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『恋物語のあとしまつは、モブメイドの仕事です。』  作者: てぃな


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1

王宮で働くことになった日。


私が最初に教わったことは、礼儀作法でも、紅茶の淹れ方でもなかった。


「ほうきの持ち方が違うね。」


開口一番。


それが、私の教育係となる人の言葉だった。


「……はい?」


思わず間の抜けた返事をしてしまう。


目の前の女性は、白髪の混じった髪をきれいにまとめ、背筋を伸ばして立っていた。


優しそうな雰囲気を持っている。


けれど、その瞳には長年王宮で働いてきた人だけが持つ、揺るがない強さがあった。


「新人メイド、リアだね。」


「はい。本日より王宮勤務となりました、リアです。よろしくお願いいたします。」


深く頭を下げる。


女性は頷いた。


「私はマーサ。今日からあなたの教育係だよ。」


「よろしくお願いいたします。」


「うん。挨拶はできる。」


少し間を置いて。


「でも、ほうきの持ち方は直そうか。」


私は慌てて手元を見る。


確かに、言われてみれば力が入りすぎていた。


マーサは私の手からほうきを受け取り、正しい位置を示す。


「掃除はね、力でするものじゃない。」


「……はい。」


「見るんだよ。」


「見る?」


私は首を傾げる。


マーサは床へ視線を落とした。


「同じ床でも、毎日違う。」


朝の足音。


夜の靴跡。


こぼれた飲み物。


誰かが落とした小さな欠片。


「ちゃんと見れば、その日の状態が分かる。」


その言葉は、不思議と心に残った。

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