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『恋物語のあとしまつは、モブメイドの仕事です。』  作者: てぃな


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17

昼前。


修繕が終わった。


新しい木の香りがするベンチ。


リアはそっと布で表面を拭く。


その様子をエリックが見ていた。


「まだ掃除するの?」


リアは頷く。


「木くずが残っているので。」


エリックはベンチを指でなぞる。


「気づかなかった。」


「座る人は気づくかもしれません。」


リアは微笑んだ。


「小さな子が手をついて、木くずが刺さったら痛いですから。」


エリックは少し黙る。


それから静かに言った。


「……ありがとう。」


リアは目を丸くする。


「え?」


「そこまで考えてくれて。」


短い言葉。


でも、とても真っ直ぐだった。


リアは照れくさくなって笑う。


「あとしまつ係なので。」



その時。


小さな男の子が母親と庭園へやって来た。


「あっ!」


男の子は新しくなったベンチへ駆け寄る。


「なおってる!」


嬉しそうに座る。


足をぶらぶらさせながら笑っている。


母親が安心したように頭を下げた。


「ありがとうございます。」


その言葉は、修繕係にも、あとしまつ係にも向けられていた。


リアは隣を見る。


エリックも男の子を見ていた。


目が合う。


二人とも何も言わない。


でも、同じことを思っている気がした。


「……よかった。」


リアが小さく呟く。


エリックも頷いた。


「ああ。」


その一言だけだった。



帰り道。


ロイがエリックの肩をつつく。


「なぁ。」


「なんだ。」


「リアちゃん、いい子だな。」


エリックは少し考える。


そして、


「うん。」


とだけ答えた。


ロイは思わず吹き出す。


「珍しいなぁ、お前がそんなに素直なの。」


エリックは何も言わず、少しだけ耳を赤くした。



夜。


リアは仕事記録を開く。


あとしまつ記録 第008号


担当者:リア


業務内容


・東庭園 清掃


・修繕補助


・木くず回収


備考


壊れたものを直す人がいて、


きれいに整える人がいる。


どちらが欠けても、誰かは安心して座れない。


今日、そう教えてもらった。


私は手帳を閉じ、窓の外を見た。


庭園のベンチには、月明かりがやさしく降り注いでいた。


明日もまた、誰かがあの場所で笑ってくれますように。

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