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Das Heldenlied   ヘルデンリート 20 Die Hymne  作者: Siberius
セリオンの章
52/59

セリオン――旅立ち

かくして映画が上映された。

題名は「英雄讃歌(Die Heldenhymne)」である。

デルフィン(Delfin)で神の予言が下った。

マリア(キャスト・ダリア)から生まれた子供は「父を殺す」だろう。

それを聞いたヴァレンティア王は妻のマリアと、生まれた息子を箱に入れて海に流してしまった。

母と子はポリナイケス(Polineikes)島につき、そこで光の祭官ツァラト(Zarath キャスト・アンシャル)に助けられた。

母子はポリナイケスで月日を過ごした。

子供はシベルスクス(Siberskus キャスト・セリオン)と名付けられた。

シベルスクスはツァラトのよって教育され、かつ鍛えられた。

シベルスクスの成長はツァラトの賜物であった。

シベルスクスの脚は島の全周囲を駆け抜けることができた。

シベルスクスは知力、体力、武術を叩き込まれて育った。

マリアはツァラトの保護のもと一人息子を育てた。

ツァラトとマリアはシベルスクスがヴァレンティアの王子であるということを隠していた。

「父を殺す」という予言の成就を恐れたからだった。

しかもシベルスクスが並みの人間ではないことがツァラトにははっきりわかった。

人は能力があれば野心もまた大きくなるものである。

成長したシベルスクスにとってポリナイケスでの平和な日々は退屈になってきた。

ある日、シベルスクスは人間の王国スカンダリア(Skandaria)と魔族の帝国ディナヴィア(Dinawia)の争いを船着き場で耳にした。

王国と帝国が戦争をしていること。

そして王国の側が劣勢であること。

ヴァレンティア王国が帝国に滅ぼされて、一属州になったことなどを聞いた。

それを知ったシベルスクスは人間の側に加勢したいと思うようになる。

その日の夕方、マリアは夕食を作っていた。

海に流され、ポリナイケスに住んでから十八年の月日が流れていた。

「あら、シベルスクス、帰ってきたのね。ちょうどいいわ、ご飯にしましょう」

マリアは食事の用意を整える。

「ところで、母さん。母さんに俺は話があるんだ」

シベルスクスは改まって言った。

「? どうしたの? 改まって?」

「俺はこの島を出て、世界を旅してみたいんだ」

マリアは雷に打たれたように青ざめた。

「この島にい続けると俺は腐ってしまいそうだ。おれはもっと広い世界を知りたい」

「……それがあなたの運命かもしれないわね。神よ、この子を守り給え! シベルスクス、あなたに言っておかねばならないことがあるの」

「それは、何?」

「あなたはヴァレンティア王国の王子で、そして『父を殺す』という予言を受けたのよ」

「父を殺す? 俺がヴァレンティアの王子?」

シベルスクスは混乱した。

「その予言を恐れて、あなたの父は私と幼いあなたを海に流したの。これがあなたの出生よ。あなたがそう考えることを私は恐れていたような気がするわ。でも、それが神のみ旨ならば、私はそれを受け入れねばならない。いつ出発するつもり?」

「できれば次の船が来た時に」

「私はあなたを止めないわ。強く、たくましく、おおしく生きていきなさい。私にはあなたの背中を押すことしかできないから……さあ、今日のところはご飯を食べて。明日、ツァラト様のところにあいさつに行きなさい」

「ありがとう、母さん」

シベルスクスはその日豪華な食事を食べさせられた。

その日の夜、シベルスクスは夢を見た。

雷がシベルスクスに語りかけてくる。

「旅立ちの時が来た。おまえは懐かしんだ故郷を離れ、未知の世界へと旅立つのだ」

シベルスクスはそれを聞いて目を覚ました。

「今の言葉は……明日ツァラトのところに行こう」

翌朝、シベルスクスはツァラトにあいさつするために、彼のもとを訪れた。

「なあ、ツァラト?」

「どうした、シベルスクス?」

「昨日の夜、夢を見たんだ」

「どんな夢だ?」

「旅立ちの時が来たと、俺は旅立たねばならないと言われた」

ツァラトは天を仰いだ。

「神よ! (しゅなる神よ! それは神意に違いない! おまえは私の手を離れる時が来たのだ! マリアはこの話を知っているのか?」

「ああ、知っている。すぐに神に祈りをささげた」

「シベルスクス、おまえの器はこの島で一生を送るようなものではない。お告げの通り、島から出ていくがいい。だが、これだけは覚えておいてくれ。この島はおまえの故郷だ。おまえが悩み、道がわからなくなったときはいつでも戻ってくるがいい」

「ああ、ありがとう、ツァラト」

「それとこれを与えておこう」

ツァラトが一振りの白い大剣を出した。

「これは?」

「これは神剣グランツァイド(Granzeid)。今のおまえにふさわしい、神のつるぎだ。受け取ってくれ。いずれ私はこれをおまえに渡すつもりだった」

「ありがとう、心強いよ」

シベルスクスはかくして船に乗った。

ツァラトとマリアが見送りに来てくれた。

船は出航した。シベルスクスの目的地はスカンダリア王国だ。

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