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お茶会が終わり、あとしまつが始まる。
リアは椅子を戻しながら、芝生に落ちたティースプーンを見つけた。
その近くで、小さな女の子が侍女に話している。
「ねぇねぇ!」
「さっきのきれいなお姉ちゃんね!」
「熱いって言って、こっちに引っぱってくれたの!」
侍女は微笑む。
「そうだったの。」
「おかげで紅茶が少しかかっただけだったのね。」
リアの手が止まる。
(……え?)
思い返す。
リリアンナの椅子。
揺れたティーカップ。
ロゼッタが一歩踏み出した瞬間。
ほんの一瞬で起きた出来事だった。
(助けた……んだ。)
リアは胸の中でそっと呟く。
⸻
帰り道。
ルルが少し浮かない顔をしていた。
「リア。」
「うん?」
「ロゼッタ様って、本当はどんな人なんだろうね。」
リアは歩きながら空を見上げた。
春の風が木々を揺らしている。
「私は……。」
少しだけ考えてから答える。
「今日も、優しい人だと思った。」
ルルは驚いたようにリアを見る。
「どうして?」
リアは微笑む。
「私が見たから。」
それ以上は何も言わなかった。
ロゼッタが自分から説明しなかったことを、勝手に話すのは違う気がした。
⸻
休憩室へ戻ると、マーサが温かい紅茶を淹れてくれた。
「お疲れさま。」
リアはカップを受け取る。
マーサは何も聞かない。
けれど、リアは自分から話した。
「今日、少しだけ分かった気がします。」
「何がだい?」
「噂って……。」
カップを見つめる。
「本当のこととは限らないんですね。」
マーサは静かに頷いた。
「風はね。」
「花の香りも運ぶけど、砂埃も運ぶ。」
「だから、自分の足で立って、自分の目で見るんだよ。」
リアはその言葉を、胸の奥へ大切にしまった。
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その夜。
仕事記録を開く。
あとしまつ記録 第007号
担当者:リア
業務内容
・庭園お茶会 あとしまつ
・銀食器回収
・芝生点検
備考
風は、見たものも見ていないものも運んでいく。
だから私は、今日見たことを忘れないように書いておく。
ランプの灯りが、手帳の文字をやさしく照らしていた。
その一文字一文字は、誰にも見せない、リアだけの宝物だった。




