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ロゼッタの客室。
扉を叩くと、侍女が迎えてくれた。
「リアです。」
「図書室から、お届け物です。」
ほどなくしてロゼッタが姿を現す。
本を見るなり、ほっと息をついた。
「探していたんです。」
リアが本を差し出すと、その間から封筒が見えた。
ロゼッタの表情がわずかに変わる。
「……それも。」
両手で大切そうに受け取る。
「ありがとうございます。」
その声は、いつもより少しだけ柔らかかった。
リアは何も聞かない。
何も見ない。
ただ一礼する。
「お役に立ててよかったです。」
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帰ろうとした時だった。
ロゼッタがリアを呼び止める。
「リアさん。」
「はい?」
「あなたは……。」
少し迷うように言葉を探し、
ふっと微笑んだ。
「とても誠実な方ですね。」
リアはきょとんとする。
「え?」
「封筒を見ていないでしょう?」
思わず目を丸くする。
「落とし物ですから。」
それが当然のように答えるリアに、
ロゼッタは小さく笑った。
「……そういう方で、よかった。」
その一言だけだった。
⸻
図書室へ戻る途中。
リアはさっきの言葉を思い返していた。
(誠実……。)
そんなふうに言われたことは初めてだった。
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その頃。
図書室では、王子が司書と話していた。
「ロゼッタ嬢は、よく図書室へ?」
「ええ。」
司書は嬉しそうに答える。
「歴史書も物語も、お好きですよ。」
「毎月、新しい本を借りてくださいます。」
王子は少し意外そうに目を細めた。
「……そうだったのですか。」
婚約者候補として何度も顔を合わせてきた。
それなのに。
自分は、ロゼッタが本を好きなことすら知らなかった。
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夜。
仕事記録を開く。
あとしまつ記録 第009号
担当者:リア
業務内容
・図書室整理
・返却本収納
・落とし物返却
備考
大切なものは、人それぞれ違う。
だからこそ、持ち主のもとへ無事に返す。
今日も一つ、「よかった」が増えた。
リアは仕事記録を閉じる。
窓の外では、図書室の灯りがまだ静かにともっていた。
きっと今夜も、誰かが本を開いているのだろう。
そのページをめくる音が、王宮の穏やかな夜にそっと溶けていった。




