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天使の探究者  作者: はなり
第三章 動乱平定

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ヘルフェブル夜戦(五)

C地区での槍士達の戦闘が始まるのと同じ頃、A地区では吸血鬼の成れの果てと化した住人たちが跋扈していた。しかしそれらは、A地区へとやって来た神無とミツギによって一瞬で制圧された。

 

「弱すぎる」

 

「たしかにな。僕でも余裕だったよ、神無」

 

「たしかにお前でも余裕だな。ここには何も無さそうだ。さっさと志貴とやらと合流しよう」

 

「いや、神無。先に槍士くん達と合流しよう。志貴さんなら一人でも大丈夫そうだし」

 

「っち!」

 

「こらこら、女の子が舌打ちはダメだよ」

 

「うるせぇ。あいつらなら大丈夫だろ、威勢は良かったし」

 

「それでも先に合流した方がいいよ。志貴さんだってそうするだろうし」

 

「やけに信頼しているな、あの志貴って男のことを・・・夕凪志貴か・・あの男、いったい何を考えているのかわからん」

 

「神無もだろ?」

 

「・・・・」

 

ミツギの言葉に無言で怒る神無。神無にとっては見知らぬ男と一緒にされた事は心外だったらしい。

 

「ごめんごめん。それはそうと、神無」

 

「あぁ、わかってる」

 

二人は持っていた武器を構える。先ほどから神無たちの様子を影からこちらを見ている人物がいた。

 

「バレバレだぜ」

 

神無が少し煽るように言うと、近くにあったビルの影から一人の男が出てくる。

 

「二人の名前は?」

 

「はぁ?まずはお前が名乗るのが先だろ。まぁいいや。私は神無、こっちはミツギだ」

 

「ちょっと!僕の自己紹介とらないでよ」

 

「くだらんことで、いちいちうるさいなぁ」

 

神無は呆れてため息をつく。そんな二人のやりとりを見ていた男は、その小柄な容姿で妙な雰囲気を纏っていた。

 

「俺はテディ・・獣操る」

 

男はそう名乗ると、ビルの中から虎、ライオン、象が出て来た。

 

「まずは・・お手なみ」

 

神無はその現れた動物たちを見て場違いなほど腹を抱えて笑う。

 

「あはっはっはっはっ!勘弁してくれ・・はっは!ここは動物園かよ!」

 

「神無、笑いすぎ」

 

そんなふざけた神無の様子を見て、テディは憤怒した様子で怒号を浴びせる。

 

「てめぇらーーー!!!バカにしてるのか!!この俺っちの可愛いペット達をよぉ!!ころす!ころす!ぜったいころすっ!!!」

 

ひとしきり叫んだ後、テディは思いっきり、持っていた鞭を地面に叩きつける。それに反応して動物達は雄叫びを上げ、神無たちへと襲いかかる。

 

「うっるせぇーなー。やるぞミツギ」

 

「言われなくても、もう来てるって!」

 

神無は向かってくる虎、ライオンを華麗にあしらい、持っていた小太刀で二頭の猛獣の首を斬りつける。ミツギの方へと向かった象は、ミツギの持つ縄によって足を引っかけられてバランスを崩し盛大に倒れた。

 

「はっは!相変わらずの馬鹿力だな、ミツギは」

 

「ふぅ、笑ってる場合じゃないよ」

 

「っは!バカだな!・・油断大敵」

 

テディがそう言うと、首を斬られ確実に死ぬはずの攻撃を受けていた倒れた虎とライオンがゆっくりと立ち上がる。

 

「なんだと!?」

 

「俺様は獣達を鼓舞する戦士・・そして息絶えたとしても操ることができる。俺っちのペットは、無敵」

 

闇に眼を光らせた虎とライオンが再び、神無へと襲いかかる。しかし神無は笑みを浮かべたまま向かってきた二頭の獣達を躱し、そっと手で触れた。


バタ、バタ

 

「!?」

 

神無が触れた瞬間、まるで魂でも抜かれたように獣達は動かなくなり倒れる。

 

「何が起こったんだ!?何故、俺っちのペットがぁ!?クソッ・・いっ、いけっ!象!女の方をころせー!!!」

 

「うぁぁぁ!!ちょっっとーー!」

 

ミツギが縄で縛っていた象はミツギを引っ張って神無へと突進してきた。

しかし神無は、またも華麗に躱すと象の体にそっと触れる。次の瞬間、象の目はさっきまで血走っていたがおとなしくなって、先の猛獣たち同様にその場に倒れた。

 

「まさか・・お前・・宗谷のだんなが言ってた通り、異能を消す力持ちか!」

 

「なんだよ、知ってるならそんなに慌てんなよ」


「ふへへへ、当たりだ!当たりだぞ!」

 

テディは、まるで子供が玩具を与えられた時の様に、その場で飛び跳ねて喜びだした。その様子にムカついたのか、神無はそれを冷たい目で見る。

 

「お前、ムカつくな。殺していいか?ミツギ」

 

「待って!ダメだよ神無。なんか様子がおかしいぞ、こいつ」

 

パチンッ


テディは突然、指を鳴らした。その瞬間、地震でも起こったかの様に地響きが鳴り響く。


ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!

 

「なんだ!?」

 

「これは地震!?」

 

神無とミツギは何かヤバいものを感じて辺りを警戒しつつ身構える。

 

「来いーーー!夜月のキメラッ!」

 

テディの声で、地面から三階建てのビルに匹敵する大きさの巨大な獣が現れた。その外見はライオンの頭に、魚の尾に、何かわからない獣の体に、足と手は鷹と虎のような入り乱れた奇妙な怪物。

 

「なっ!?化け物じゃないか!神無逃げるぞ・・・ん?」

 

ミツギは慌てて背を向けて逃げようと神無の方を見ると、神無は笑っていた。まるで、その怪物を見て喜んでいる様だった。

 

「ミツギ・・コイツは殺してもいいんだろ?」

 

「神無!ダメだ・・って言ってもやるんだろな」

 

「わかってるじゃん!」

 

神無は駆け出して、化け物キメラに向かって小太刀を振りかざして飛びかかる。そのままキメラの背中に小太刀を突き刺し、線を描くように尻尾の先までキメラの背中を走り抜ける。ミツギは神無が飛びかかるのと同時に、縄をキメラの足元に次々に絡めていた。

 

「いいぞ!ミツギ!そのまま倒せ!」

 

「はいよ、っと!」

 

キメラは神無による攻撃で背中から血が噴き出し、凄まじい雄たけびを上げる。

 

ぐおおおおおおおおおっっっっっっ!!!

 

「キメラ!何をしている!早く立て!動けっ!」

 

テディは鞭を地面に叩きつけキメラを鼓舞する。それに答える様にキメラは立ち上がると振り返り、背後にいた神無に向かって走り出した。

 

「来るか!」

 

神無は小太刀を構え、凄まじい速さで向かってくるキメラの突進を躱す。

 

「デカブツのくせに速いな」

 

「神無!もう一度、こかすよっ!」

 

「おーけー!ミツギ!」

 

再びキメラに向かって小太刀を構え飛びかかる神無。同時にミツギは、キメラの足を縄で引っかけてこかす。

 

「ふぅ。また上手くいったね、神無」

 

「ん?・・あぁそうだな」

 

喜ぶミツギに反して、神無は余りにもつまらなさそうに返事をする。

 

「どうしたんだ?神無」

 

「いや・・・」

 

そんな二人とキメラの交戦を見ていたテディは地団駄を踏んでいた。それはまるで子供が駄々をこねているように。

 

「くそっ!くそっ!くそったれーーー!なんでだーー!キメラは、俺っちのキメラは最強なんだぞ!クソどもがぁぁああ!」


「・・・・・」


神無は思った・・・神無はいまだに誰にも負けたことがなかった。無敗。あの咲夜遊にさえ互角で、張り合えるほどの実力者だ。そんな彼女は強い奴、強い者なら誰でもいいから殺し合ってみたいと思っていた。闘争本能。そして、そんな事を今、思ってしまったのだった。思ってしまったのだから、そして同時に気づいてしまったからやることにした。

 

「そうか、なるほどな。はっはっ・・そりゃ、そうだよな。お前だってそう思っているんだろ?」

 

「何を言ってやがる!立てぇ!!やれ!キメラ!」

 

「おい!神無!」

 

神無は向かってくるキメラを、ただただ呆然と見つめていた。そして向かってきたキメラを動かず、躱さず、ただ片手を突き出して止めた。瞬間、あれほど荒れ狂っていたキメラの動きがピタリっと止まった。

 

「なっ、なんだ!?おい!どうしたんだ、キメラ!」

 

「これで、自由にやれるな」

 

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

 

キメラは突如、雄叫びをあげる。その眼は先ほどまでの血走る眼ではなく、熟練の戦士の様な眼をしていた。それは戦士としての叫びだったのかもしれない。そんな雄たけびを上げるキメラの横を、神無はミツギの方へと軽快に、そして悠々と歩いていた。そんな様子を見ながらミツギは気づいた。

 

「そうか!あいつの能力は洗脳。神無はそれを異能で解いたのか!」

 

「あぁ、でもここから踏ん張らないとまずいかもだぞ、ミツギ。ヤバかったら、私を置いて逃げてもいいぜ」

 

「え?何言って・・」

 

うあああああああああああああああああ!!!!!!!!

 

瞬間、情けない悲鳴が辺りに響き渡る。テディはキメラに捕まっていた。それは怪獣が人間を食す時のような掴み方。乱暴に、粗雑に、手に掴んでいた。

 

「わかった!わかった!謝るよ!・・・・うぎゃああああああああああああああああああああ!」

 

凄まじい断末魔を上げて生きたまま食べられるテディ。見るに堪えない光景がそこにはあった。

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