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その日の午後。
私は初めて、大広間へ入った。
そこは、想像していた以上に美しい場所だった。
高い天井。
大きな窓。
磨かれた床。
そして、壁際に飾られたたくさんの花。
「ここで、たくさんの物語が生まれるのね」
思わず呟く。
ルルが頷いた。
「うん。王宮で一番華やかな場所。」
「でもね。」
マーサが続ける。
「華やかな時間は、必ず終わる。」
「だから、そのあとを整える人が必要になる。」
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その日の仕事の終わり。
私は床に落ちているものを確認していた。
小さな白い花びら。
誰かが気づかずに落としたもの。
私はしゃがみ込んで、それを拾った。
「リア?」
ルルが覗き込む。
「一枚だけだよ?」
「はい。」
「捨てる?」
私は花びらを見る。
少しだけ傷んでいる。
でも。
誰かがこの花を選んだ日があった。
誰かがこの花を飾った時間があった。
「……記録してもいいですか?」
ルルが首を傾げる。
「記録?」
私は小さな手帳を開いた。
まだ何も書かれていない、新しい仕事記録。
そこへ初めて文字を書く。
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あとしまつ記録 第001号
担当者:リア
業務内容
・式典整備係 配属
・大広間確認
・花びら一枚 回収
備考
最初に拾ったものは、小さな花びらだった。
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ペンを置く。
たった一枚。
誰かにとっては、ただの花びら。
でも。
私にとっては。
これから続く仕事の、最初の一歩だった。




