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三国志・闞沢伝ー孫呉を内側から支えた漢ー  作者: 涼風隼人


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第3回 闞沢、県長として励む(後)

 闞沢は、文一族の件を処理した後、一切のあらましを呉郡太守である呉景へ報告をするために、郡治である「呉県」に向かった。呉景が言う。

 「徳潤よ、県長として抜擢され、その職務を遂行することは称えられるが、今回のやり方は、少し危険すぎるのではないか?」

 

 「はい。考えが足りぬ行い、と言われても反論の余地はありません。しかし、伸ばし伸ばしにするよりは、即断即決で進めるべき事案と判断いたしました。」

 

 「なるほど。実は、銭唐県の文一族については、こちらに全く報告が上がってきたことが無かった・・・。恐らく、歴代の県長どもは篭絡されていたのであろう。」

 

 「その様なことを、族長は言っていました・・・。」

 

 「徳潤、今回の件、最終的には素晴らしい成果だ。しかし、今後、同様の案件がある場合、一度、こちらに報告をして欲しいと思う。」

 

 「かしこまりました。それでは失礼いたします。」

 闞沢は拝礼して、退出した。

 

 闞沢は馬を飛ばしにと飛ばし、二日間で銭唐県に戻った。

 

 そして早速、県丞と話をした。

 「県丞殿。先日話をした、流民の受け入れ、開墾の推進であるが、どのようにするのが一番いいか教えて欲しい。」

 

 「そうですね・・・。初めての試みになりますので、すぐに妙案は浮かばないのですが、現時点の考えでよろしいでしょうか?」

 

 「もちろん、是非、お聞かせ願いたい。」

 

 「はい。まず、城外に点在している小集落に、流民を住まわせることにし、その集落の頭領に、流民を指揮させ、開墾を進めるのは如何でしょうか?」

 

 「なるほど・・・。小集落の中に入れて、流民の居場所を確保し、仕事をしてもらう、ということか。」

 

 「はい。頭領や既存の民たちにも開墾を手伝わせて、その見返りに多少の減税を行う。減税を行ったとしても、うまくいけば総生産量は増えるわけですから、県の税収が落ちることはないのではと思います。」

 

 「なるほど、いいやり方かもしれませんね。それでは県丞殿、早速進めましょう。まずは、城内や城外で定住すべき場所を持っていない者たちを集めましょう。」

 

 「わかりました。しかし、懸念事項として、小集落の者たちは特によそ者を嫌う傾向が強いので、流民の受け入れ自体をなかなか納得しない可能性もあります。」

 

 「そこは、私が何とか致しましょう。さあ、県丞殿は流民を集めることを早速、お願いします。」

 

 こうして、闞沢と県丞を中心に、流民を受け入れ開墾を推進するという、銭唐県では初めての取り組みが行われた。

 

 県丞が集めた流民はかなり多く、約一〇〇人ほどであった。

 

 そして県丞は、合わせて城外に点在する集落の頭領、二〇人ほどを呼び出した。

 

 集落の頭領たちは、何事かと、渋々県庁に集められた。

 

 県丞が、流民を五名一組にして、各集落に割り当てて、その者たちを中心に開墾を行うこと。その見返りとして、既存の頭領、民たちの税は当面引き下げることを説明した。

 

 流民たちのほとんどは口を開かず、成り行きに任せていたが、頭領たちのほとんどは、反対の意を唱えた。一人の頭領が言う。

 「県丞殿。私たちは、我々の生活で手一杯。流民を住まわせ、更に開墾せよ、とはあまりにも酷い仰せです。」

 

 「しかし、ことがうまく運べば、お前たちの税は当面割り引くのだから、悪い話ではあるまい。」

 

 「そんなに上手くいくとは思えません。私の集落は、対象から外してください。」

 

 この声に、ほとんど全員の頭領が、うちも、うちもと外すことを要求した。そこで闞沢が言う。

 「とりあえず、落ち着いて聞いて欲しい。ここには、流民が約一〇〇人いる。この者たちは今、決まった寝る場所もないのだ。その者たちがもし、結託して、あなたたちの集落を襲ったら、どうなる?」

 

 誰も、何も答えない。闞沢は続ける。

 「恐らく、対応できないはずだ。それを治めるのが県の仕事だ、というかもしれないが、絶対に守ってやる、という保証は出来るものではない。」

 

 更に続ける。

 「確かに、流民を受け入れれば、確実に今までの生活とは変わるだろう。仕事も増える。しかし、どうか流民たちをあなたたちの新しい家族として、迎え入れて欲しいのだ。」

 

 頭領の一人が言う。

 「県長様の言うことはわかります。しかし、理屈ではそうであっても、現実問題どうなるか・・・。」

 

 「まずは、受け入れて欲しい。その上で、どうしてもだめだ、解決できない問題がある、というのであれば、遠慮なくこちらに申し出て欲しい。すぐに対応を協議しよう。この計画には、あなた方の協力が必要不可欠なのだ、頼む。」

 

 闞沢は、頭領たちに、深々と頭を下げた。

 

 その姿を見ると、反対しにくくなったのか、頭領たちは何も言わなくなった。

 

 県丞は、一集落に五名の流民を割り振った。

 

 彼らの仮住まいは、県が兵を動員して手伝わせ、極力、集落の者たちの負担を減らすことにした。

 

 こうして、各集落は色々と細かい問題は生じたものの、実際の作物の取り高も増え、流民も既存の民たちとなじみだし、銭唐県の税収は大幅に上がることになった。


 そして、治績を挙げ続ける闞沢に、次なるお呼びがかかるのである。

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