ノエル――ピエトロ
昼、セリオンは正教の本部サン・ペトロニオ大寺院に攻撃をかけた。
寺院の尖塔が天上を目指して伸びている。
セリオンには鍛え抜かれた神官戦士が束になってもかなわない。
セリオンの圧倒的、否、超人的な強さがとどろく。
「ひっひいいいいいい!?」
「くっ、くそっ!?」
「無駄なことだ。おまえたちでは俺に勝てない」
大剣を手にしながらセリオンが一歩一歩大寺院に近づいていく。
「俺たちはさんざん正教の攻撃に対処してきた。こんな宗教戦争を仕掛けたのはおまえたち正教側だ。俺たちの行動は正当防衛だ。正教が謝罪するまで俺の攻撃が止まると思うな!」
セリオンはさらに一太刀で神官戦士を吹き飛ばした。
セリオンの攻撃はすさまじかった。
神官戦士たちはまるでドラゴンを見るような目で、セリオンを見た。
「落ち着け! 神々を信じるのだ! 神々が必ず我らに勝利を授けてくれる!」
「おまえは……大神官ピエトロか!」
白い髪で頭はハゲ、法衣に身を包んだ男は大神官ピエトロだった。
「おまえが謝罪するなら、攻撃をやめてもいいぞ?」
「フン! きさまごときになぜわしが頭を下げねばならんのだ? きさまこそ頭をたれよ!」
「シベリウス教の教会を攻撃するよう部下に命じたな?」
セリオンはまるで断罪するかのように言葉を紡ぐ。
「フォッフォッフォ! その通りよ! シベリウス教は正教の脅威となった。だから潰させてもらおう」
「正気か?」
「正気だとも」
「まるで狂信者だな」
「フォッフォッフォ!ではおしゃべりはこの程度にして本題に入ろうかの。いでよ、イフリート!」
「なんだ?」
大寺院の大広場に炎の魔獣が現れた。
顔は獣、手足には毛が生えている。
「フォッフォッフォ! こやつはイフリート。このわしの召喚獣じゃ。さあ、イフリートの炎に焼かれるがいい!」
イフリートの本質は炎だが、肉体を持っている。
つまり、斬撃は有効というわけだ。
セリオンは氷の刃「氷結刃」を形成した。
セリオンはイフリートの苦手な氷で攻めるつもりだった。
セリオンはイフリートと向かい合う。
イフリートは獰猛な気性で、赤い目を持っていた。
セリオンは氷結刃でイフリートに斬りつけた。
それをイフリートは口を開けて口でつかんだ。
「くっ!」
イフリートの牙が大剣の氷に打ち込まれる。
イフリートは口に炎をたくわえた。
セリオンは大剣を持って後退した。
イフリートが炎の息をはいたのだ。
セリオンはそれを氷結刃で受け流す。
イフリートは炎を爪にまとい、セリオンに攻撃してきた。
すさまじい爪の乱舞にセリオンは反撃のチャンスを見いだせなかった。
イフリートの炎の爪がセリオンに来襲する。
セリオンは氷の刃でイフリートを斬りつけた。
イフリートはやすやすと右手で氷の刃を捕まえる。
イフリートの手に炎がともった。
イフリートは火炎弾を撃った。
セリオンは速やかに横によける。
イフリートは炎の拳をアッパーにして繰り出した。
イフリートから火炎波が発生する。
炎の波は一直線にセリオンに向かった。
セリオンは氷の刃でその攻撃を斬り裂いた。
イフリートは大魔法を発動した。
セリオンを炎が取り囲み、中心に炎がともってそれが爆発した。
セリオンは氷の刃を出したまま、爆発に巻き込まれた。
イフリートは爆風が収まるまで動きを控えた。
セリオンはあの爆発でも無傷だった。
セリオンは氷の魔力で大魔法「炎帝」を無力化したのだ。
だがこれは言うほど簡単ではない。
「今のは危なかった。今のが全力か?」
イフリートは言葉を理解できない。
それでも何かが伝わったようだった。
イフリートが全身から炎を出した。
今までのオレンジの炎ではなく黒い炎だ。
「黒い炎?」
イフリートは両手を地面に叩きつけた。
そこから黒い炎の波がいくつも現れた。
セリオンめがけて黒い炎が駆け抜ける。
セリオンは氷星剣を出して、黒い炎に対した。
セリオンの氷の剣が黒い炎を消していく。
セリオンはすぐさまイフリートに接近すると、氷星剣でイフリートを貫いた。
「グギャオオオオオオオ!?」
イフリートが絶叫する。
イフリートは倒れ、赤い粒子と化して消えた。
「そ、そんなバカな!? あのイフリートがやられるなどと!?」
ピエトロは驚愕した。
セリオンは大剣をしまった。
「おまえがすべての糸を操っていたんだろう? 半殺しで勘弁してやる」
「ひっ、ひい!?」
セリオンは両手を握り、おびえるピエトロを拳でぼこぼこにした。
それを神官戦士たちは呆然と眺めていた。
かくしてシベリウス教と正教徒の争いは幕を閉じた。
戦いはシベリウス教の勝利で終わった。
しかしこの宗教紛争には勝ったからといってそれで終わりではなかった。
勝ったシベリウス教はいっそうの信徒を獲得した。
一方、正教はますます衰えていった。
双方の宗教の和解はノヴァ―ル王国が、国が乗り出して調停した。




