大切なもの
「メイ、と言ったか。お前には兄妹や家族はいるか?」
「ん?おるで!母さんが、てかどうしたんやいきなり」
「まぁ、ちょっとな・・兄妹や姉妹はいるのか?」
「おらんなー。欲しいとは思ってるけどな。でも糸音とはもう姉妹みたいなもんやけどな」
「糸音?」
「そう!夕凪糸音、涼香さんの妹でうちの親友、っていうても最近知り合ったばっかやけど」
「・・それって本当に親友なのか?」
「せやで!そんなん、一緒におった時間なんて関係ないしな!たとえ昨日会ったとしても、親友ってうちは言うで!だって、肝心なんはその時間でどれだけ相手のこと知って、自分のことを伝えるかやろ?要は大事なんは中身やっちゅうことやな!うちはそう思う!だから、ルナもルミも語ろう!これが終わったら語ろう!」
「暑苦しいな・・・まぁでも、たしかにそれは分かる気がするな。・・・私の家族はルナだけだった。親友、家族、姉妹、そんな言葉では言い表せないくらい、あの子は大切な存在なんだ。だから、絶対に何があっても助ける」
「なんや、言うてルミも暑苦しいやんけ。まぁ、うちはそう言うの好きやけど」
「そうか・・・なぁ、もし私に何かあったら妹を頼んでいいか?」
「何言うてんねん!ルナもルミも、涼香さんも母さんも全員で帰るんやで!まぁ、うちに任せとけって!」
「頼りないが、今はそれでも頼りになる言葉だな」
その時、初めてルナが表情を和らげた。メイは少し照れくさそうに顔を伏せる。
「何言うてるねん!・・・おっ、そうこう喋ってたら着いたみたいやで」
二人は階段の終わり、大きな扉の前へとたどり着いた。
キー、キー、キー
扉を開け、中へ入るとそこには大広間が広がっていた。その中心にガラスの球体のようなものが浮いていた。その中にはルナが目を閉じて浮遊していた。まるでそれは死んだ様に。
「ルナ!」
「これはなんや・・いや、さっき言っていたみたいに拒んどるんか」
「どういうことだ」
「・・なんでガラスの城なんやろって思ってたけど、ガラスって硬いやろ。それに冷たいっていうイメージや。そんなガラスの城の中の奥の部屋で、ガラスの球体の中におる。まぁそういうことやろ・・・これはきっとルナの心を表してるんかもしれんな・・・なんかちょっと切ないな」
「言ってる場合か!とりあえず、近づいてみるぞ!」
「・・せやな」
二人は球体へと近づく、しかしその時、近くに置いてあった騎士の置物が二体動きだした。
「!?」
向かってくる騎士は二人へと剣を振り下ろす。真正面からのその攻撃を二人は容易に躱す。ガラスの騎士は、後退した二人を見て剣を構え、攻撃の体制をとる、がしかし追撃はなかった。
「どういうことや・・」
「なるほど。おそらく、近づいたら攻撃されるってことだな。単純な攻撃、これもルナの心の影響なのか・・・」
「くっそ、二体か。倒すしかないな。まぁ幸い、見た目のわりには弱そうや!」
「あぁ、やれるのか?」
「もち!傷は癒えたし!」
「強がりを・・」
ルナはふと、メイの体を見る。さっきの戦いで自分が与えた傷、手の負傷、腹の傷、どちらも綺麗に傷が塞がっていた。
「お前、それ・・」
「時間無いしいくでー!」
メイはルナの言葉を遮り、駆け出す。それに続きルナも駆け出す。
「うちは右!」
「あぁ」
案の定、二人の騎士は動き出した。こちらへ向かってくることはなく、剣を構え迎撃の体制を取っていた。
「なめられたもんやな!」
シュンッッ!
薙いだ剣は躱され空を斬る。メイとルミは同時にかがみ、拳を構えて打ち出す。
ガンッ!
鈍い音が響き、二体のガラスの騎士は球体の後ろへと飛んでいき壁に衝突した。
ドンッッ!!
「良かった!もしかしたら分身かと思たけど、手ごたえあり!」
「よし、このまま球体へと・・」
ルナが球体へ近づき触れようと手を伸ばす。
ドンッ
「!?」
ルナは球体から放たれた謎の衝撃波により吹き飛ばされた。
「なるほどな・・やっぱ拒んでんねんや」
「くそっ!どうしたらいいんだ!」
「落ち着くんや。とりあえず置物はぶっ飛ばした。・・そうやな」
メイは思考する。今まで戦いの最中に考えるなんてしたことがなかったが、無意識のうちに思考していた。それはきっと、糸音との戦いや、学園での日々の中で知らず知らずのうちに頭を使うことを学んだのだろう。
(異能でなんとか・・・うちの電撃・・衝撃波・・)
「・・よしゃっ!ルナ!あれに近づけるかもしれんで!」
「ほんとか!どうすればいい?」
「うちの異能を使うんや!」
「?」
「ええから、任せとき!ルナはそのまま、あれに走れ!」
「なんだかわからんが、わかった!」
言われてルナは駆け出す。メイは目を閉じ自身に流れる電流を呼び起こす。そしてそれを体に巡らせるとその全てを手に集中させた。
(できた・・これを・・)
メイはさらに集中する。今まで戦いの中で、これほどまでに集中したことはなかった。それは知り合って間もない敵のためなのか、救うという正義の心からきているものなのか、当人ですらわからなかった。
「来るっ!・・メイ!」
球体から衝撃波が放たれる。ルナの声で目を開けたメイは手に溜めた電流を一気にルナへと飛ばした。
「おい!私に当てる気か!」
「いや、お前じゃないよ、当てるのはな!」
メイが放った電流は走るルナを追い越して、球体から放たれた衝撃波へと当たる。
バチッッ!!!
「へー、やるじゃないか!・・ありがとうメイ」
衝撃波はメイの放った電流が相殺した。この機を逃すまいとルナは球体へと近づく。
「よっしゃ!行け、ルナ!!」
ドンッッ!!
二人のその声に反応してなのか、球体が再び衝撃波を放つ。
「大人しくしときいや!!!」
メイは再び、手に電流を溜めて衝撃波を相殺する。そして、ルナはそっと球体へと触れた。
ピカッッ!!
触れた瞬間、まばゆい光が辺りを照らす。その閃光にたまらず目を閉じたメイが次に目を開けた時、ルナは球体の前で倒れていた。
「ルナ!!」
メイは横たわるルナへと駆け出し、体を揺さぶったが反応がなかった。
「・・死んではないんか・・どうなったんや」




