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三国志・闞沢伝ー孫呉を内側から支えた漢ー  作者: 涼風隼人


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第16回 闞沢、呉郡の治安向上に貢献する(中)

 闞沢と都尉は役割を分担した。

 

 闞沢が商人を、都尉が豪族を調べることにしたのである。

 

 まずは、敢えて直接乗り込み、許貢の残党が隠れている情報があるが、何か知らぬか、と尋問をした。

 

 これには、理由がある。

 

 大掛かりな捜索が行われていることを知らしめることにより、必ず隠れて動くようになる。隠れて動くとなれば、人目につかない深夜での行動となるであろう。

 

 闞沢と都尉は、主だった商人や豪族の邸宅における深夜の監視を重点的に行った。最初の数日では、何の動きもなかった。

 

 一〇日、二〇日と日は過ぎていく。監視を続ける者たちの緊張も緩みだしたその時である。闇の中を、呉県でも豪商で知られる者の邸宅に入っていく者がいた。

 

 知らせはすぐに闞沢に届いた。

 

 闞沢はすぐにその商人の邸宅の方に向かう。

 

 監視していた兵に聞く。

 「中に入ってどれくらい経つ?」

 

 「まだ二刻ほどでございます。」

 

 「そうか。まずは、出てくるのを待とう。」

 

 闞沢も兵たちも息をひそめて待つ。しばらくすると、一人出てきた。すると、続いて、二人、三人と出てくる。

 

 間違いない、闇夜に紛れて物資を運搬しているのだ、と闞沢は思った。兵たちに言う。

 「お前たちは、今の奴らの後をつけてくれ。私は、商人の邸宅に乗り込む。」

 

 「郡丞殿お一人で?」

 

 「私の事は良い。急ぎ、あの者たちを追ってくれ。」

 

 兵たちは、言われるがままに、追跡を開始した。

 

 そして闞沢は、商人の邸宅の門を叩く。

 「私は、郡丞の闞徳潤だ!詮議したいことがある故、門を開けよ!」

 

 すぐに家人らしき者が出てきて言う。

 「郡丞殿。もうこんな時間なので、主人は既に床に就いております。明日では、駄目なのでしょうか?」

 

 「駄目だ。もし、本当に寝ているというのであれば、今すぐ起こせ。火急の用で郡丞が来たと伝えよ!」

 家人は、少々お待ちを、というとそそくさと中に入っていった。

 しばらくすると、恰幅の良い、ふくよかな体をした男が出てきた。その男が言う。

 

 「私がここの主です。この様な深夜に、何の御用でしょうか?」

 

 「率直に言う。今、我々は、孫策様を暗殺した許貢の残党の掃討に動いている。先ほど、ここからこの深夜に複数の者が出て行ったのを私の部下が確認している。あの者たちは、一体何者なのだ?」

 

 「はて・・・。何のことやら。全く思い当たる節がございませんが・・・。」

 

 「とぼけても無駄だ。郡丞たるこの闞徳潤に、白を切る気か!」

 

 「そう言われましても・・・。私は今まで眠っていたので、何が何だか・・・。」


 「あくまで、何も知らぬと、言い通すのだな?」


 「はい・・・。大変申し訳ございませんが、そうとしか申し上げられません。」

 

 そうこうしているうちに、先ほどの兵たちが戻ってきた。

 

 かなり身軽な連中で、途中で見失ったとのことだった。

 

 その知らせを聞き、闞沢は商人に言う。

 「ならば、そなたの体に聞く必要がありそうだな。今夜はまず、獄で眠ってもらおうか。この者を連行せよ!」


 「な、何をご無体な!こんな無法が許されるのですか!」


 「無法かどうか、それは明日しっかり聞いてやる。さあ、連行せよ!」


―翌日―

 獄で一晩を過ごした商人を、闞沢自ら取り調べた。


 「さあ、知っていることを全て話すのだ。」


 「昨日から、何のことでしょう?私は、一介の商人にすぎません。これは、一体何の取り調べなのでしょうか?」


 「昨日言ったとおりだ。許貢の残党に物資を流している者がいると、我々は考えている。そこで、主だった商人を全て監視していたが、昨夜、お前の所から、深夜に数人の者が出入りしたのを確認している。その者たちは、何者だ。」


 「わかりません・・・。何度も申し上げますが、何のことやら・・・。」


 「そうか、ならば体に聞くしかあるまい。」


 闞沢は、右手を挙げた。

 すると、兵が商人を鞭で打った。

 「ぎゃあ!」

 商人は悲鳴を上げる。

 

 「話す気になったか。取り調べの時、鞭打ちすることは、法に則った行為である。さあ、話すがよい。」

 

 「・・・知りませぬ。」

 

 闞沢は、右手を挙げた。

 商人は悲鳴を上げる。

 

 しばらく、このやり取りが繰り返され、鞭打ちの数は二〇を超えてきた。

 

 明らかに商人は痛みで衰弱し、気絶をする寸前であった。

 

 兵が闞沢に確認すると、闞沢は言う。

 「人はこれくらいでは死なん!水をかけよ!」

 

 兵は言われるがままに、商人に水をかけ、気絶することを許さなかった。

 

 そして、闞沢の右手が上がる。すると、商人が叫ぶ。

 「待ってくれ!待ってください!全部、全部話します!」

 

 「・・・。ようやく、その気になったか。聞こう。」

 

 商人は、生前の許貢に世話になっていた恩返しとして、許貢の残党に物資の提供を定期的に行っていたことを認めた。潜伏場所は、城を出て西方の山岳の中腹である、とのことであった。

 

 商人は、話し終わると気絶した。闞沢が兵に言う。

 

 「医者を呼んで治療させよ。回復するまで手厚く扱うように。」


 闞沢は許貢の残党の居所を突き止めたことを、都尉に報告した。そして翌日、掃討戦に向かうことになるのである。

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