ぶっ壊したる
一
またルナのせいでお姉ちゃんに迷惑がかかってる・・・どうたらいいんだろう・・あぁ、どうしてルナって弱いんだろう、泣き虫なんだろう、どうしようもなく悪い子なんだろう・・・これはルナが悪いの?それとも・・この世界がルナにあってないの・・お姉ちゃんは好き、大好き・・お姉ちゃんはきっと、ルナが弱くても、泣き虫でも、たとえ悪い子でも、優しく接してくれるし、きっと悪いことしたら優しく叱ってくれる・・・・・だけどルナは、ルナのせいでお姉ちゃんが不幸になるのはいや・・・・二人で幸せがいい・・・でも、わがままはここまでだよね・・・だから・・・だから私は・・・
「やめるんだルナ!私の声が聞こえないのか!」
「・・・・・」
ルナのその冷たい眼には光は宿らず、ただただ冷たく悲しい刃だけがルナへと振りかざされ続けている。空しくもルミの叫びはルナの心には届かない。
(だーかーらー、言ってるじゃんか。そんなちっぽけな叫びなんて届かないよ。そろそろ、飽きたな。なんか、だらだらしてて煩わしいしなー。見物って言ってたけど、まぁいいか・・・神様は気まぐれだし・・・・よし、ルナに指示でも出すか)
「何をする気だ!」
「・・・・」
ルナは動きを止めて、自らの喉を刺すように両手でナイフを構える。そして、喉元へと刃を突き立てた。
「やめろーーーー!!!」
ルミは駆け出した。幸いにも距離が近かったおかげで、ルナの持つナイフを掴むことができた。しかし、ルナは凄まじい力でナイフを喉元へと近づける。
(あーあー、すごいね。まさかその力に対抗できるとは・・・少しだけ私の念が入って力は増しているはずなんだけど・・・人間って面白いね)
「どこまでも、ふざけやがって!ルナ!!目を覚ますんだ!そんな奴のいいなりになるんじゃない!私の目を見ろ!!」
ルナとルミの視線は合うが、しかしその黒い瞳はルナを見ていなかった。
二
「いったい何がどうなっとるんや!涼香さんもこーへんし。まぁ、幸いにもさっきの騎士はもう起き上がってこなそうやな。衝撃波も出んくなったし」
「メイ、どうですか?状況は」
メイがどうしようかと考えあぐねていると、扉の方から涼香が悠々と歩いてきた。
「あっ、涼香さん!良かった・・お菓子の巨人は?」
「・・?・・そんなモノいましたっけ?」
「ふん、またご冗談を・・ん?」
メイは唐突に耳に違和感を感じた。最初は気のせいだと思ったが、それは次第に認識できるようになった。声、というか心の中へと直接、声をかけてくる人物がいると感じた。
「涼香さん・・なんか聞こえます?」
「ん?さっきから何を言っているんですか。そんなことより今は状況を教えなさい」
(・・お・・さん)
「ちょっと、待ってください!」
「ん?」
涼香は何のことかわからず、首を傾げた。一方、メイは響く声に耳を、心を集中させる。
(おねえさん!)
メイは心の中で誰かに呼ばれた。その声には聞き覚えがあった。その声の主の姉は今、傍らで寝ている。メイは目を閉じ、感じる声に集中した。
(やっと通じた!私、ルナ。今、僅かに残った精神体の方であなたに語りかけてるの。まだ、こっちは自我を保てているのだけど、それも時間の問題なの)
(ルナ!どういうことや?)
(お姉さんにお願いがあるの。私が入っている球体わかる?)
(おう、今も触れられるで・・)
(だめっ!!!)
「!?」
「どうしましたのメイ?」
メイは球体に手を伸ばした瞬間、急な大声に驚き手を引っ込める。
「なんもないです・・」
(おい!びっくりするやんか!なんや?)
(ごめんね・・今球体に触れちゃうとお姉ちゃんと一緒で、ルナの世界に入ちゃうの。まぁ正確には違うんだけど。とにかく触らないで)
(なんやて!ほいじゃ、そこにルミもおるんやな!)
(いるけど・・今は戦ってるのお姉ちゃんと、無理やりね)
(なら、尚更触ってそっち行くわ!)
(だめだよ!・・とにかく、だめ!それでさっきの話の続きだけど、お姉さんにはやってほしいことがあるの)
(まぁ、わかったわ。ほいで、やってほしいことってなんや?)
(ありがとう、お姉さんにはルナの入ってるこの球体を壊してほしいの)
(なんやそんなことか!よっしゃ、任しとき!・・っと言いたいところやけど、これ壊したらルナが死ぬとかはないやんな?)
(うん・・・それでは死なないよ。私の中の夢人が作り出したモノだから。ルナたちは今それに捕えられているの。だから、壊して出してほしいの)
(夢人?・・なんやわからんけど、大丈夫なんやな!それじゃ、ぶっ壊したるわ!)
メイは立ち上がり、気合いを入れるために頬を張る。
「メイ、さっきからどうしたんですか?ふざけてないで状況を・・」
「すんません、涼香さん。ルナから頼まれまして」
「ルナさん?どういうことですか?」
「説明は後です、これを壊します!」




