ノエル――アイドネウス
ウラヌスとウラニア、そしてノエルの三人は神殿の最下層にたどり着いた。
最下層は円錐型の器が中央にあった。
そこから血を流すためである。
「さあ、来なさい! ここであなたの血によって、ベルツェブル様を復活させるんです!」
ウラニアが乱暴にノエルの首につけられた首輪を引きずる、
「痛い!」
ノエルは中央のくぼみまで連れて行かれた。
そこまでノエルが来た時、ウラニアがナイフを抜いた。
そしてノエルの腕を切る。
「ああっ!?」
ノエルは苦悶に歪む。
「フフフ……この血がベルツェブル様に流れていくんですわ。ようやくベルツェブルさまがお目覚めになるのよ!」
三人は部屋の端に避難した。
ゴゴゴと音を立てて、空間全体が振動する。
その時、フロアがはじけ飛んだ。
それから灰色の肌をした巨大な怪物が姿を現した。
その姿は悪魔そのものだ。
破壊衝動の塊――それこそが破壊魔ベルツェブルだった。
ベルツェブルが大きく叫び出す。
「すばらしい! これがベルツェブルか! フハハハハハ!」
ウラヌスが笑った。
ノエルはその声を聞いて意識を失った。
ベルツェブルは地上へとはい上がっていった。
それをセリオンは見ていた。
「今のは!? もうベルツェブルが復活してしまったのか!?」
「ほう……もうハヤブサを倒してきたのか。意外と早かったな。だがベルツェブルの邪魔はさせん。おまえには闇の深淵へと降りてもらう。タルタロス(Tartaros)よ!」
セリオンの前に黒い穴が現れた。
セリオンはその穴に吸い込まれた。
ベルツェブルは突如平和なルブリアナに出現した。
ベルツェブルは大きな叫び声を上げて、人々をすくみ上らせた。
ベルツェブルは口に光線をたくわえた。
そして集中した光線を市街地に向けて発射した。
ベルツェブルの破壊光線が市街地を貫通する。
市街地は一瞬にして廃墟と化した。
「あ、悪魔だあああ!?」
「化け物ー---!?」
人々は狼狽して立ちすくんだ。
ベルツェブルの赤い瞳が周囲を睥睨する。
ベルツェブルは王宮に関心を持ったらしい。
ベルツェブルは家や建物を突っ切って王宮を目指した。
一方王宮では……
「これはいったいどういうことだ!?」
国王ルキアーノが悲鳴のような声を上げた。
「国王陛下! 危険です! すぐに退避してください! 化け物はこちらに向かっています!」
「なんだと!? ええい! クーデターから戻ってきてみれば……」
国王は例のクーデター事件の後、安全になったと思い、ノヴァ―ルに戻っていた。
ドカーンとすさまじい音が鳴り響いた。
「陛下! 陛下あっての国民です! まずは陛下の身の安全こそ重要かと!」
「当然じゃ! 国民が何人死のうと高貴なる身分には変えられぬ! では今すぐに逃げるとしよう!」
ルキアーノは国民を見捨てて真っ先に逃亡した。
一方、セリオンは……
セリオンの全身を光が包み込んでいた。
セリオンは闇の空間タルタロスに捕らわれていた。
セリオンは目を覚ました。
セリオンは重力を感じなかった。
どうやら特殊な空間にいるらしい。
「先まで闇が続いている……いや闇がすべてを包含している。闇がすべてを包み込む。さて、どう脱出するか……」
セリオンの前から黒曜の光線が放たれた。
セリオンは横に体を動かしてそれを回避する。
セリオンは光線が飛んできた方向を凝視した。
そこには一体の悪魔がいた。
名をアイドネウス(Aidoneus)。
闇の化身である。
「あいつを倒せばこの空間から出られそうだな。いいだろう」
セリオンは大剣を構えた。
セリオンはまるで水中にいるかのような感覚を持った。
「体の動かし方に慣れれば、動くのに不自由しなさそうだな」
アイドネウスはどくろの顔に、黒いフード付きのローブ、そして黒い大剣を持っていた。
セリオンは大剣でアイドネウスに斬りつけた。
アイドネウスが片手でセリオンの攻撃を受け止めた。
アイドネウスの黒い大剣がまばゆく闇を発する。
アイドネウスの「黒曜剣」である。
アイドネウスは黒い大剣でセリオンの胴を切断しようとした。
しかし、アイドネウスの攻撃は空振る。
セリオンがとっさに後退したからだ。
セリオンは光の大剣「光輝刃」を出した。
セリオンは光の大剣で攻撃する。
さすがのアイドネウスも両手を使ってセリオンの攻撃をガードした。
光の闇が反発し合う。
アイドネウスはセリオンを斬りは払うと、黒曜の斬撃を放った。
今度はセリオンがその攻撃をガードする番だった。
アイドネウスは後退するセリオンに斬撃を飛ばしてきた。
セリオンは光の大剣でこの攻撃を斬り払う。
アイドネウスは無表情なままだ。
アイドネウスはすべてを吸い込む黒い穴を作った。
これはブラックホールだった。
ブラックホールがセリオンを吸引する。
セリオンは光を集めて光の斬撃を放った。
ブラックホールは光の斬撃によって斬り裂かれ、無力化された。
アイドネウスはまだ無表情だった。
アイドネウスは黒い大剣を通して闇の立体を作った。
闇のエネルギーが周囲にまき散らされる。
それに対してセリオンは光を大剣に収束さえた。
セリオンの大剣を光の粒子が包み込む。
「これをくらえ! 光、在れ! 閃光剣!」
閃光剣はアイドネウスだけでなく、タルタロスまで引き裂いた。
セリオンを中心として光があふれ出る。
アイドネウスは光の直撃を受けて消滅した。
同時に闇黒空間タルタロスも消え去っていく。
セリオンは地下神殿の最下層に戻ってきた。
「戻ってきたか……ん? ノエル!」
セリオンはノエルに近づいた。
「腕を切られたのか……今すぐ止血しよう」
セリオンはノエルに処置を施して、抱き上げた。
「まずいな……ベルツェブルが復活してから時間がたった。今すぐ、ベルツェブルを止めなくては……」
セリオンは一度協会に戻ってノエルを預け、ベルツェブルのもとへと向かった。




