第28回 闞沢、中書令に昇進する
文の柱である顧雍と、武の柱である陸遜が中心となり、呉の国力は日に日に増していった。そして、それを陰で支えていた闞沢であるが、「中書令」に昇進することが決まった。
中書令の役割は、皇帝の側近中の側近であり、皇帝からの諮問に応えたり、詔勅の起草などを行う。孫権は、身近な相談役として闞沢を抜擢したのである。
孫権が言う。
「徳潤よ。これまで様々なつとめ、よくぞこなしてきてくれた。これからは、私の側近くで、諸々の相談に乗ってもらいたい。」
「なんと、ありがたきお言葉でしょうか。中書令に任ぜられるなど、微塵も考えておりませんでした。」
「元歎からも、尚書として、献身的な働きをしてくれていると、聞かされていた。何か報いなければ、と常々思っていたのだ。」
「顧雍様がその様に・・・。」
「そうだ。元歎は物静かで、口を開けば常に正しいことを言う。皆は、沈黙の宰相、と呼んでいるようだが、その元歎が推薦してきたのだ、自信をもってやってくれ。それはどういう意味かわかるか?」
「・・・。恐れずに物申せ、ということでしょうか。」
「そうだ。私が間違えていると思えば、その時ははっきりと言って欲しい。必ず、耳を傾けることを約束しよう。」
「わかりました。精一杯、励みます。」
闞沢は拝礼して、退出した。
退出してしばらくすると、前から顧雍がやってくる。
闞沢は道を開け、拝礼した。顧雍も拝礼を返して言う。
「徳潤殿がここにおられるということは、孫権様よりお話がありましたかな?」
「はい。中書令に任ずる、とのお話でした。丞相の推薦があったことも伺いました。本当にありがとうございます。」
「お礼を言われる話ではありません。優秀で頑張っている人が世に出ていくのは当然のこと。私は、この国を、身分を問わず、優秀な人材が活躍できる国にしたいだけです。」
「私も、同じ意見です。本来私の様な身分の者が、呉でも名家の出身である丞相とお話ができることなど、考えられません。」
「そういった壁を一つ一つ壊していく。それが大事です。」
「お言葉、胸に刻みます。」
「これから、孫権様は私に聞く前に、徳潤殿に聞くことが増えると思います。その時は、自信をもって、ご自身の考えをお述べ下さい。気遣いは無用です。」
闞沢は深く頷き、拝礼した。
こうして、正に孫呉の黄金体制を支える一員に、名実ともに闞沢も加わったのである。
しかし、この三人が反対した戦へと孫権は進もうとするのである。




