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第四十一話 新たな刀

 一週間の休暇が明け、喜一、ゴルグ、ホークの三名は、訓練場へ向かった。

 訓練場に着くと、すでにミアが来ていた。

 四人は挨拶を交わす。

 喜一がミアの頭につけている小さな花の髪飾りを見る。


「それ、使ってくれてるんだな」

「うん、似合うかな?」

「ミアに似合うと思ったから贈ったんだ」

「ありがとう、キーチ君」


 喜一とミアは小さく笑い合った。

 その様子を見ていたホークがからかってくる。


「えっ? なに、なに? お前達そういう関係だったの?」


 ゴルグが豪快に笑う。


「がははは! キーチも隅に置けんな」


 喜一は二人を見て目を細める。


「何を想像しているかは知らんが、これは町を案内してくれた礼だ、勘違いするな」


 ホークは呆気にとられた表情を浮かべる。


「なんだ、そういうことか」


 ミアが笑いながら言う。


「そうだよ、そんな勘違いされたら、ヴァルカさんに悪いよ」


 喜一が首を傾げる。


「ん? なんでそこでヴァルカの名前が出てくるんだ?」

「えっ? ヴァルカさんと付き合ってるんでしょ?」

「誰が?」

「キーチ君が」


 喜一はため息をつく。


「あのな、俺とヴァルカは付き合ってないぞ」

「ええっ? そうなの? 一緒に入隊したし、手合わせも良くしてるし、城下町でも一緒だったから、付き合っているとばかり。女性用の兵舎でも噂になってるよ」


 ホークが頷く。


「そういえば、その噂は俺も聞いたな」

「根も葉もないデマだ」


 ゴルグが尋ねる。


「それじゃ、どういう関係なんだ?」


 喜一は腕を組み、考え込む。


「友達……というのは違うか。旅の仲間……いや、己を高め合う好敵手と言った方がしっくりくるか」


 ミアが小さく呟く。


「そっか、付き合ってないんだ……」

「何か言ったか」


 ミアが首を横に振る。


「ううん、なんでもない」


 四人で話していると、ドレイクが来る。


「皆、いるな。体は休めたか?」


 皆が頷く。


「よろしい、それでは訓練を始める!」


 それから喜一は、日々訓練に励み、休日にヴァルカに食事を奢り、魔王軍との小規模な戦闘に参加したりと、忙しい日々を過ごした。


 そして一ヶ月後、喜一は再び鉄蔵の工房の前に立つ。

 中に入る。

 入口付近には誰もいない。 

 喜一が声を張る。


「頼もう!」


 すると、奥から鉄蔵が一本の刀と、二本の脇差を手に出てきた。

 目には隈ができている。


「きたか、注文の品は出来てるぞ」


 鉄蔵は刀と脇差を机の上に置いた。


「まずは、こいつを確認してくれ」


 喜一は脇差の一本を受け取る。

 柄が新しい。

 鞘から抜く。

 今までの刀の丁度半分の長さだ。


「いいな、一度壊れた刀とは思えない」


「そちらは折れた刀の先端部分だ」


 もう一つの脇差も確認する。

 こちらの柄は以前使用していた物だ。

 折れた先端が綺麗な切っ先になっている。

 軽く振ってみる。


「すごいな、短くなったが十分使える」

「再刃と呼ばれる技法だ、折れた所から切っ先を再生した」


 喜一は脇差を鞘に収め、深々と頭を下げた。


「感謝する」


 鉄蔵が嬉しそうに笑う。


「そいつは良かった。そこまで喜んでもらえるなら、刀鍛冶冥利に尽きるってものだ」


 刀を手に取り、喜一に渡す。


「それから、こいつが新しい刀だ」


 喜一が鞘から新しい刀を抜き放つ。

 濃い灰色の刀身は光を反射して鈍く輝き、美しい刃文は薄く青みがかっている。

 喜一はその出来栄えに息を呑む。

 その様子を見ていた鉄蔵は嬉しそうに頷き、喜一に提案する。


「試し切りして行くか?」

「いいのか?」

「実はもう準備してある。ついて来い」


 奥の作業場に行くと、太い鉄の棒が立っていた。


「こいつで試してみろ」

「は? こういうのは木の棒とかでするものだろ?」

「いいから、やってみろ。刀が折れるぐらい全力で振れ」

「どうなっても知らんぞ」


 喜一は刀を両手で握り、鉄の棒に向き合う。

 呼吸を整え、全力で振った。

 キィン!

 金属がぶつかる甲高い音が鳴り、鉄の棒は両断された。

 切り口は鏡のように滑らかだ。

 喜一はその切れ味に驚愕する。


「嘘だろ、こんなあっさり」


 刀を見るが刃こぼれ一つない。

 鉄蔵が大きく笑う。


「はっはっは! どうだ喜一、新しい刀は?」


 喜一は刀を眺めながら応える。


「素晴らしいな! こいつがあれば、俺はさらなる高みに登れる」


 魔軍団長との戦いでは、硬い鎧に刃が阻まれたが、この刀であれば、鎧ごと両断することも可能だろう。


「この刀の名は?」

「そいつの名は、蒼月そうげつだ」

蒼月そうげつ……」


(これからよろしく頼む、相棒)


 喜一は静かに蒼月そうげつを鞘に収めた。

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