セリオン――シュタイナー
「おお、ガイアントを倒してしまったのか! 君は強いんだな!」
「?」
シベルスクスは鎧を着た騎士のおじさんに呼び止められた。
「失礼。それがしはシュタイナー(Steiner)。スカンダリア王国の騎士だ。君の名は?」
「俺の名はシベルスクス。俺は旅人です」
「今回の功績は実にすばらしい。ところでガイアントを倒した者には国王陛下が賞金を与えられ、陛下と面会できる。ぜひとも王都ウプサルを訪れて、王宮にまで足を運んでほしい。それがしは先にウプサルに帰って、君の来訪を国王陛下に告げておこう! では!」
そう言うと、シュタイナーは馬にまたがって去っていった。
「俺が言うより先に行ってしまったぞ……」
シベルスクス肩をすくめた。
「まあ、いいじゃない。スカンダリア王国の王都ウプサルに行く予定だったんでしょう? 国王とも会える約束もできたんだし、魔物も倒せたし……」
シベルスクスがガイアントを倒したことが知られて、人々が王都に向かって移動し始めた。
シベルスクスは人々に混じって街道を歩きだした。
シベルスクスは王都につくと感嘆の息を漏らした。
王都ウプサルはとにかく大きかった。
シベルスクスが今まで知っているどの都よりも大きかった。
シベルスクスは城壁を眺めた。
ウプサル全体を円形に包み込んでいる。
ウプサルは主に王宮や貴族の館がある区画、商業区、民衆区などで構成されている。
特に商業区はウプサルのビジネスの中心で平民たちが多く、働きに出かけている区画であった。
ウプサルに入るためには、兵士たちが務めている門を通らねばならない。
シベルスクスは列に並び、入国の審査を受ける。
「名前は?」
「俺はシベルスクスだ」
「シベルスクス!?」
兵士が大げさに驚いた。
「失礼しました。シュタイナー様より承っております。どうぞ、王都にお入りください」
兵士は敬礼して、シベルスクスを迎えた。
「シベルスクス殿!」
「あなたは……」
そこにシュタイナーが現れた。
目を輝かせてシュタイナーがシベルスクスに近づいてくる。
「君のことを待っていたよ。ここで会えるとそれがしは思っていたのだ。王都は大きいから君一人では迷うだろう。それゆえ、それがしが君の案内をしよう。まず行くのは王宮だ。そこで国王陛下との謁見がある。さあ、ついてきたまえ!」
シュタイナーはシベルスクスを伴って王宮を目指して歩き出した。
シベルスクスは王宮で国王と謁見した。
玉座の間は美しかった。
シベルスクスは王の前でひざまずいた。
「面を上げよ」
「はっ!」
シベルスクスが顔を王に向ける。
王は四十歳前後の年齢だった。
金髪をしていて、金色のあごひげを生やしていた。
「こたびのそちの功績を私は知っている。街道の通行を妨害していたガイアントを倒してくれたようだな。国民に代わって礼を言おう。すばらしい功績だった」
「いえ、もったいないお言葉でございます」
「私には娘がいるが、そのことをそちは知っているかね?」
「いえ、知りません」
「名をフローネ(Froone)と言う。私が愛する、かけがえのない娘だ。実はこたびの帝国との戦争で、娘は帝国に連れ去られてしまった。我が陣営はこのところディナヴィア帝国と負け戦が続いておる。今度の来るべき次の戦争は国の存亡をかけたものになろう。ところでそちはツァラトを知っているか?」
「はい、我が師にございます」
「そちはツァラトから戦略・戦術のことは学んだか?」
「はい、学びました」
「それでは兵の指揮もか?」
「はい」
「そうか」
「王様に質問がございます」
「何か?」
「我が師ツァラトのことをなぜお知りなのでしょうか?」
「うむ。ツァラトはこの国で宰相をしていたのだ。ある時引退したいと申し出て、それ以来ポリナイケスで暮らしていると聞く」
シベルスクスは王の言葉に納得した。
しかしあのツァラトがスカンダリアの宰相職にあったとは、シベルスクスには驚きを隠せなかった。
国王がようやく笑顔を見せた。
「ボックス(Bocks)将軍」
「はい!」
「この若者をそのほうに預ける」
「はい!」
「国王陛下にお願いがございます」
「何か?」
「私をこの国で雇ってください。決して失望はさせません」
「それはこちらから申し出ようと思っていたところだ。ボックス将軍、細かいところはそちに任せる。この若者の望みをかなえてやってくれ」
「はっ!」
こうしてシベルスクスと国王との謁見は終わった。




