セカンドゲーム(二)
シーバはついに追い詰められてしまった。シーバを取り囲むは武器を持った、少年たち。
「あっちゃー!やるじゃないか若者達よ!最後に話しくらいは、聞いてやるよ」
「何言ってんだ、おっさん。普通、そういうセリフはこっちが言うもんだぜ」
若者の中からリーダー格っぽい男が出てきた。
「いやー、おっさんとしての優しさよ。ところでおめえがリーダーか?」
「だったらどうする?」
「いや、どうもしねー。仲間を正しい道へと導くのがリーダーってもんだよ。それにおかしいなー。追い詰められたのは俺の方だけど。オメェらの面の方が、よっぽど追い詰められたって感じだぜ」
「うるせぇおっさんだな。何を言われようが、お前をやればシファさんが解放してくれるって言ってんだ。なら死に物狂いで人だって殺すさ」
「ほうほう。しかし仮にだが、お前が俺を殺ったとして他の連中は同じ恩恵を受けれるのか?」
若者達はシーバのその言葉にソワソワしだした。不安が生まれる。
「何だと?」
「考えてもみろ。お前だって本当に解放してくれるかわからないんだぞ?それにお前だけの手柄になれば、他の連中はどうなる?何されるかしらねーが、きっと良くないことが待ってるかもなー」
「そ、それは・・・」
(よしよし、いい感じだぜ)
「さて、そんな少年たちに一つだけ道を示してやろう。俺たちと手を組まねえか?」
「な、何を言ってやがる?」
「ここでお前が俺を殺すか、それとも協力してシファを全員でぶっ飛ばすか、どうする?決めるのはお前達だ。きっと、解放なんてねーぞ。ならいっそのこと、反逆ってのも悪くねーんじゃねーか?従う理由なんてあるのか?そもそも。まっ、若者の力ってやつを見せてくれるとおじさんとしちゃ嬉しだけなんだが」
すると、一人の男が前へ出てきてシーバの前で振り返る。
「俺は・・・おっさんにつくよ!」
「て、てめぇ!?」
「おっさんの言う通りだ!俺たちが救われる保証なんてどこにもない!カジノで騙された腹いせだ!俺には失うものはない!ならいっそ、シファに犯行して死んでやる!」
その波は一人の少年から始まり、伝染していく。また一人、また一人と、少年を筆頭に次々に武器を手放して、シーバへとつく。
「てっ、てめぇら!そうか、そうか・・・全員、報告してやる!俺は一人でも生き残るぜ!死ねやっ!」
リーダー格の若者がシーバの前にいる少年に棒を振り上げた。だがそれは、シーバによって腕を掴まれ、棒は取り上げられた。その隙に後ろから、リーダー格の若者は一人の少年に棒で殴られ気絶した。
「終わったな。おめえらの覚悟、心意気よしッ!だがな、死に急ぐような真似はやめておけ・・・というわけで、地下に行くぜ!」
シーバは若者たちを連れて地下へと向かった。
ニ
「しぶといですね、あなたは」
フィは武装した若者から巧みに逃げ回っていた。
だが、それも長くは持たなかった。刺されたダメージが時間を経て、フィの体力を奪っていた。そして、フィはついに追い詰められてしまう。
「ようやく限界が見えてきたな。さて、これで終わりだ」
若者達はじりじりとフィに迫ってくる。その時、階段から無数の足音が聞こえてきて、若者達の群れを引き連れたシーバが現れる。
「ようよう!フィ!生きてっか?」
「シーバ・・・やるじゃないか」
「な、なんだ!?貴様ら私の命令に叛くのか?このくそガキ共がッ!」
シファは激怒していたが、そんなことに恐れることはなく、一人の若者がシファの前へと出てくる。
「シファさん、俺たちはあんたの道具じゃない。たしかに、あんたから金を借りたのは間違いだった。だけど、あれは全部イカサマだった。それを指摘することさえ許されないここは悪の巣窟。俺たちから巻き上げた金は、もういらない。俺たちはここから出る!」
「何を偉そうに!!金を借りた分際で、何言ってやがるんだ!」
「たしかに借りた俺らが悪い。けどアンタには従いたくない。いや、従う必要がない」
「ふざけるよ、ガキ共が!もういい。お前らは皆殺しだ、やれ吸血鬼共」
シファの合図で頭上から五匹の吸血鬼が落ちてきて、若者達に牙を向く。
「おい、フィ!こいつらはいいんだよな?」
「あぁ!やれ、シーバ!」
「あいよ!」
次の瞬間シーバは若者達の間をすり抜けて吸血鬼を蹂躙していく。
「なっ、なんだこいつは!?これが人間の力か!?」
シーバの力技に困惑し、驚愕するシファをよそに徐々に距離をつめて行くフィ。それにシファは気づかなかった。
「っぐ!?・・しッ、しまった!?」
フィはシファに近づくと自身の手をシファの肌に触れさせる。しかしそれは、シファではなかった。シファの顔は剥がれ、一人の見知らぬ男の顔に変わる。男は声を上げることなく倒れた。
「ばっ、ばかな!?」
「やっちまったな!お前が殺したのは、私が顔を変えてやった男だ!私は他人の顔も変えられるんだ。奥の手は隠しておくもんだぜ!」
声がする方、先ほどフィを追いかけていた少年集団の中にシファを見つけた。
「くっそ!やられた!」
「し・か・も!!お前が殺した男は、さっき上の階から埒ってきた客だ!ルールにはな、客に危害を加えてはいけないとあったが、あれも言葉通りの意味だ!厳密に言うと、生命の危機に瀕した場合のみだ!そして!お前が攻撃したそいつは、死んだ!これは紛れもないルール違反だ!勝ったぞ!!虫けらが!!」
「フィー!?」
(そうだったのか・・・・ここで終わりか)
「シーバ、ボスによろしく、おねがいしますね。あとはお願いします」
フィは笑顔でそう言うと、突然、吐血し倒れる。ルールが執行された。
「ようやく一人目か・・・くっそ!この虫けら、私の靴を血で汚しよって」
シファは倒れるフィの顔を足で踏みつける。
「てめえーーー!!!!!」
シーバはその行動に激怒し、シファに接近すると殴りかかる。だがしかし、再び吸血鬼が起き上がりシーバの前に立ち塞がる。その隙にシファは少年集団の中に紛れて隠れる。
「くっそが!こそこそしやがって!」
「さて、どうするんだシーバくん?」
若者達の中からシファの声が届く。明らかにシーバを挑発するような言い方で。
「隠れやがってっ!」
(奴はどこだ?何かないか!・・・こんなに呆気なくフィがやられるはずがねぇ!何かあるはずだ、こいつの能力を破る方法が)
シーバは吸血鬼の攻撃を躱しながら思考を巡らす。
(お願いしました、だぁ?何をすりゃいいんだ?フィのあの言葉には絶対に何かある・・・アイツとは一番長い付き合いだからわかるんだ。何だ。考えろ俺!馬鹿な頭で考えるんだ。血を吐いて派手に死にやがってよ、アイツ・・・ん?派手に、死ぬ?・・・らしくない事だな・・・そうか!!)
シーバはハッとして、地下にいる人物を見渡す。吸血鬼から若者達、顔も姿もバラバラ。だがシーバは見つけた。フィが残したヒントを。
「やっぱり、そういうことかよフィ!」
シーバは少年集団の方へと走り出した。そして一人の少女目掛けて、重い拳を握り殴り飛ばした。少女は軽く壁まで吹き飛んで激突する。
「見つけたぜっ!シファさんよー」
少女の顔は崩れ、シファの顔が現れる。シファはフラフラになりながら立ち上がる。
「なッ、なぜわがっだ!」
シファは顔が腫れていてうまく喋れなかった。
「おうよ!フィの血だよ」
「な、なんだど!やづの、血?」
「あんたの靴についた血だ。フィの吐いた血はな、特別な血なんだ。アイツはそれを歯に仕込んでいた。その血にはな、時間が経つと色が変わる仕様になっている。それをお前の靴に吐いたんだよ。流石に、毒を含む血は隠せねーか。それにあのフィが、派手に血を吐いて死ぬかよ。そんな馬鹿で派手な死に方は俺にしか似合わねぇ」
「ばがな!だどじでもあいつはじんだぞ!はっはっ!どうするごれはっ!」
「たしかに死んだ。だがアイツの吐いた血を見て思い出したぜ。その血は毒入りなんだよ。効力は、一時的に心臓を止めて仮死状態にする。解毒薬はフィが持っているから、それを飲ませれば生き返れるってわけ。おめぇの完全敗北だ。てなわけで俺は、フィとフィが殺っちまったこの青年を担いで上へ行く」
「まで!まだ俺はじんでないっ!はっはっ、お前ばがが!」
「いいや、お前は死ぬ。ほら、見てみろ」
「ん?」
シファは言われて周りを見て見ると、若者、少年達が殺気に満ちた目でシファへと近づいていた。
「まっ、まて!おまえだぢ!そっ、そっ、そうだ!金だ!金をやる!な、なっ、頼む!」
「じゃあな、下種野郎」
シーバは振り返らず二人を担いで階段を上がっていった。その背後からはシファの酷く醜い断末魔が聞こえてきた。




