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天使の探究者  作者: はなり
第五章 忘却再生

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糸音VSライククイーン(二)

詩織が巻物から放った水は時間経過により何事ともなかったかの様に消えた。ルクスリアと詩織は解放された眷属崩れ達に苦戦していた。

 

「おい、マジでそろそろ限界だぞ!巻物はもうないのか?」

 

「残念、これが無くなってしまったんだよねー。もう少しストックしとくんだった。でも助かったよ、もしルクスリアが行ってたら私もこいつらの仲間になってたかも」

 

「相変わらず、腹立つぐらい呑気なやつだな!まぁいい、とりあえず二人は通すことができたんだ。うまくやってくれるといいんだが・・・」

 

眷属崩れ達の攻撃に疲弊してきているルクスリアと違って、詩織は華麗に眷属崩れ達を次々と薙ぎ倒していた。

 

(実際、詩織は平気な顔をしているが、それもいつまで続くか・・・)

 

「おい!詩織、何か手はないのか!」

 

「あるにはあるよー」

 

「あるのか!どんな手だ?」

 

「ルクスリア、私の近くまで移動できる?」

 

「ん?あぁ、了解した」

 

「おっけーい」

 

ルクスリアは詩織にそう言われて、眷属たちの勢いが収まってきたのを見計らって詩織の後方へと下がる。

 

「よし!ルクスリア、ちょっとだけ息止めてて」

 

「え?」

 

詩織は巻物を二本取り出すと広げて、クナイで両方の巻物に描かれた円の中心を刺す。すると、片方からは水が現れてルクスリアと詩織を包みこむ、そしてもう片方からは勢いよく炎が吹き出して、それが龍となり眷属崩れ達を次々と飲み込んで行き、辺りは一瞬で火の海と化した。

数秒後、二人を包んでいた水が弾けて、辺りに雨を降らし炎は鎮火した。あとに残ったのは炎に焼かれた眷属崩れ達の残骸だけだった。

 

「これでよしと、大成功だね。炎で焼いたら再生しなくなった」

 

「・・・ゴホッ!ゴホッ!おい!事前に言ってくれ・・こういうことは!」

 

「あー、ごめんごめん。まぁでも結果、全滅したよ。ほら、この通り」

 

見渡すと再生してくるどころか跡形も無くなり辺りは静かになっていた。

 

「まぁ、結果オーライか。ありがとう詩織」

 

「どうもー、さぁ行こうー・・・」

 

「!?」

 

二人が一歩踏み出したその時、黒い人影がルクスリアの背後に現れた。

 

「な、なんだ!?」

 

一瞬のうちにルクスリアは現れた人影に捕まってしまい、首にナイフを当てられていた。その黒い影は消え、男が一人姿を現した。その姿は真っ黒の紳士服にマントを羽織っていた。

 

「これはこれは、ルクスリア殿じゃないですか」

 

「その声はジャックか!」

 

「久しぶりですね。そちらのレディー、あなたは初めましてですかな。私はジャックザリッパー、この国の新しい王となる者です」

 

「王?・・・まぁなんでもいいけどさー、ルクスリア返してくれない」

 

「なるほど。報告通り、マイペースな方ですね」

 

「何しに来た、ジャック!」

 

「何って、あなたを攫いに来たんですよ」

 

「何の為に・・」

 

「あなたは知らなくていいですよ、それでは」

 

ジャックはルクスリアを気絶させると彼女を抱えて、あっという間に上空へと上昇した。

 

「そこの少女、糸音という少女に伝言を、北で待っているとそう伝えなさい」

 

「あぁ、わかった」

 

「ん?やけに素直ですね」

 

「まぁ返せって言っても返してくれないだろうし。あの二人に怒られるのはいやなんだけど・・だけど一つだけ・・・・ルクスリアには手を出すな」

 

詩織は今までに見せたことの無いほど冷徹な眼光をジャックに向ける。殺気を含むその詩織の眼力にジャックは少しだけ怯んだ。

 

「わかっていますよ。では・・・・」

 

ルクスリアはジャックと共に黒い影となり消え去った。

 

「あーあ、まずったなー。まぁとりあえず行くか」



「どうした殺し屋!そんなもんか!」

 

「くっ!」

 

糸音はライクの手刀の剣舞に押されていた。

斬撃の速さは言うまでもなく、糸音は斬撃一つ一つに神経を尖らせて応戦していく。しかし、さすがの糸音も読めぬ斬撃の動きに自身の動きが鈍る。そして、重い一撃が糸音の体に叩き込まれ壁まで吹っ飛んだ。


「くッ!!」

 

「終わりか?なら死ね!」

 

一瞬で間合いを詰めてきたライクが手刀で糸音の喉元に迫る。しかしその斬撃は糸音には届かなかった。

 

「へーなんだ、まだ生きていたのか」

 

「勝手に殺してくれるなよ、吸血鬼!」

 

瞬時に割って入ってきた紅羽の和刀でライクの斬撃を防いだ。そのまま和刀で薙ぎ払うが、ライクは後方へ飛び華麗に躱す。

 

「大丈夫か、糸音!」

 

「あぁ、助かった・・・」

 

「二人でやるぞ」

 

「面白い!同時にかかってこい」

 

二人はライクへ同時に駆け出す。紅羽の和刀の動きに合わせて、糸音の針剣がライクを襲う。

 

「ほう、さっきよりはマシだな。思ったよりもやるな紅羽とやら、だが!」

 

ライクは紅羽の隙をついて鋭い拳を脇腹に叩き込む。またもや壁まで吹き飛ぶ。

 

「ぐっ!」

 

「良く飛ぶなー・・・それはそれとして、そろそろ異能を使えよ、殺し屋。使えるんだろ?」

 

「言われなくても、もう使っているさ」

 

糸音は空中に固定された音を指で操作する。

ライクは目を閉じて神経を集中させ、音の位置を探るが全く感知できなかった。瞬間、ライクの右腕が音と共に弾ける。そのまま後方へ飛んだライクだが、その場所にも音があり、背中から弾けると、よろけざまにさらなる音がライクを立て続けに音の爆弾が襲いかかる。

 

「や、やったのか!」

 

紅羽が立ち上がり糸音の元へとやってくる。

 

「いや、まだだな」

 

ライクは頭だけになっていたがすぐに再生を始め、元通りになる。

 

「面白い異能だな、しかし全く音の場所がわからない。もし吸血鬼じゃなかったら死んでいたよ」

 

「だめだったか。やっぱり、一気に消し飛ばすしか・・・」

 

「なぁ、お前はどうやって吸血鬼になったんだ?異能を見せてやったんだ少しくらい教えてくれよ」


「何言ってるんだ糸音!今はそんな場合じゃ・・・」


「いいから」


糸音は紅羽の言葉を制して、ライクに向き直る。

 

「ん?いいだろう。俺を一度殺した褒美に教えてやる、これだよ」

 

ライクは懐から小さな赤い液体が入った小瓶を見せてきた。

 

「なんだ?それは」

 

「これはある吸血鬼の血液さ。これを体内に入れる事によって吸血鬼化に成功した」

 

「な、そんな事で吸血鬼になれるものなのか!?」

 

「なるほどそういうことか。通りで眷属崩れが多すぎるはずだ」

 

「糸音、どういうことだ?」

 

「大方、そいつの言っていることは事実だ。本来、人間の吸血鬼化は吸血鬼に噛まれる事によって成るものだ。しかし噛まれると言う行為を省いた事でお前は正規の吸血鬼には成れていない。あまり詳しくは知らないがその行為に意味があるそうだ。しかし、こいつは吸血鬼の血を体内に入れるだけで吸血鬼になった、謂わゆる擬似眷属だ。もちろん正規の眷属では無い者に噛まれた人間はもちろん眷属崩れになる。だが、何故お前が吸血鬼の血液なんて物を持っているんだ?」

 

「ジャックだよ」

 

「なに?」

 

「ジャックザリッパーだよ!あいつが俺に渡した!奴には感謝しねぇとなぁ・・・おかげで俺は吸血鬼となり、この国の均衡を崩すことに成功した。まったく、()()()()は弱すぎたよ。だが!同時期にお前達が現れた。正確には夕凪糸音、お前がな!俺は思ったよ、こいつとなら面白い戦いが、俺の渇きを癒してくれるとな!」

 

「そうか。簡単に情報をくれる馬鹿で助かった」

 

「なんだ?まるで俺を殺してこの場から去れると思っているのか?」

 

「私達がお前を殺すからな」

 

「はっはっはっ!ならやってみろ殺し屋!」

 

「紅羽、何秒あいつを足止めできる?」

 

「そうだな、せいぜい三十秒かな」

 

「十分だ。頼んでいいか?」

 

「了解!」

 

糸音には何も聞かず、紅羽は黙ってライクへと駆け出した。

 

「おいおい!お前かよ!お前には要はないからさっさと死ね!」

 

「悪いな、紅羽」

 

糸音は針と糸を取り出して空中でそれらで編みだす。

 

「はっはっはっ!なにやってんだ、殺し屋が編み物し始めたぞ!」

 

「まったくよー、むかつくなお前。戦いの最中によそ見なんかしやがって」

 

「あん、お前では話にならん!さっさと死ね!」

 

紅羽は凄まじい手刀の雨に襲われてそれらを全て防ぐが、接近したレイクの拳により吹っ飛ばされる。

 

「す・・すまねぇ、糸音」

 

「いや、十分だよ。三十秒もいらなかった。ありがとう紅羽」


ライクがゆっくりと歩きながら迫ってくる。

 

「なんだそれは殺し屋・・・」

 

「ん?まぁ説明するより体験したほうがいいかな」

 

ライクは警戒して立ち止まり、糸音の持っている糸で編まれた筒状の何かを見る。

 

「反響って知ってるか?」

 

「あん?」

 

「お前がさっき起こした手刀の斬撃の音、それに和刀で応戦した紅羽の斬撃の音、私が聴覚で記録したこの場全ての音を、かき集めてこの中に入れたんだ。お前が筒といったこれはラッパって言う楽器だよ」

 

「楽器だと?はっはっは!そんなもので俺を殺せるかよ!」


問題ないと判断したライクは警戒を解いて、糸音へと一気に迫った。ライクが目と鼻の先に迫ったその瞬間。

 

ふっ、本当にお前が馬鹿で助かったよ

 

糸音は糸で作り出したラッパを力強く吹いた。

その瞬間、ライクを凄まじい音波が襲う。至近距離の音波攻撃。それは想像を絶する破壊力だった。

 

「こっ!?・・これは!?」

 

ライクは手を突き出し音波を受け止めるが全く効果がなかった。手から弾け飛び、肩、それから全身が城の壁ごと跡形もなく吹き飛んだ。あとに残ったのは壁に開いた大穴のみ。

 

「さすがに消えたか」

 

糸音はライクが消えたことを確認すると紅羽に駆け寄ると脈を確認する。

 

「良かった、まだ生きているか」

 

「おいおい・・・勝手に殺すなよな」

 

「意識が戻ったか」

 

「アイツは?」

 

「死んだよ」

 

「そりゃ、良かったぜ・・」

 

紅羽はそう言うと静かに目を閉じ眠りについた。

 

「大丈夫そうだが、重症だな。血は止まっているがすぐに手当をしないと」

 

「糸音、どう?って、わぉすごいねこりゃー。何があったの?」

 

そんな呑気な声と共に詩織が現れた。

 

「詩織、ルクスリアは?」

 

「あー、それなんだけど。攫われちゃった」

 

「そうか。いったい誰に攫われたんだ?」

 

「・・・ジャックザリッパー」

 

「やはり狙いはルクスリアだったか。とりあえず紅羽の手当だ、話はそのあとで聞く。ところで確認なんだが下にいた眷属崩れ達は?」

 

「ここにくる途中いっぱいいたんだけど、急に皆んな戦意喪失しちゃってフラフラどこかに行ったよ」

 

「そうか」

 

(なら、本当に殺れたんだな。ルクスリアのことは気になるが、今は紅羽の手当が優先だ)


この時の糸音は自分でも驚くほど冷静だった。まるでこうなることをわかっていたかの様に自分でも腑に落ちていた。

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