The gears of fate turn(二)
一
紅羽は血相を変え、治安維持局の司令室へと続く廊下を早歩きでルクスリアのもとへと向かっていた。
「おい!落ち着け紅羽!」
その後ろを追う糸音が宥めるが、紅羽は聞かなかった。
ドン!
紅羽は怒りのまま扉を豪快に開け、ルクスリアへと近づくと胸ぐらを掴んだ。
「ふざけるなよ!!!どうなっているんだ!?」
「おい、紅羽!」
「すまない、紅羽」
「すまないだと!それで済む話じゃねぇだろ!」
「紅羽、まずは話を聞こう」
糸音が紅羽の肩に手を置いて怒りを静める。
紅羽はルクスリアから乱暴に手を離すと、ソファへと座る。
「すまねぇ。許してしまった俺の責任でもある」
「いいや。これは私の責任だ。ひとまず、部下からの報告を伝える。話はそれからだ。捜索に向かわせた私の部下二人の報告によると。本来の任務である盗賊の確保は完了していたそうだ。ブライト地区の街道で捕えられて気絶していた盗賊が見つかったがしかし、二人の姿が無かったそうだ。恐らくは帰りの道中で何かあったと見ていいだろう。手掛かりは今のところ無しだ」
「くそっ!お前の嗅覚でもどうにもならないのか?」
「私も一度、早々に現地に向かったが、何かで匂いが完全消えていた」
「手掛かりは本当にないのか?」
紅羽が意気消沈していると、黙って聞いていた糸音が口を開く。
「ひとまず動こう。三人で手分けして探すぞ。今回は私も参加していいな、ルクスリア」
「し、しかし・・」
「親友がいなくなったんだ!じっとしていられるか!」
「紅羽」
「あぁ、仕方ない」
「三人でブライト地区へ向かうぞ。二人が入れ違いで帰ってくる可能性も考えてミナモさんにも情報を共有しておこう。それとルクスリアの側近の雛菊さんにも」
「あぁ、わかった」
二
事が起こる三日前、ミンダルの近くの森で椿達二人はブライト地区の街道にて盗賊達を気絶させて縄で縛り、ミンダルから派遣される治安維持局の部隊の到着を待っていた。
「いやぁ、簡単だったね」
「そうですね、余裕でした!」
「これでようやく兄さんやルクスリアの手伝いができる」
「私もこれから椿姉さんと一緒に仕事ができるのが楽しみです!」
「よろしく!」
「はい!」
「・・!?」
二人が話していると、どこからともなく現れた霧が辺りを包んでいった。
「なにか変だぞ!気をつけろジータ」
「はい!」
(敵か!?でもこの感じ・・)
「うっ!」
「ジータどうした!かっ!」
二人は何者かに背後から殴られて気絶してしまった。
やがて霧が晴れていき、二人の男が現れた。
「宗谷さん、とりあえず気絶させましたけど、どうしますか?」
「あぁ、とりあえず。あれを誘い出す為のエサだからな、一応記憶を読み取って私に共有しろ」
「わかりました」
男の一人がジータと椿の頭に手を翳し、目を閉じた。数分後、男が目を開けて立ち上がる。そして宗谷の頭に手を近づける。
「なるほどな。ジータという娘の記憶はつまらないが、こっちの娘は面白いことができそうだ」
「んで、どうしますか?」
「とりあえず、近くの川へ。そこで仕掛ける。簡単に終わってしまってはつまらないから、匂いや痕跡は消しておけ」
「わかりました」
三
治安維持局を出て翌朝、ルクスリア一行はブライト地区にやって来ていた。
「まさかこんな近道があるとはな」
「あぁ。この地方に詳しくないと知らない抜け道ってやつだ」
「それで匂いはどうだ、ルクスリア?」
「微かにするな。以前来た時は全くしなかったのだが」
「なら、罠かもしれねぇな」
「慎重に行こう。おい、紅羽。大丈夫か?」
「あぁ、問題ない」
「そうは見えないぞ。お前昨日も寝ていないじゃないか。少し休め」
「寝れるかよ。こんな状況で」
「しかし・・」
「紅羽。ルクスリアの言う通りだ。気持ちはわかるし、こういうことはあまり言いたくないが、こういうときにこそ冷静にだ。焦り、憔悴すると足元を掬われる」
「そう、だな。三十分ほど休む」
「あぁ。安心しろ。少し辺りの様子を見てくる。ルクスリア、川の音は聞こえるか?昔この辺りに来たとき川があったはずだ」
「川?・・そうか、川だ!近くに川があったから匂いが消えていたのか。それ捜索に来た時この森は霧で覆われていた。それが重なったせいか」
「霧?雨でも降っていたのか?」
「雨は降っていなかったな」
「雨も降らず発生した霧・・おかしいな」
「今は考えても仕方ない、行こう」
二人は木陰で眠る紅羽を残し、川の方へと向かう。




