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『恋物語のあとしまつは、モブメイドの仕事です。』  作者: てぃな


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20/22

19

ロゼッタの客室。


扉を叩くと、侍女が迎えてくれた。


「リアです。」


「図書室から、お届け物です。」


ほどなくしてロゼッタが姿を現す。


本を見るなり、ほっと息をついた。


「探していたんです。」


リアが本を差し出すと、その間から封筒が見えた。


ロゼッタの表情がわずかに変わる。


「……それも。」


両手で大切そうに受け取る。


「ありがとうございます。」


その声は、いつもより少しだけ柔らかかった。


リアは何も聞かない。


何も見ない。


ただ一礼する。


「お役に立ててよかったです。」



帰ろうとした時だった。


ロゼッタがリアを呼び止める。


「リアさん。」


「はい?」


「あなたは……。」


少し迷うように言葉を探し、


ふっと微笑んだ。


「とても誠実な方ですね。」


リアはきょとんとする。


「え?」


「封筒を見ていないでしょう?」


思わず目を丸くする。


「落とし物ですから。」


それが当然のように答えるリアに、


ロゼッタは小さく笑った。


「……そういう方で、よかった。」


その一言だけだった。



図書室へ戻る途中。


リアはさっきの言葉を思い返していた。


(誠実……。)


そんなふうに言われたことは初めてだった。



その頃。


図書室では、王子が司書と話していた。


「ロゼッタ嬢は、よく図書室へ?」


「ええ。」


司書は嬉しそうに答える。


「歴史書も物語も、お好きですよ。」


「毎月、新しい本を借りてくださいます。」


王子は少し意外そうに目を細めた。


「……そうだったのですか。」


婚約者候補として何度も顔を合わせてきた。


それなのに。


自分は、ロゼッタが本を好きなことすら知らなかった。



夜。


仕事記録を開く。


あとしまつ記録 第009号


担当者:リア


業務内容


・図書室整理


・返却本収納


・落とし物返却


備考


大切なものは、人それぞれ違う。


だからこそ、持ち主のもとへ無事に返す。


今日も一つ、「よかった」が増えた。


リアは仕事記録を閉じる。


窓の外では、図書室の灯りがまだ静かにともっていた。


きっと今夜も、誰かが本を開いているのだろう。


そのページをめくる音が、王宮の穏やかな夜にそっと溶けていった。

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