セカンドゲーム(一)
第一のルールのあな、武器の仕様について。
ルールは言葉通りに、はたらいている。
一般的な武器の使用以外は可能。
例、糸、コインなど。
これはおそらくだが、見たままで殺傷能力があるもの。
例えば刀や銃はルール上、武器として判定されている。兵器類は使えないだろう。
第二のルールのあな、客への攻撃行為について。
これは多少、肩が当たった程度ではルールには抵触しないようだ。
おそらく、客が攻撃されたと認識すれば、ルールに抵触する可能性はある。
あくまでルールがジャッジするため、客に危害を加えていないのに、客自身が攻撃されたと言うなどの嘘は通用しない。
最後のはあくまで推測だ。
以上、情報共有。
すまない、今戦闘中なんで手が離せないが、これだけは共有しておく。
「ボス・・・ありがたい。それにしても、やはり戦闘中でしたか」
(敵は誰なのか・・・まずは情報がいるな。操られている若者に聞くか・・それが一番手っ取り早いが。しかし、嘘をつかれる可能性は高い。そうなってしまえば私たちはルール上、死は免れない・・・なら、他のこのフロアにいる若者から情報を聞き出すか。あの二十人の顔は頭に入っている。それを躱しつつ、それ以外の客から情報を手に入れる。少しはリスクは減るが、もし操られている人間があの二十人以外にいたとしたら・・・それも考慮した上で警戒しつつ聞き込みをするか。それまでシーバがもつのかどうか・・・迷っていても仕方がない。とりあえず聞き込みだな)
フィは思考をまとめ、ゲーム機の影から出てきて、若者へと聞き込みを開始する。
苦戦するかに思われたが、案外あっさりと情報は手に入った。
(ん?あんたさっき、アイツらに追われてたよな?はっは、遂にアイツら追い剥ぎでも始めたのかと思ったぜ。・・・ん?あー、アイツら、たしか借金あるとか言ってたからなー。っんでー、この店の高利貸し?シファさん、っていう人に金を借りてるんだとよ。あの人から借りたらもう終わりよ。あの人から金を借りたら一生の奴隷になっちまうからな。バカだよね。遊びすぎたんだよアイツら。俺らくらい、適度に遊んでる方が一番いいんだよ。あ、そういえば、このカジノで金を借りて返せなかったりしたら、地下に連れて行かれるって噂があったなー。シファさんはそこの運営を行ってるって噂だぜ。奴隷の働きぶりをみて、地下に連れていくらしい。実際、俺もシファさんに連れて行かれる連中を何度も見たことがある。・・・・え?地下に何があるかって?詳しくは知らないが、よほどヤバい目にあってるんじゃねーの。まぁ、あんたらも気をつけなよ。・・・・シファさんの容姿かー・・・まぁ小柄な人?かな・・こんなこと言うと殺されっけど、見た目からして子悪党って感じの人だぜ)
「敵の名前はシファか。小柄な男か。そんなやついくらでもいるが、まずはそいつを見つけるか」
フィが一歩前へ出た瞬間、目の前をシーバが横切った。
「おう!フィー!!どうだ?」
「あぁ。敵の情報を手に入れた。小柄な男で名前はシファというそうだ」
「少ない情報だな。・・・そういやさっき、小柄な男なら地下へと行くのを見たぜ」
(地下・・・おそらくそいつだな、行ってみるか)
「すまん、シーバ。もう少し耐えてくれ。私は地下へ行ってくる」
「マジかよ!できるだけ早くな!まぁでも、限界来たら、そっち行くぜ!」
フィは地下への階段を見つけると、階段の側にいたスーツの男を気絶させる。階下を覗く。底が見えないほど真っ暗な階段だった。フィは意を決して階段を下りる。
「なっ、なんだここは!?」
フィは驚愕した。階段を降り、たどり着いた地下には予想外の光景が広がっていた。
そこには地下格闘技の会場があった。
普通の格闘技会場だと声援や熱気に溢れているものだが、フィが目にした先にはそんな物は無く、ただリングと思われる鳥籠の中で数人の若者が殺し合いをしていた。その若者たちの目には光は無く、まるで人形の様だった。
「これが、このカジノの秘密・・・」
「おや?バレてしまいましたな」
声のする方を振り向くと、小柄で陰気な男が一人、こちらへと歩いて来ていた。
「お前が、シファか。たしかに、子悪党だな」
「ふん・・・えぇ。しかし、上の連中は一体何をしているんだ。侵入者を許すなんて。お仕置きが必要だな」
「今頃私の仲間、シーバと鬼ごっこでもしてますよ。ところで、ここは何だ?」
「ここは、人身売買の品定めの場所さ。上で役に立たなくなった客を、ここで殺し合いをさせて、勝てば夜月家に売り渡す。いわばリサイクルさ。借金をして返せなくなった屑どもでも金になる素晴らしいビジネスだ。夜月家は頑丈な実験体が手に入り、私は懐が潤う。まさにウィンウィン」
「なるほど。噂は本当だったようだな。それで、親玉が出てきて大丈夫なのか?どう見てもお前は戦闘向きじゃないと思うが」
「あぁ。もちろん私は戦わない。その代わり、この子達が戦う」
シファが指を鳴らすと頭上から三人ほど人が降ってきて、フィの前に立ち塞がる。しかし、フィが人だと思っていたそれは、人ではなかった。それは正気を失い、鋭い牙を剥き出しにした獣の様な顔つきでフィを睨みつけていた。
「吸血鬼か・・」
「そうそう、吸血鬼。私専用のペットだ。安心しなよ、そいつらはもう客じゃなく化け物だからルールの外だよ。ちなみに言うと上の奴隷たちも客ではないけどね」
「そうか。なら遠慮なく」
三匹の吸血鬼は、まるで獣が餌へと飛びつくようにフィへと襲い掛かる。フィは向ってくる、鋭い爪や牙を軽く躱し、距離を取る。
「おー、すごいな、やるじゃないか。だが、いつまでもつかな」
「チッ、仕方ない!」
フィは隙を見て、懐から小瓶を出して自身の手にかけると、向かってくる吸血鬼を躱し、順番に手で触れていく。すると、吸血鬼は突如、悲鳴を上げ始めた。
うぎゃああああああああああああああ!!!!!!!!!!
「なっ、なんだ、どうした!?」
「へぇー、吸血鬼にも有効な毒もあるんですね。これは勉強になった」
吸血鬼の体が次々に崩れていく。
「これで、終わりだな・・ん?誰だ?」
先ほど、シファがいた場所には見知らぬ少年がいた。
「シファはどこだ!?・・・いや、そんなことよりも早く、逃げ・・・!?」
ドスッ!
フィは鈍い痛みを感じ振り返るとそこには、目の前の少年と瓜二つの小さな少年がナイフでフィの背中を刺していた。少年は不敵に笑いながらフィの体からナイフを抜き、後ろへと下がる。
「くっそ・・なんだっ・・」
「はっはっは。騙されやすいやつだ。いやー、優しいねー。これは私の異能、ドッペルゲンガー。体を二分したり、顔や姿を変えれる能力だよ。だからほら!」
シファは顔に手を翳し手を振ると、次から次へと顔が変わる。
「ふざけた能力だな」
(まずいな。致命傷にはならなかったが、この異能、厄介だ。間違えて客を攻撃してしまうリスクがある)
「さぁ、続きだ」
シファの周りにはいつの間にか若者が集まり、シファを守る様な陣形をとる。
「はぁ、やっぱり厄介な奴だ。この下種野郎・・」
フィは会場内を逃走する。若者達はフィを追い、一斉に駆け出した。この殺伐とした地下で一対大多数の鬼ごっこが始まった。




