は別れ道で足を止める。
「分かれるか。丁度、三本の分かれ道だしな」
「じゃあ、私は右―」
「俺は左」
「じゃあ、私は真ん中だな。くれぐれも気を付けて行こう」
「そうだな。しかし、あいつら追ってこないんだな」
「たしかにー、なんでだろう?」
「・・・・・」
(すでにジャックの罠にかかってしまったのか?・・わからない。今は進むしかない、か)
糸音は妙な不安を胸に一歩を踏み出した。三人はそれぞれ分かれ道を進んで行く。
ちょうどその頃、要塞の最奥のエントランスにてルクスリアは鎖に繋がれて玉座のような椅子に座らされていた。
「おやおや、ようやく来たようですね」
「お前が勝てると思っているのか?糸音も強いが、詩織も紅羽もいる。三人でかかればお前などすぐに殺されるぞ」
「勝てますよ。なんせ私は吸血鬼なんですから。それに夕凪糸音は調べましたからね。くっくっく」
「何を考えている」
「まぁ、そこで大人しく見ておきなさいな」
ジャックは不敵に笑いながら暗闇へと消えた。
(気をつけろよ・・・ジャックは何かを企んでいる・・なんとかして三人と会いたいが・・)




