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昼前。
修繕が終わった。
新しい木の香りがするベンチ。
リアはそっと布で表面を拭く。
その様子をエリックが見ていた。
「まだ掃除するの?」
リアは頷く。
「木くずが残っているので。」
エリックはベンチを指でなぞる。
「気づかなかった。」
「座る人は気づくかもしれません。」
リアは微笑んだ。
「小さな子が手をついて、木くずが刺さったら痛いですから。」
エリックは少し黙る。
それから静かに言った。
「……ありがとう。」
リアは目を丸くする。
「え?」
「そこまで考えてくれて。」
短い言葉。
でも、とても真っ直ぐだった。
リアは照れくさくなって笑う。
「あとしまつ係なので。」
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その時。
小さな男の子が母親と庭園へやって来た。
「あっ!」
男の子は新しくなったベンチへ駆け寄る。
「なおってる!」
嬉しそうに座る。
足をぶらぶらさせながら笑っている。
母親が安心したように頭を下げた。
「ありがとうございます。」
その言葉は、修繕係にも、あとしまつ係にも向けられていた。
リアは隣を見る。
エリックも男の子を見ていた。
目が合う。
二人とも何も言わない。
でも、同じことを思っている気がした。
「……よかった。」
リアが小さく呟く。
エリックも頷いた。
「ああ。」
その一言だけだった。
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帰り道。
ロイがエリックの肩をつつく。
「なぁ。」
「なんだ。」
「リアちゃん、いい子だな。」
エリックは少し考える。
そして、
「うん。」
とだけ答えた。
ロイは思わず吹き出す。
「珍しいなぁ、お前がそんなに素直なの。」
エリックは何も言わず、少しだけ耳を赤くした。
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夜。
リアは仕事記録を開く。
あとしまつ記録 第008号
担当者:リア
業務内容
・東庭園 清掃
・修繕補助
・木くず回収
備考
壊れたものを直す人がいて、
きれいに整える人がいる。
どちらが欠けても、誰かは安心して座れない。
今日、そう教えてもらった。
私は手帳を閉じ、窓の外を見た。
庭園のベンチには、月明かりがやさしく降り注いでいた。
明日もまた、誰かがあの場所で笑ってくれますように。




