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天使の探究者  作者: はなり
第三章 動乱平定

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ヘルフェブル夜戦(一)


神薙での戦いが始まった同時刻、東の街ヘルフェブルの廃ビル群地帯に入った五人の男女がいた。

 

「本当に大丈夫なのか?そこの姉ちゃんは強そうだが、そっちのメガネは弱そうだぜ」

 

「失礼ですね。ねぇ、神無」

 

「ふん、どうでもいいだろ」

 

「どうでも良くは無いよ!神無は強そうって言われて悦に浸ってるかもだけどさ」


「悦になんか浸ってねーよ!」

 

「先輩、今のは失礼ですよ」

 

「おいおい、真宵もそう思うだろう?」

 

「はぁ・・人は見た目で判断してはいけませんよ、先輩」

 

「まぁまぁ仲良くしなよ。君たち」

 

志貴は同行者四人を宥める。黒髪のショートヘアの、少しあたりの強い女は神無といい。スーツ姿でメガネの少し小柄な男はミツギという。二人は咲夜遊が面倒を見ている部下で、今回、志貴達と共にヘルフェブルでの任務にあたっていた。

 

「ミツギ君はともかく、神無の方は強いよ。遊にも劣らないんじゃないかな」

 

「ひどいですよー志貴さん」

 

「悪い悪い。ミツギ君も、よくあの遊の傍若無人さについていけてるよね」

 

「それ褒めてないですよ。まぁあの人は自由な人ですから」

 

「自由か・・たしかにあいつは自由人だな・・・さて、そろそろだね」

 

五人で談笑をしながら進んでいると分かれ道にたどり着いた。廃ビル群地帯は主に三つの地区で分けられている。高層ビルが倒れ瓦礫が多いA地区、いまだにビルが綺麗なまま残っているB地区、そして工場などが多かったC地区に分けられている。

 

「さて、じゃあ僕はB地区に行くよ。あそこは比較的、綺麗な場所で住みやすいし隠れやすい場所だ。まぁ根城にするならあそこだろうしね。それで・・・・そうだな。真宵と槍士はC地区、A地区には神無とミツギが向かってくれ。四人は主に情報収集を頼むよ。もし敵と遭遇しても無理はしないように。もし大きな戦闘が起こっても街を守れるように一応市長に言って、ビル群と街の境界には警官兵をたくさん配備しておいたけど、まぁとは言っても戦闘はほどほどにね。それと何かあればさっき渡した救難信号を飛ばしてくれ」

 

「了解っす!・・ってか、ほどほどにって先生が言うか、それ」


「はっは、それもそうだね。まぁ無茶苦茶にしないように気を付けるよ。さて、では作戦開始っと!」

 


「どう思う?真宵」

 

志貴達と分かれてC地区の工場地帯に入った槍士と真宵。辺りには人の気配も無く、暗くどこか寂しい雰囲気。この場所は昼間でも暗いが、所々申し訳程度の街頭が灯っている。そんな場所を辺りを警戒しながら歩いていた。


「唐突ですね。何がですか?」

 

「今回の任務だよ。こないだの学園襲撃といい、なーんかきな臭いんだよなー」

 

「また感ですか。まぁ先輩の感は当たりやすいんで勘弁してほしいですけどね。そんなことよりも譲葉が心配だ・・」


「心配すんなよ。今回はあの最強のツグハ先生と病院の先生、えーと・・エオールさんが護衛してくれてるじゃねーか」


「たしかにそうですけど。やっぱり心配だ・・」


「はぁ、そんなんで足元狂って死ぬなよー。まっ、それにしてもこりゃビル群っていうか工場地帯だな。ビルが物悲しく、申し訳程度に立っているぜ」

 

「ここは昔、産業が盛んな地区だったそうですよ。港も近いので貿易もここで行なっていたみたいです。今の市長さんは貿易などをしなくても街は安定してるから無駄だって言って海での流通はストップしたらしいですよ。その貿易以外での資金はどこから来るのやら・・・それとそこの物悲しいビルは、おそらくここで働いていた人たちの社員寮か何かでしょう」

 

「社員寮・・たしかに・・・まぁ、あの市長も怪しいところだらけだよな」

 

そうこう話しているうちに一つの錆びれて屋根のない工場に辿りついた。

 

「とりま、ここに入ってみるか」


「そうですね。でも気を付けてください先輩。ここに来るまで人がいませんでした。流石に誰かいてもおかしくないのですが・・・何か僕も嫌な予感がしますね」


「気を付けて行こうぜ」


「ちょっと待ってください。一応、ここは二手に分かれましょう。幸い、この工場は屋根がないですからそこのビルの中から援護できそうです」

 

「なるほどな。俺は特攻役か」

 

「先輩の専売特許でしょ。まぁ、こそこそやるのは僕の専売特許ですから。適材適所に。一応、僕は狙撃手なんで」

 

「そうだったな。まっ、援護は任せたぜ」

 

槍士と真宵は二手に分かれて、それぞれの役割を果たしにいく。


「さて、入りますか。中に誰かいるかも知れねーからな・・・・おっじゃましまーす!」

 

槍士は場違いなくらい元気よく工場の扉を壊した。その声はビルに入ろうとしている真宵にまで聞こえていた。


「あの人、本当にバカですね。今後一緒に仕事したくはないですね。教室でもうるさいですし・・・」

 

工場の中に入ると、そこには数百人ほどの人が居た。しかし正確にはそれ人ではなかった。暗くて見えなかったが月の光が当てられ、それらの姿が晒される。

 

「おいおい、まじか。こいつら全員吸血鬼かよ。いや、なれの果てってやつか・・・こないだので、こりごりだってのによ!まっ、腕試しには丁度いいか!」

 

槍士は実際、路地裏や学園襲撃での一件であまり役に立てなかったことを悔いていた。そんな後悔と共にチャクソウ片手に次々に吸血鬼を薙ぎ倒していく。


ぐわーーー


ドン!

 

槍士の背中を襲おうとしていた吸血鬼が銃声と共に倒れる。

 

「先輩、頑張ってくださいね」

 

真宵は隣接しているビルの中から吸血鬼達を狙撃銃で狙い撃つ。

 

「助かるぜ、真宵」


槍士は戦いの中で自分が強くなっていることを実感していた。なにも、ここまで成長できたのは持ち前のポテンシャルだけではなかった。それは、糸音たちとの学園での生活が主に影響しているのだろう。そしてあの夜、糸音の路地裏での戦いを間近で見て、共に戦った槍士はあの時の糸音の戦闘をトレースしていた。経った数日で、ここまで立ち回れることができるのも、槍士の対象を見てトレースする能力が長けていたおかげだろう。

そして、槍士は数分のうちに工場を制圧し終えた。真宵はその様子を見て、槍士のいる工場の中へと入り合流する。

 

「さて、終わったな。こっからどうしようか」

 

「この辺りには人の気配がないので、いったん出ましょうか。別の工場を見てみましょう。同じようにこの化け物がいるかもですし」

 

「そうだな・・ってか、こいつらこんなにいっぱいいるのに全然気配がなかったな」


「たしかに、そうですね。暗殺、向きですね・・」

 

二人で話ながら出口に向かい歩いていると後方から男の声が聞こえてきた。


「おいおい、何してくれてんのかなー?」

 

「なんだ、志貴じゃなくてガキ二人かよ、つまらねー」

 

二人組の男が工場の反対側の空けた扉から槍士たちの方へと歩いて来る。

 

「何だ、お前らは?」

 

「先輩、こいつらは夜月と未凪です」

 

「夜月と未凪だと。何故こんなところに?」


「本来、未凪は夕凪の傘下だけど。先日裏切りがありましたし、おそらく裏で繋がっていたのでしょう。なるほど、できれば捕えて事情を聞きたいですね。しかし最悪だ・・・」


「あれ?そっちの方は真宵じゃねぇのか。はっは、こりゃあ好都合、ヤシラ!真宵は俺に殺らせろ!お前はそっちのガキを殺れ!」

 

「夜月とは組むことにはなったが、命令を聞く気はない。だが、まぁいいだろう」

 

「真宵!お前は爺さんが、もう殺せって言ってたわ。用済みだな。あと、えーと、なんだっけか・・・あっ、譲葉の方は引き続き攫って来いとよ。そういや、譲葉はかなり可愛いくていい女に成長したって言ってたな。攫っちゃう前に何回かヤっちゃうかもね」

 

瞬間、真宵は懐から取り出したナイフでカラクへと一瞬で間合いを詰め、斬りつけるが、カラクはそれを笑みを浮かべながら自身の刀で弾き返す。

 

「おいおい、そんなに怒るなよ」

 

「カラクッ!この下種野郎が!妹に近づいたら殺すぞ!」

 

「やってみろよ!夜月から逃げ出した、臆病者のくそガキがよー!」

 

「真宵・・・あいつ、夜月だったのか」

 

「おいっ!俺の前でよくそんなよそ見ができるな」

 

ヤシラは槍士に向かって持っていた斧を投げる。咄嗟の判断で槍士はギリギリで躱すことができた。

 

「あっ、ぶねえ!てか、また未凪かよ!」

 

「またって・・あー、そういやそうか、お前がハイヤを殺った男か」

 

「誰だそれ?」

 

「っふ、アイツ、ガキになめられたまま逝ったのか。ざまぁ」

 

「知らねーが、なんか不愉快だぜ、おめぇ」

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