第15回 闞沢、呉郡の治安向上に貢献する(前)
闞沢は呉景に呼ばれた。呉景が言う。
「呉郡の当面の課題は、孫策様を暗殺した許貢の残党を掃討することにある。徳潤は当面、都尉と共にそのために動いてくれ。」
「かしこまりました。山越など、異民族の動きはどの様になっているのでしょうか?」
「山越に関しては、会稽郡の郡丞である顧雍殿が孫権様の代理として山越の王と話をつけてきたので、当面は問題ないと思う。その間に、こちらとしては許貢の残党を掃討したい。」
「山越の王と話をつけるとは、顧雍様とはすごい才覚の持ち主なのでしょうか?」
「そうだな・・・。普段は物静かで余計なことを話したりはしないが、口を開けば全てが正論で、誰も太刀打ちできない。将来、孫権様の側近として活躍するのは間違えないと私は見ている。」
「一度、お会いしたいものです。」
「孫権様の所に何某かの報告や相談に来ることもあろう。その時、時間があれば会わせてやろう。」
「ありがとうございます。それではまず、許貢の残党の掃討に入らせていただきます。」
軍の兵を預かるのは都尉である。闞沢はまず、都尉に会いに行った。都尉が言う。
「あなたが、闞徳潤殿でございますか。お話は、色々と呉景様からお聞きしている。何でも、桂陽郡では大活躍されたとか。」
「与えられた仕事を全うしたまでです。都尉殿、私は軍事に関しては素人同然です。許貢の残党掃討は、どのようにお考えですか?」
「許貢の残党は、孫策様を暗殺したことで目的を遂げたという者と、それでは飽き足らず、後継者の孫権様をも付け狙う連中の二派に分かれている。前者の方は、もうすでに呉郡を後にしている可能性が高く、後者の方が依然、この呉郡のどこかに潜伏していると思うが、それがどこなのかまだ把握できていないのが実情だ。」
「なるほど・・・。それでは当面は、その居場所を突き止めるのが急務といったところでしょうか。」
「その認識で、問題ない。しかし、どこを重点的に探せばよいのやら・・・。」
「私の推論、申し上げてよろしいでしょうか?」
「ああ、聞かせてくれ。」
「もし、孫権様の命も狙う、ということなのであれば、呉県より遠くにいてはその機会はまず、得られません。そう考えると、私たちが考える以上に、近いところに潜伏していると思われます。極端に言えば城内、少なくとも城の周辺だと思われます。」
「なるほど・・・。しかし、それらしい情報はこちらには入ってきてはいないが・・・。」
「食糧や物資の調達は、協力している者が必ずいるはずです。まずは、商人や豪族の邸宅などに探りを入れるのがよろしいかと思います。」
「今までの私には、ない視点の考え方だ。わかった、まずは城内の商人や豪族の邸宅に探りを入れてみよう。」
こうして、闞沢は呉景から与えられた許貢の残党の掃討に動き出したのである。




