第四十三話 受賞式
バスティオン砦。
喜一は、北東支部の司令官から、魔軍団長を撃破した功績により、二つ目の勲章を受賞していた。
受賞式が執り行われる広場には、大勢の隊員が集まっている。
入隊四か月で二つも勲章を受賞するのは異例だ。
登壇し、司令官から勲章を受け取る。
司令官は、立派な髭を蓄えた偉丈夫だ。
差し出された手を取り、固く握手を交わす。
「よくやってくれた。これからも期待している」
短い祝辞。
隊員たちから大きな拍手が上がる。
降壇すると、今度はヴァルカが入れ替わるように登壇する。
ヴァルカの所属する第三遊撃隊は、トリリネア王国に展開している陣地の一つで防衛任務にあたっていた。
そこへ魔王軍約百名が襲来したが、ヴァルカは魔軍団長を撃破し、見事これを退けていた。
ヴァルカが司令官から勲章を受け取ると、再び大きな拍手が上がった。
受賞式終了後、ヴァルカが喜一に声をかける。
「キーチ、受賞おめでとう」
喜一は軽く頷く。
「ヴァルカもおめでとう」
ヴァルカが笑う。
「私はまだ一つ目だけどね。けっこう手こずったよ」
「まだ戦いは続く。機会はいくらでもあるさ」
「そっちはどうだったんだい? 聞いた話では圧勝だったみたいじゃないか」
「俺一人の力じゃないさ」
「おや、殊勝だねぇ。てっきり俺は最強だから当然だと言うと思ったんだけどね」
「事実だからな」
ヴァルカは魔軍団長相手に手こずったと言っているが、喜一も本来なら手こずっていたはずだ。
蒼月……アダマンタイトで作られた新しい刀の力は、凄まじかった。
喜一が全力で振れば、盾も、鎧も、剣ですらも斬り裂いてしまう。
もはや敵がその間合いに入った時点で、勝敗は決したも同然だった。
鉄蔵は、本当に良い仕事をしてくれた。
しかし、これは本当に自分の力なのか、という疑問が頭をよぎる。
刀が凄いだけではないのか、と。
間合いの奪い合い、打ち合い、駆け引き。
そういったものが、どこか単純化されてしまったように感じていた。
(まあ、それは贅沢な悩みか)
戦場は常に死と隣り合わせだ。
出し惜しみをして死ねば、それで終わり。
次はない。
入隊してから、まだ四か月だが、その間に多くの死を目の当たりにしてきた。
喜一の目指す夢、世界最強の剣士。
戦場において不敗を誇ることで、周囲から自然と認められるであろう称号。
それは、多くの屍の上に成り立つ、修羅の道だ。
「魔王軍の動きも、大人しくなってきたね」
ヴァルカの言葉に、喜一は腕を組んで考え込む。
「バスティオン砦では五百名が撃退されたし、今回は百名だ。さすがに慎重になっているんじゃないか?」
「このまま増援が来るまで、大人しくしていてくれるといいんだけどねぇ」
「そうだな」
その通りになった。
魔王軍の大規模な襲撃は鳴りを潜め、その間に増援部隊が到着する。
約六万名の大軍が、魔王軍の駐留するトリリネア城へ向けて進軍を開始した。
その護衛として、第五遊撃隊も馬に騎乗し同行していた。
ホークが感嘆の声を漏らす。
「おおー、こりゃあ壮観だねぇ」
ミアが頷く。
「それだけ今回の奪還作戦は本気、ということですね」
ゴルグが豪快に笑う。
「がははは! ついに来るべき時が来たという感じだな!」
喜一は口角をわずかに上げる。
「今回ばかりは魔将軍が出てくるだろうな。戦うのが楽しみだ」
ドレイクが静かに言う。
「今回の奪還作戦が成功すれば、人々の希望になる。聖女も勇者も、未だに現れてはいないが、待つ必要などない。我々の世界は我々が守る、魔界の連中の好きになどさせん」
街道を、六万の大軍が進む。
その列は、先頭が見えないほど果てしなく長く続いていた。
その向かう先は、勝利の栄光か。
それとも……。




