6
春宵舞踏会から一夜明けた朝。
王宮は、昨夜の賑わいが嘘のように静かだった。
磨かれた床には、花びら一枚落ちていない。
窓から差し込む朝日が、大広間をやさしく照らしていた。
「……きれい。」
思わず、そう呟いた。
昨夜は、あんなに散らかっていたのに。
何事もなかったようなこの景色を見ると、不思議と胸が温かくなる。
「その『きれい』はね。」
後ろからマーサの声がした。
「私たちみんなで作った『きれい』なんだよ。」
私は振り返り、小さく頷いた。
「はい。」
「一人じゃできなかったです。」
マーサは目を細めて笑う。
「そう思えたなら、昨日は百点だね。」
⸻
午前の仕事を終えると、ルルが勢いよく扉を開けた。
「リアー!」
「はい?」
「お茶! お茶の時間!」
「え?」
「急いで急いで!」
腕を引かれるまま連れて行かれた先は、あとしまつ係専用の小さな休憩室だった。
大広間とは違って、とても質素な部屋。
木の丸テーブル。
少し年季の入った椅子。
壁際には戸棚と薬缶。
窓辺には、小さな鉢植えが並んでいる。
「かわいい……。」
思わず見渡していると、マーサがお湯を注ぎながら笑った。
「派手じゃないけど、みんなのお気に入りさ。」
香ばしい紅茶の香りが部屋いっぱいに広がる。
「はい、リア。」
差し出されたカップを両手で受け取る。
一口飲む。
ほっと肩の力が抜けた。
「……おいしいです。」
「でしょう?」
ルルは嬉しそうに笑った。
「マーサさんの紅茶、王宮で一番おいしいんだから!」
「そんな大げさな。」
マーサは照れくさそうに笑う。
サーシャは報告書を書きながら、ぽつりと言った。
「でも、本当にそう思う。」
その一言に、部屋中が笑いに包まれた。




