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『恋物語のあとしまつは、モブメイドの仕事です。』  作者: てぃな


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3

その日の午後。


私は初めて、大広間へ入った。


そこは、想像していた以上に美しい場所だった。


高い天井。


大きな窓。


磨かれた床。


そして、壁際に飾られたたくさんの花。


「ここで、たくさんの物語が生まれるのね」


思わず呟く。


ルルが頷いた。


「うん。王宮で一番華やかな場所。」


「でもね。」


マーサが続ける。


「華やかな時間は、必ず終わる。」


「だから、そのあとを整える人が必要になる。」



その日の仕事の終わり。


私は床に落ちているものを確認していた。


小さな白い花びら。


誰かが気づかずに落としたもの。


私はしゃがみ込んで、それを拾った。


「リア?」


ルルが覗き込む。


「一枚だけだよ?」


「はい。」


「捨てる?」


私は花びらを見る。


少しだけ傷んでいる。


でも。


誰かがこの花を選んだ日があった。


誰かがこの花を飾った時間があった。


「……記録してもいいですか?」


ルルが首を傾げる。


「記録?」


私は小さな手帳を開いた。


まだ何も書かれていない、新しい仕事記録。


そこへ初めて文字を書く。



あとしまつ記録 第001号


担当者:リア


業務内容


・式典整備係 配属


・大広間確認


・花びら一枚 回収


備考


最初に拾ったものは、小さな花びらだった。



ペンを置く。


たった一枚。


誰かにとっては、ただの花びら。


でも。


私にとっては。


これから続く仕事の、最初の一歩だった。

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