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Das Heldenlied   ヘルデンリート 20 Die Hymne  作者: Siberius
ノエルの章
41/59

ノエル――ヒュドラ

その日セリオンとノエルは宿屋で朝食を食べていた。

本日の朝食はご飯に卵焼き、みそ汁であった。

ノヴァ―ル南部は南の国で雨も多くコメの栽培に適していた。

コメに粘り気はない。

「このおみそ汁、おいしいね」

ノエルがみそ汁を口にする。

「ああ、一流の宿屋ではないが、なかなか行けると思うぞ」

セリオンもみそ汁の具材、とうふとわかめを口の中で味わう。

「なあ、ノエル。明日はルブリアナに帰る日だ。何かしておきたいことはあるか?」

「うーん。そうだねー……だいたいやりたいことはやりつくした感じかな。今日もシュラクーザでやりたいことはもうないし……」

「大変だよ、あんちゃん!」

そこに宿屋の扉を大きな音を出して開けた少年がいた。

それはラファエーレだった。

ラファエーレは血相を変えていた。

セリオンはイスから立ち上がって。

「どうしたんだ、ラファエーレ? 何かあったのか?」

「あんちゃん、助けてくれよ! ガブリエーラ姉ちゃんが領主様の館に連れていかれちまったんだ!」

「何だって!?」

「なあ、あんちゃん、頼む! 姉ちゃんを助けてくれないか!?」

「事情はわかった、ラファエーレ。だが、領主はガブリエーラと話をしたかったのかもしれない。まだ帰ってこないと決めつけるのも無理がある。ここは俺が領主の館に赴いて事情を聞いてみよう」

そう言ってセリオンは領主ミケーレのもとに向かった。



セリオンは領主の館の前で衛兵に問い詰められた。

「ガブリエーラという女性がこの館に捕らわれたと聞いた。彼女を解放してもらおう」

「? おまえはセリオン・シベルスクか?」

「そうだが?」

「領主様から中に入れる許可が出ている。中に入っていいぞ」

「? どういうつもりだ?」

「さあな。詳しいことは俺も知らん。さあ、中に入れ。中で領主様が待っている」

「……」

セリオンは黙って扉を開けて、中に入った。

セリオンは謁見の間まで人に案内された。

「セリオンさん!」

謁見の間でセリオンはワンピースの服に、エプロンをつけた女性ガブリエーラを見かけた。

「ガブリエーラ!」

「よくここまで来たな。セリオン・シベルスク、青き狼よ」

「? おまえは誰だ?」

「フフフ、私は領主ミケーレだ。この都市シュラクーザのあるじだ。そして、こっちが」

「私はオルドラーゴ(Oldrago)。闇の魔道士だ」

オルドラーゴは黒い髪をオールバックにし、あごひげを生やして黒い服を着ていた。

「なるほどな。闇の魔道士がそばにいたのか。ということは例の三人組の闇の魔道士もおまえたちの差し金か?」

「フッフッフ! その通りだ、青き狼よ」

オルドラーゴが答えた。

オルドラーゴは不敵な笑みを浮かべた。

セリオンはとっさに一歩下がった。

セリオンがさっきまでいた位置に、闇の刃が振るわれた。

「ほう、今のをかわすか。さすがは青き狼。剣聖と呼ばれることはある」

「俺をなめるな。さっきのような攻撃など俺には当たらない」

「では、これはどうだ?」

「がはっ!?」

オルドラーゴは闇の剣を出現させた。

それもミケーレの心臓を狙って。

ミケーレは心臓を貫かれた。

「オッ、オルドラーゴ!? なっ、なぜだ!?」

「もはやあなたに用はないのでね。ここいらで退場してもらおうというわけだ。青き狼よ、一つおもしろいことを教えてやろう。あのジェラルドのことだ」

「ジェラルドがどうした?」

「ジェラルドはこのミケーレとメイドとのあいだに生まれた私生児だったのだよ」

「なんだと?」

「ジェラルドは今我々のもとにいる。青き狼よ、我々は魔の山「モンテ・マージコ(Monte Magico)」で待つ! 我々の真の目的は魔竜ヒュドラを降臨させることだ! 追ってきたまえ! 我々を止めたいのならばな! すばらしい出迎えを用意しているぞ! では!」

オルドラーゴは闇の渦の中に姿を消した。

セリオンはガブリエーラを孤児院に預けた。

  


セリオンは戦いの準備をして魔の山にやってきた。

山には木々が生えていて、周囲を暗くしていた。

「オルドラーゴの目的はヒュドラ(Hydra)の復活か。そんなことを許すわけにはいかない。何としてでも奴を阻止してみせる! ん?」

セリオンは木々が茂る中で、魔力を持った気配を感じた。

セリオンの周囲に黒服の、闇の魔道士たちがセリオンを取り囲んでいた。

「オルドラーゴの手の者か」

魔道士たちは魔力を高めた。そこでセリオンは。

「俺を集中して狙うつもりか? そうはいかない。これで!」

セリオンは雷光の力を高めた。

セリオンの周りに地面から雷光が噴き出す。

セリオンは必殺の剣を発動させる。

「雷光閃!」

セリオンの周囲から雷光のきらめきが噴出した。

それは木々をなぎ倒し、周囲を灰で染めた。

セリオンの周囲にいた魔道士たちはすべて蒸発していた。

雷光閃はセリオンの最上級技の一つである。

広範囲を薙ぎ倒し、一瞬で蒸発させる。

「これでザコは一掃できたな。このまま行けば城に達する。おそらくあの城がオルドラーゴの居城だろう。俺はオルドラーゴと決着をつける!」

セリオンは魔の城にやってきた。

この城はよく整備されており、人の手が入っていることを感じさせた。

白の中庭に、セリオンは見知った人物を見つけた。

「よう、待っていたぜ。青き狼様よ」

「ジェラルド……」

それはジェラルドだった。

「ここから先には行かせねえ。もう一度この俺と勝負しろ!」

「ジェラルド……おまえとの決着はもうついている。今のおまえでは俺には勝てない。今すぐ、失せろ」

「ふざけんな! 俺はてめえに勝つ! 俺がてめえなんかにやられてたまるか!」

ジェラルドが怒りの表情を浮かべた。

ジェラルドは剣を抜いた。

ジェラルドの剣が黒い炎をともす。

まるでジェラルドの憎しみみたいに。

セリオンは大剣を出した。

ジェラルドが斬りつけてくる。

ジェラルドの邪炎剣である。

セリオンは光の大剣でそれを受け止めた。

黒い炎が荒ぶる波のようにセリオンを燃やしつけようとする。

そのすべてをセリオンは叩き落した。

セリオンの剣技はジェラルドを圧倒した。

セリオンは正統な剣術を学んでいる。

それに対して、ジェラルドの剣は独学で磨いたものだ。

ジェラルドがセリオンに圧倒されるのはプロフェッショナルの剣技を学んでいないからである。

セリオンはジェラルドの剣をはじき飛ばした。

「くそったれ!」

ジェラルドが悪態をつく。

セリオンは静かにジェラルドに向けて大剣を振り下ろす。

ところが、その時一人の少年がジェラルドの前に立ちふさがった。

セリオンはとっさに剣を止めた。

「二人ともやめてください!」

それはアンジェロだった。

アンジェロはジェラルドの前で立ちはだかった。

「おまえは確か、アンジェロといったか?」

「覚えていてありがとうございます、セリオンさん。もういいでしょう。命まで取ることはないはずです。ジェラルドさんもいい加減にしてください」

「アンジェロ……」

ジェラルドは放心した。

「興覚めだな」

「ぐっ!? がは!?」

その時アンジェロの体に一本の槍が刺さった。

「アンジェロ!」

「おまえは……オルドラーゴか!」

その場にオルドラーゴが現れた。

年齢は50代だろうか。

その顔にしわは見当たらない。

まるで軍人を思わせる風貌。

オルドラーゴは魔法の槍を出してアンジェロを攻撃したのだ。

「おい、アンジェロ! しっかりしろ!」

「ジェラルドさん……今までありがとうございました……」

がくりとアンジェロは倒れた。

「ウオアアアアアアアア!!」

ジェラルドは半狂乱になって、城の奥へと走り去っていった。

「オルドラーゴ! なぜアンジェロを殺した!?」

「フッフッフ! ジェラルドを追いつめるためよ。これでもはやジェラルドの憎しみを止めることができる者はいない。あとはジェラルドをいけにえとしてヒュドラを降臨させ、ノヴァ―ル全土を破壊しつくすのだ!」

オルドラーゴの目的はノヴァ―ルを乗っ取ることだった。

「ふざけるな! そんな企て、この俺が許しはしない!」

セリオンは大剣をオルドラーゴに向けた。

「フハハハハ! 我が目的の礎となるがよい、青き狼よ!」

オルドラーゴは自身の手の近くに剣、槍、斧などを浮遊させた。

「それでどうするつもり……!?」

セリオンは一歩下がった。

すると地面から槍がいくつも出てきた。

「ほう……今のをかわすか。さすが剣聖と呼ばれていることはある。よく見破ったものよ。こちらにダミーまで浮かべていたのにな。まあ、いい。我が魔法アルマ・マラ(Arma Mala)――武器の嵐によって死するがよい!」

オルドラーゴは剣や槍をセリオンめがけて放った。

いくつもの武器がセリオンを襲う。

セリオンはそれらの武器を大剣で叩き落とした。

斧がセリオンの背後から現れて、セリオンに斬りつける。

セリオンは振り返って、大剣でそれを受け止める。

さらに、メイスがセリオンの頭上か落下してきた。

セリオンは横にそれてそれをかわした。

「よくかわすものよ。それなら、これはどうだ?」

オルドラーゴはセリオンの前後左右に剣を出した。

「逝ねい!」

それらの剣がセリオンにいっせいに突きかかる。

セリオンは雷光の力を大剣にまとわせると、くるりと回転すると、雷光で全周囲を攻撃した。

セリオンの技「雷光輪」である。

オルドラーゴの武器の嵐をセリオンは雷光輪で迎撃した。

オルドラーゴのアルマ・マラはいくつもの武器を使役する魔法だ。

「これなら、防げるか?」

セリオンは迫り来る武器を見つめた。

「そんな武器では俺は殺せないぞ!」

セリオンは蒼気を放出した。

セリオンは蒼気の刃、蒼波斬で武器の嵐を迎撃した。

「な、なんということだ……」

「これでもくらえ! 蒼波刃!」

セリオンは蒼気の刃、蒼波刃を飛ばした。

オルドラーゴはニヤリと笑った。

オルドラーゴは大鎌を出した。

オルドラーゴの一撃が蒼波刃を斬り裂く。

「アルマ・マラだけが私の術ではないぞ。この大鎌の魔力、思い知れ!」

オルドラーゴが鎌の斬撃を繰り出した。

セリオンはそれを蒼気の刃で相殺する。

セリオンは蒼気を一本の刃に収束した。

そして蒼気の剣撃を放つ。

オルドラーゴはそれを大鎌で防ごうとした。

「なにっ!? ぐぶは!?」

セリオンの技「蒼気凄晶斬」は大鎌ごとオルドラーゴを斬り裂いた。

オルドラーゴは血を噴き出して倒れた。

「ぐぐっ……まさか、この私が敗れるとはな……だが、もはや手遅れよ! ヒュドラはジェラルドの体に憑依して復活する! 城の表に出るがいい! そして絶望するのだ! さすがのきさまもヒュドラの前には無力よ! フハハハハ! 残念だったな! ぐっ、がはっ!?」

「……言いたいことだけ言って死んだか。城の表か。確かそこは荒地だったはずだ。行ってみよう!」

セリオンは走って城の表へと向かった。

その時、大きな咆哮がこだました。

それは一匹の竜だった。

九本の首を持つ竜――魔竜ヒュドラの咆哮だった。

セリオンは表の平地にやってきた。

そこには実体化したヒュドラがいた。

水色の胴体が特徴的な竜だった。

ヒュドラは邪悪な瞳をセリオンに向けた。

セリオンはヒュドラの前で大剣を構えた。

「ついにヒュドラが復活してしまったのか……なら、俺がこいつを倒すだけだ」

ヒュドラが口から水の息を出した。

強力な水しぶきがセリオンを襲う。

それをセリオンは走り、ジャンプして回避した。

水の息はそのすさまじい圧力で地面を削り、爆破していった。

その威力はすさまじくまともにくらったら即死はまぬがれない。

「すさまじい息だな。だが、俺にはそう簡単に当たらない」

セリオンが冷静に分析した。

ヒュドラの首がセリオンに襲いかかる。

鋭い牙をたてて責め立てる。

しかし、セリオンはそのすべてをかわした。

セリオンは大剣を振るう。

セリオンは大剣でヒュドラの首を切断する。

セリオンは二つの首を斬った。

ヒュドラの首は切断面から膨れ上がり再生した。

「ヒュドラの首が再生したか……伝承の通りだな」

次のヒュドラは泡の息を出した。

泡がセリオンの周りに集まる。

セリオンはすぐさまその毒気に気づいた。

「これは……眠りの毒か!?」

セリオンはすぐさま蒼気を出した。

そして蒼気で泡を吹き飛ばした。

ヒュドラは泡の息を見破られると、口から紫色の息をはいた

それは毒の息だった。

「今度は毒の息か。だが同じだ。俺の蒼気の前に、そんなものは効かない!」

セリオンは膨大な蒼気をまとわせると、それで毒の息を吹き飛ばした。

ヒュドラが咆哮する。

ヒュドラの威圧だ。

それは常人であれば、その圧力に屈して、倒れるだろう。

だがセリオンはそうではない。

セリオンにとってこの程度の威圧は涼しい風に等しい。

セリオンは大剣から雷電を放出させた。

「くらえ! 雷鳴剣!」

セリオンは雷電の力でヒュドラの本体を打撃した。

ヒュドラが叫び声を上げる。

ヒュドラの再生力――それは脅威だ。

だがその力も、あくまで首に限定されている。

つまり本体それ自体を打撃で斬れば、ヒュドラの再生力な無意味だ。

ヒュドラの弱点は雷だ。

セリオンの攻撃はヒュドラに大ダメージを与えた。

ヒュドラの全身がしびれ硬直する。

「とどめだ! 雷光剣!」

セリオンは雷光の一撃を叩きつけた。

ヒュドラが絶叫を上げた。

ヒュドラは倒れ、青い粒子と化して消滅していった。

消えたヒュドラから全身が真っ白になったジェラルドが倒れていた。

セリオンの戦いによってヒュドラは倒された。

セリオンはノエルと共に王都ルブリアナに帰還した。

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