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天使の探究者  作者: はなり
第四章 賭博戦場

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ラストバトル(二)

(何も見えない・・視覚を奪われた・・それに嗅覚や聴覚も封じられたらしい。いや、闇にのまれたのか?・・・・ただの闇、これじゃあ目を開けていてもわからないな。だが、奴の気配は僅かに感じる)

 

「では、じっくり殺りましょうか」


(どこにいる・・・・どこから来る?)


シュ

 

闇の中、僅かな殺気を感じ取り、糸見は向かってきた刃物を紙一重で躱す。糸見の頬に鋭く冷たい刃が掠った。

 

「今の躱しますか・・・さすがです」

 

(まだ、感じ取れる・・性格に狙ってきたところを見ると、奴自身はこの闇が見えているという事か・・・それとも、私の気配を察知して・・)

 

糸見はより一層、感覚を研ぎ澄まし針剣を構え、モーティブの殺気、気配を探る。

 

グサッ


(!?)

 

突如、糸見の肩にくないが刺さる。糸見はそれを抜き取り、真っ暗の空間に放り投げる。普通、くないが床に落ちれば音が鳴るはずなのだが、この時は違った。

無音。まるで吸い込まれる様にくないは闇の中へと消えた。


(なるほど。ここには下も上も前も後ろもない。ただの闇の中。無限に広がる、ただの空間か。そう考えると、まだ空気があって助かったな。もしかしたら引き込まれた時点で詰んでいた可能性があった。それにしても殺気・・奴の気配そのものが消えた?・・・・)

 

「私の殺気をよんでも無駄ですよ。それを殺すのも仕事ですからね。最初のは、わざと殺気を出して攻撃をしていました。詰めが甘かったようですね。こういう場合、一回目で決めるより、油断させて二回目で確実に殺す方が確率があがりますから」

 

「たしかに油断・・いや、お前のことを舐めていたようだ。だが次は捕まえる・・」

 

「はったりですか?私が見えない、気配すら掴めないのにどうやって捕まえるというんです?」

 

「・・・・・」

 

糸見はその問いには答えず、深く目を瞑った。この暗闇の空間だと、自分が本当に目を瞑っているのか本当にわからなくなる。

 

(何を考えている、こいつは・・・・まぁどちらにせよ、ここでは私は無敵なのだ。闇の世界、ここでは私の独壇場)


シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、

シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、


モーティブは闇の中、糸見の体の至る所を、くないで斬りつける。

しかし、糸見は目を瞑ったまま微動だにせず、その攻撃を受け続ける。


「ずいぶんと覚悟が決まってますね。それとも、もう諦めたのでしょうか・・・・・・!?」


モーティブの動きが止まる。否、止められた。糸見はくないを持っていたモーティブの腕を掴んでいたのだった。


「捕まえたぜ」


糸見はそのままモーティブの腕を掴んだまま、針剣でモーティブの体へと斬りつけた。

モーティブは咄嗟に自分に向かってくる刃を片方の手に持っていた、くないで弾いた。


カンッッ!


糸見は掴んでいた腕を放し、モーティブを開放する。再びモーティブの気配が闇の中へ溶け込む。


「驚きました。気配を消していたのですが。どうやったんですか?」


「さぁ、感覚かな。それに私は運が良いから」


「ふざけたことを。運などと、・・・確定ではないものに頼るなど、無謀者のやること・・・いいでしょう」


モーティブはくないを捨てた。背中に隠していた得物、小太刀を抜く。そして、モーティブは完全に闇に溶け込んだ。否、モーティブは闇となった。闇そのものとなる。


(わかる。なんとなくだが空気が変わった・・・次で決める気か・・)

 

糸見は目を開けたまま、何も見えない闇の中を見ていた。そして、針剣を構えるのをやめ、腕を下ろす。


(こいつ・・この期に及んで、まだ運というものに頼るのですか。いや、それとも諦めたか・・まぁどちらにせよ、次の一撃で確実に仕留めます)


時間にして数秒、体感では数分ほど経ったかに見えた。糸見は未だ構えようとはせず。

そして、モーティブの小太刀が糸見を襲う。


グサッッ!!


瞬間、小太刀は糸見の心臓を正確に突いた。完全なる死をモーティブは糸見にもたらした。


「どうやら、あなたの運もここまで・・・・!?」


モーティブが小太刀を抜こうと手を引いた。だが、その小太刀はピクリとも動かなかった。いつの間にか、その腕は糸見によって完全に捕えられていた。

 

「ばっ、バカな!?」

 

「二度目だぜ」

 

糸見は針剣でモーティブを切り裂いた。

 

「くっ・・・!?」


直後、闇は消え、糸見はいつの間にか先ほどまでいたカジノにいた。


「ボス!?」


「大丈夫だ、シーバ」

 

糸見は心臓に刺さった小太刀を引き抜いて、倒れるモーティブの眼前に放り投げる。

 

「さすがに、痛いな。それにしてもまんまと嵌ったな」


「どういうことだ!?」


「首か心臓だったんだろ?でも、お前は心臓を狙った。私の運が勝ったんだよ。それにお前の言った通り、一回目で油断させて、その気にさせる。そうすれば二回目に失敗した時の衝撃は大きい。隙が生まれやすい。勉強になったよ」

 

「運だと!?・・なら心臓を突かれても死なないのは運のおかげと言うのか!!あの時、完全に心臓を突いたはず!?」


「そうだな。確かに普通なら死んでいた。でも、私には糸がある」


「どういうことだ!?」


糸見はニヤリと笑みを浮かべ、自身の心臓のあたりを指刺した。


「ここには、盾があるんだよ」


「盾、だと・・」


「あぁ。糸の盾だ。あらかじめ編んでおいて良かった。私の心臓は、幾多にも編んだ糸の壁で守られている」


そう。糸見はつい数日前、自身が殺そうとした妹弟子がやってのけた()を使ったのだった。


「糸の壁・・はっは、なるほど。やはりあなたは・・・」


モーティブの意識はそこで途絶え、動かなくなった。


「妹に感謝だな」

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