表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『恋物語のあとしまつは、モブメイドの仕事です。』  作者: てぃな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/22

7

コンコン。


扉が軽く叩かれた。


「失礼します。」


修繕係の制服を着た青年が顔をのぞかせる。


エリックだった。


「マーサさん。」


「修繕報告書です。」


「ありがとう。」


マーサが受け取る。


その後ろから、もう一人ひょこっと顔を出した。


「こんにちはー!」


明るい声。


栗色の髪をくしゃっとかき上げた青年が、にこにこと笑っていた。


「ロイ。」


エリックがため息をつく。


「勝手に入るな。」


「いいじゃん、休憩中なんだし!」


ロイは部屋を見回し、リアに気づいた。


「あれ? 新人さん?」


リアは慌てて立ち上がる。


「は、はい! リアと申します!」


「俺、ロイ!」


「修繕係!」


「エリックの同期!」


「よろしく!」


勢いに圧倒されながらも、思わず笑ってしまう。


「よろしくお願いします。」


ロイは満足そうに頷いた。


「よし!」


「エリックより先に仲良くなった!」


「競争じゃない。」


エリックが静かに言う。


部屋にまた笑い声が広がる。



帰り際。


エリックは扉の前で足を止めた。


「リア。」


「はい。」


「昨日。」


少しだけ間が空く。


「床、きれいだった。」


その一言だけ残して歩いていく。


リアは少し驚いて、その背中を見送った。


「……ありがとうございます。」


小さく呟くと、隣でマーサが微笑んだ。


「修繕係はね。」


「床なんて、普段は見てないんだよ。」


「え?」


「つまり。」


マーサは紅茶を一口飲んだ。


「ちゃんと見てくれてたってこと。」


リアは照れくさくなって、カップに目を落とした。


ほんの少しだけ。


今日の紅茶は、昨日より甘く感じた。



その日の仕事を終え、私は新しいページを開く。


あとしまつ記録 第003号


担当者:リア


業務内容


・大広間 点検


・報告書整理


・休憩室 清掃


備考


仕事のあとに飲む紅茶は、不思議と心まで整えてくれる。


そして、誰かに「きれいだった」と言ってもらえると、明日も頑張ろうと思える。


私は手帳を閉じ、小さく笑った。


「今日も、お疲れさまでした。」


その言葉は、誰に向けたものでもない。


王宮で働くみんなへ。


そして、自分自身へ。


そう言って休憩室の明かりを消すと、窓の外では、次の式典の準備がもう始まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ