第33回 闞沢、呂壱の処遇に意見を述べる
闞沢は、丞相の顧雍を逮捕しながら確固たる証拠がなく無罪放免したことから、さすがに罷免されるものと思っていたが、孫権は譴責するにとどめ、相変わらず呂壱を重用したのである。
呂壱もしばらくはおとなしくしていたが、君主孫権からの信頼があるとみて、その動きを再び活発化させた。
相も変わらず、仔細なことを指摘しての逮捕を繰り返していたが、ここで呂壱は手を出してはならない人物に手を出した。
孫権の娘婿の「朱拠」である。
この朱拠の逮捕をした理由が、完全にでたらめの内容であったのだ。
このことに孫権は激怒した。
孫権の命令で、呂壱は逮捕、拘束をされたのである。
そして、孫権がその取り調べをさせたのが丞相の顧雍であった。孫権は言う。
「丞相。本来お願いすべきことではないのだろうが、呂壱の取り調べとその処分を決めて欲しい。」
「かしこまりました。ご命令とあれば、従います。」
こうして、顧雍の呂壱の取り調べが始まった。
呂壱に恨みを持つ者が非常に多く、本来非公開で行われる取り調べを公開でするべきという意見や、取り調べも必要ない、即座に極刑に処すべきだなどの過激な意見が孫権の耳にも入ってきた。孫権は闞沢に聞く。
「徳潤よ。呂壱の量刑は何が妥当か。」
「それは、今、取り調べを行っている丞相が決めることでございます。」
「仮に丞相が死刑、と判断した場合、どの様な方法が妥当であろうか。一部では、これだけ世を騒がしたのだから、古代に行われていたような、火あぶりや車裂きの刑が妥当である、などの意見も出ているのだが・・・。」
「それは、あり得ません。」
「それは、何故だ?」
「我が国の法に、その様な処刑の定めはありません。取り調べも、その結果の刑の執行も、全て丞相にお任せするのがよろしいかと。」
「・・・なるほど。それでは、丞相からの報告を待つとしよう。」
孫権は、全てを顧雍の判断に委ねた。
顧雍は、呂壱がこれまで行ってきたことを事細かに取り調べ、最終的には処断するべき、という結論に至った。
顧雍は呂壱にそのことを告げた。呂壱が言う。
「私のやっていた取り調べとはまるで違う。この様な適正な取り調べを受けられるとは思いませんでした。」
「それはあなたが、法の使い方を間違えていたのです。法は恐怖を与えるためにあるのではありません。皆が平等で幸せに暮らすためにあるのです。」
「・・・そうですね。最後にあなたの様な人と話をすることが出来てよかった。」
「何か他に、言い残すことはありますか?」
「いえ。法に基づき処断してください。」
こうして、政界を騒がせた呂壱は、呉の法に基づき裁かれ、その結果、処断をされた。
顧雍は一連の内容を孫権に報告した。孫権が言う。
「丞相、手間を取らせた。そして、呂壱の件は私の不明から出たもの。心から、お詫びする。」
孫権は頭を下げた。顧雍は言う。
「孫権様、その様なことはなさらないでください。呂壱の様な者が力をもったのは、丞相の私にも責任があります。今後、この様なことが起こらない様に細心の注意を払い、政に臨みます。」
「丞相、頼りにしているぞ。」
この一件の孫権の反省は相当深く、再び顧雍や闞沢に相談する機会が増えてきた。
しかし、立ち直りかけた孫権に、大きな不幸が舞い降りるのである。




