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夜中に、誰かが鳴いている  作者: 宍戸 耀


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第4話 見回り

第4話 見回り


家の中は静かだった。


朝、みんなが出ていってから、俺はずっと家の中を見回っていた。


昨日までに、どうやらこの家では妙なことが起きているらしいと分かった。


正体の分からない音。


急に逃げ出す圭一。


何かを気にしている家族。


俺がいない間に、こんなことになっていたなんて思わなかった。


だったら、俺が何とかするしかない。


長い間この家にいたんだ。


家の中のことなら、よく知っている。


一階。


廊下。


台所。


居間。


玄関。


特に変わったところはない。


そのまま二階へ上がる。


カタン。


カタン。


廊下。


それぞれの部屋の前。


窓の近く。


念のため、何度か同じ場所も確認した。


けれど――。


「何もないな」


怪しいものは見つからなかった。


変な音もしない。


誰かが入り込んでいる様子もない。


俺は最後にもう一度廊下を確認してから、圭一の部屋へ戻った。


机の上まで行き、いつもの場所で休む。


「よし。見回り終了」


とりあえず、今のところ異常はない。


あとは、みんなが帰ってくるのを待てばいい。


この時間は、昔から家に誰もいないことが多かった。


父親と母親は仕事。


圭一は学校。


昔と変わらない。


「仕事が終わったら、のんびりできるな」


俺は机の上で休むことにした。


こうして静かな家にいるのも悪くない。


昨日までは、帰ってくるだけでも大変だった。


ようやく少し、前みたいな生活に戻れそうだ。


どれくらいそうしていただろう。


しばらくすると――。


ガチャッ。


玄関の扉が開く音がした。


続いて、


「ただいま」


と声が聞こえる。


圭一だ。


「帰ってきたか」


俺はすぐに動き出した。


圭一。


俺にケイという名前をつけてくれたのも、圭一だった。


ずっと昔のことだ。


今でも覚えているかどうかは分からない。


でも、俺にとっては大切な名前だ。


「迎えに行くか」


机の上から降りる。


部屋を出て、廊下を進む。


階段へ向かった。


一段。


カタン。


もう一段。


カタン。


静かな家の中に、小さな音が響く。


すると、下の方から聞こえていた圭一の動く音が止まった。


「……何?」


声が聞こえた。


どうしたんだ?


俺はそのまま降りる。


カタン。


カタン。


しばらくして、


「……何の音だよ」


圭一の声が聞こえた。


なんだ。


気づいてくれたのか。


俺は少し嬉しくなって、そのまま一番下まで降りた。


玄関に圭一がいる。


こっちを見ている。


「おかえり」


当然、返事はない。


たぶん俺が話している言葉は、人間には聞こえてない。


それでも、圭一はしばらく階段の方を見ていた。


昨日はなかなか気づいてもらえなかったけど、今日は違う。


少しずつ、前みたいに戻っているのかもしれない。


「……何もない、よな」


圭一が小さく言った。


何を言ってるんだ?


俺はここにいるぞ。


圭一はしばらくそのまま階段の方を見ていた。


それから靴を脱いで、二階へ上がり始める。


「あれ?」


部屋に戻るのか。


だったら俺も戻ろう。


圭一が一段上がる。


俺も後を追う。


カタン。


圭一の足が止まった。


振り返る。


「……え?」


俺も止まる。


どうした?


圭一は階段の下を見ている。


少しして、また一段上がった。


俺も上がる。


カタン。


今度はすぐに振り返った。


「……なんだよ」


なんだと言われても困る。


部屋に戻るんだろ?


俺も戻るだけだ。


圭一はしばらく下の方を見ていた。


それから急に、階段を駆け上がった。


「お、おい」


危ないぞ。


そんなに急いだら転ぶだろ。


俺も慌てて後を追う。


カタン。


カタン。


カタン。


圭一はそのまま自分の部屋へ飛び込んだ。


俺が部屋へ着いた時には、ベッドの近くに立っていた。


息がずいぶん速い。


階段をあんな勢いで上がるからだ。


「どうしたんだ?」


部屋の中を見回す。


何もない。


さっき見回ったばかりだ。


怪しいものは見つからない。


やっぱり異常はなさそうだけどな。


圭一はしばらく部屋の入口の方を見ていた。


それから机へ向かう。


鞄を置く。


ポケットから、あの薄い四角いやつを取り出した。


またそいつか。


いつもの場所へ置く。


しかも、白くて細いものをつないでいる。


しばらくすると表面が明るくなった。


「何してるんだ、こいつ」


本当に妙なやつだ。


圭一は椅子に座り、そのまましばらく薄い四角いやつを触っていた。


俺も机の上へ戻る。


やっぱり前より狭い。


こいつがいるせいだ。


昔はここ、俺の場所だったんだけどな。


少し時間が経った。


俺は時刻を確認する。


そろそろ五時だ。


「もうこんな時間か」


昔なら、このくらいになると圭一は机に向かっていた。


最近は少し生活が変わったみたいだけど、時間はちゃんと知らせた方がいい。


今日は見回りも終わった。


家の中にも異常はなかった。


だったら、あとはいつもの仕事だ。


五時を知らせる。


ベルを鳴らした。


――ジリリリリリリリリッ!


「うわあっ!?」


圭一が椅子から立ち上がった。


「な、何!? 何!?」


部屋の中を見回している。


ちゃんと気づいたな。


これなら時間を忘れることもないだろう。


ところが。


圭一は動かなくなった。


しばらく部屋の中を見ている。


それから机の上の薄い四角いやつをつかんだ。


「……まただ」


また?


何のことだ?


圭一が部屋の入口を見る。


「この部屋……」


どうした?


少し間があった。


「この部屋、やっぱり無理!」


そう言うと、圭一は勢いよく部屋から飛び出していった。


「おい?」


なんで出ていくんだ?


せっかく五時を知らせたのに。


勉強はどうするんだよ。


圭一が階段を駆け下りていく音がする。


その直後だった。


ガチャッ。


玄関の扉が開いた。


「ただいま」


母親の声だ。


帰ってきたらしい。


続いて、


「母さん!」


圭一の声が聞こえた。


ずいぶん大きい。


「どうしたの?」


母親の声。


そのあと、


「また……」


と、圭一の声が聞こえた。


でも、その先はよく聞き取れなかった。


何かあったのか?


俺は机の上で少し考えた。


さっき家の中は確認した。


変なものはいなかった。


それなのに圭一は急に部屋を飛び出した。


また何か起きたんだろうか。


下から二人が話している声が聞こえてくる。


ところどころ圭一の声も聞こえる。


でも、ここからでは何を話しているのかまでは分からない。


「……心配だな」


もう一度確認した方がいい。


さっき見つけられなかっただけかもしれない。


圭一をあんなふうにさせる何かが、この家にいる。


だったら、今度こそ見つけないと。


俺は机から降りた。


部屋を出る。


廊下を進む。


階段の下からは、まだ圭一と母親の声が聞こえていた。


俺は二人のいる一階へ向かって、


ゆっくり階段を降り始めた。


カタン。

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