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『恋物語のあとしまつは、モブメイドの仕事です。』  作者: てぃな


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16/22

15

お茶会が終わり、あとしまつが始まる。


リアは椅子を戻しながら、芝生に落ちたティースプーンを見つけた。


その近くで、小さな女の子が侍女に話している。


「ねぇねぇ!」


「さっきのきれいなお姉ちゃんね!」


「熱いって言って、こっちに引っぱってくれたの!」


侍女は微笑む。


「そうだったの。」


「おかげで紅茶が少しかかっただけだったのね。」


リアの手が止まる。


(……え?)


思い返す。


リリアンナの椅子。


揺れたティーカップ。


ロゼッタが一歩踏み出した瞬間。


ほんの一瞬で起きた出来事だった。


(助けた……んだ。)


リアは胸の中でそっと呟く。



帰り道。


ルルが少し浮かない顔をしていた。


「リア。」


「うん?」


「ロゼッタ様って、本当はどんな人なんだろうね。」


リアは歩きながら空を見上げた。


春の風が木々を揺らしている。


「私は……。」


少しだけ考えてから答える。


「今日も、優しい人だと思った。」


ルルは驚いたようにリアを見る。


「どうして?」


リアは微笑む。


「私が見たから。」


それ以上は何も言わなかった。


ロゼッタが自分から説明しなかったことを、勝手に話すのは違う気がした。



休憩室へ戻ると、マーサが温かい紅茶を淹れてくれた。


「お疲れさま。」


リアはカップを受け取る。


マーサは何も聞かない。


けれど、リアは自分から話した。


「今日、少しだけ分かった気がします。」


「何がだい?」


「噂って……。」


カップを見つめる。


「本当のこととは限らないんですね。」


マーサは静かに頷いた。


「風はね。」


「花の香りも運ぶけど、砂埃も運ぶ。」


「だから、自分の足で立って、自分の目で見るんだよ。」


リアはその言葉を、胸の奥へ大切にしまった。



その夜。


仕事記録を開く。


あとしまつ記録 第007号


担当者:リア


業務内容


・庭園お茶会 あとしまつ


・銀食器回収


・芝生点検


備考


風は、見たものも見ていないものも運んでいく。


だから私は、今日見たことを忘れないように書いておく。


ランプの灯りが、手帳の文字をやさしく照らしていた。


その一文字一文字は、誰にも見せない、リアだけの宝物だった。

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