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Das Heldenlied   ヘルデンリート 20 Die Hymne  作者: Siberius
ノエルの章
35/59

ノエル――シュラクーザ

セリオンとノエルはバイクで南の都市シュラクーザ(Sciuracusa)にやってきた。

暖かい日差しが照り付ける。

「ノエルは海を見たことがあるか?」

「ううん、知らない」

「そうか。ならいい機会だ。海を見てみるといい。きっと喜ぶだろう」

「うん」

二人はまず町を観光することにした。

セリオンは土産物屋に気を留めた。

「ん? あれは……」

「? どうしたの、セリオンさん?」

「ノエル、あそこは土産物屋だ。今回の旅行の記念に一つ、プレゼントしよう。好きなのを選んでいいぞ?」

「え? いいの? やったー! えーと……」

ノエルは真剣な表情で土産物を選ぶ。

「えーと……うん! これがいい!」

「どれどれ」

セリオンはノエルが選んだ品物を見た。

それはイルカのブローチだった。

「こんにちは。あなた方は兄妹ですか?」

店主が気さくに話しかけてくる。

「まあ、妹みたいなものですよ」

「そうですか。お気に入りの品はありましたか?」

「ええ。このイルカのブローチをください」

「はい。お買い上げありがとうございました」

セリオンは支払いを済ませてノエルのもとに駆け寄った。

「ノエル、買ってきたぞ」

「ありがとう、セリオンさん」

「もうつけてみるか?」

「うん! さっそくつける!」

セリオンはノエルに水色のイルカのブローチを髪につけた。

「どう?」

「ああ、にあっているぞ」

「うふふ、うれしいな」

「ノエル、ここから海が見えるぞ」

「海!? あれが海……うわー、すごいなー。あんな青々として輝いているんだ。セリオンさんが言った通りだったね!」

ノエルは「海」に視線がくぎ付けにされた。

セリオンはノエルと話をしたとき、「海」のことを話題にした。

それからノエルが海を見たことがないと。

「演劇の時間は10時だったよな?」

「ええ、そうね。楽しみね」

「まあ、ゆっくり行こうか」

観光客の話をセリオンは聞いた。

「演劇か」

「? どうしたの、セリオンさん?」

「ノエル、いい機会だ。海を見ているのもいいが、演劇がやるらしい。どうだ、見に行かないか?」

「行ってみたい!」

「よし、じゃあ行くとするか」



演劇は半円劇場アンフィテアトルム(Amphitheatrum)で上演される予定だった。

セリオンとノエルは半円劇場にやってきた。

もう人がたくさん集まり、腰を下ろしていた。

旅の一座アブラーモ演劇団が演じる。

「もうそろそろ始まりそうだな」

セリオンがつぶやいた。

そこに劇場で主演の女性チェチーリア(Cecilia)からあいさつがあった。

「みなさま、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。今回わたくしどもが演じるのは「灰かぶり」という名の物語です。少し、原作を改変しておりますが、みなさまにお楽しみいただけるよう一座一同、演技をいたしますのでごゆるりとお過ごしくださいませ」

わああと、歓声が上がった。

チェチーリアは長い金髪をポニーテールにしてヒロインのベラが着る衣装のドレスを着ていた。

かくして演劇「灰かぶり」が上演された。

ヒロインのベラ・ディアマンテ(Bella Diamante)はディアマンテ公爵の娘だった。

父の公爵カルロ(Carlo)は戦争に行ったきり帰ってこなかった。

まま母のカルロッタ(Carlotta)は家の財産を自分の思い通りにできると思っていた。

カルロの娘ベラは美しい娘だったが、カルロッタが嫉妬し、召使の服装をさせていた。

ベラは図書室で本を読んでいた。

「こんなところにいたのかい、ベラ! 本なんて読んでいないでぞうきんでもモップでもやることはあるだろ!」

「はい、お母さま……」

ベラは本をしまってしぶしぶ仕事をした。

ベラは本を読めなくて悲しい気持ちになったが、元気を出して、仕事に当たった。

そこに、一つの話が舞い込んだ。

「ねえ、アブラーモ(Abramo)王のおふれについて聞いた?」

「聞いたわ。王子様と結婚できるチャンスなんですって!」

エレーナ(Elena)とシモーナ(Simona)だ。

この話にベラは無関心だった。

ベラはモップで床を掃除していた。

エレーナとシモーナはそんなベラを見てあてつけるように。

「まあ、まずあの子はありえないわよね。そうでしょ、シモーナ?」

「ええ、そうね、エレーナ。だってあんなみすぼらしい娘なんて王子様と釣り合わないわ」

二人はベラが公爵令嬢であることを忘れて、ベラを侮蔑した。

「これは玉の輿になるチャンスよ、エレーナ!」

「そうね、シモーナ。私たちの美貌で、王子様の心を射止めましょう!」

「二人とも、舞踏会に着ていくドレスを選ばなくちゃいけないよ」

そこにカルロッタが入ってきた。

「いいかい。王子様の心はおまえたちなら必ず射止められる! とにかくパーティーの日は着飾って行くんだよ!」

「「はい、お母さま!!」」



さて、エレーナとシモーナは舞踏会当日の夜、着飾って会場のお城に向かった。

ベラは自分には関係ないと思い、図書室で本を読んでいた。

そんなベラの前に、一人の魔女がやってきた。

「おまえさんは舞踏会には行かないのかい?」

「だって、私には関係ないもの」

「今夜一日だけ魔法が現れる。そら、こんな風に!」

魔女がステッキを振るうと、ベラはとても美しくきれいなドレスを身にまとっていた。

ベラの前に鏡が置かれる。

首には真珠のネックレス、靴はガラスだった。

ベラは自分の美しさに見とれた。

「さあ、ベラ! お城行きの馬車を用意したよ、おまえさんも楽しんでおいで」

ベラは魔法の馬車に乗り、お城へと向かった。

一方、お城では……

アキレ(Achille)王子は浮かばない顔で宴の席についていた。

「これ、どうした王子よ? 今回の宴はおまえの結婚相手を探すためのもの。誰か気になる娘はおらんのか?」

「父上、私はあまりこたびのイベントに関心を持てません」

「アキレよ、おまえは将来王となる定め、ゆえにおまえは妃を選ばねばならん。それはわかっているな?」

「はい、わかっております、父上。今回は……!? あれは……」

「? どうした?」

王子は今しがた来た女性に目を止めた。

それはベラだった。

その夜のベラは輝くほど美しかった。

アキレ王子の目はベラにくぎ付けとなった、

当のベラは一人でたたずんでいた。

その時。

「そこのお嬢さん、私とダンスを踊りませんか?」

なんとベラはアキレ王子から、ダンスを申し込まれたのだ。

ベラの胸はときめいた。

その一方でエレーナとシモーナは王子に近づけずに悔しがり地団太を踏んだ。

「なによ、あの娘! 少しばかりきれいだからって、思い上がって!?」

とエレーナ。

「王子様にふさわしいのは私たちなのに!」

とシモーナ。

王子とベラはダンスを踊った。

「あなたは美しい……こんなにきれいな方が無名でいたなんて私には信じられない」

「失礼ですが、王子様、私の美貌よりも私の心を見てくださいませ」

王子はベラをリードしてダンスを踊る。

「そうだ、あなたのお名前を教えていただけないでしょうか?」

「私は……」

その時、11時50分の鐘が鳴った。

「そろそろ12時になっちゃう! 魔法が解けちゃう!」

「魔法? どうしたのですか? 時間ならまだ……」

「すいません! 失礼します!」

ベラはドレスをまくり上げて走った。

「待って! 美しい人!」

王子は呆然とたたずんでいた。ベラはガラスの靴を落としていった。

王子はそれを手に取った。



後日、王国ではガラスの美女を探すために町の娘たちを広場に集めた。

娘たちはガラスの靴に足を入れるが誰も入らない。

エレーナもシモーナも挑戦したが、サイズが合わずに無様な失態を演じた。

ちょうどベラがその場所に現れた。

ベラはあの夜のことを夢のように感じていた。

「そこのお嬢さん! この靴をはいてくださらんか?」

ベラは靴に足を入れた。

すると靴はベラの足に収まった。

ベラはお城に連れていかれ、王子様から妃にされた。

そして戦場に行った父カルロが戻ってきた。

二人は幸せに暮らしました。

めでたしめでたし。

そこでキャスト一同が総出で観客にあいさつした。

やはりチェチーリアが人々の注目の的だった。

「どうだ、ノエル? おもしろかったか?」

「うん、ヒロインが王子様と結ばれてよかった。これは女の子向けの物語だと思うな」

セリオンとノエルは劇場から出ていった。

二人は町に入った。

「ノエル、おなかがすいてきたか?」

「そうだね、セリオンさん。おなかすいたよ」

「じゃあ、どこかで昼食を食べるとしようか」


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