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Das Heldenlied   ヘルデンリート 20 Die Hymne  作者: Siberius
ノエルの章
33/59

ノエル――スラム

ノヴァ―ル王国の国民は貴族と平民に分けられる。

貴族という存在も貴族制度も、すべては建国の時までさかのぼる。

エマヌエーレ一世と共に戦い、戦場に身を置いたのが貴族の起源である。

つまり、貴族の特権は平民を守るためにあったのだ。

独立戦争後、貴族は読み書きといった能力に恵まれていたために、軍の士官や騎士団の高級官僚などに登用されることが多かった。

貴族の高貴さといえば戦場で危険に身をさらすことにあった。

今の貴族は生来特権があると思い込んでおり、堕落していた。

ノヴァ―ル王国の議会は貴族院といって貴族にしか被選挙権はない。

一般の平民はノンキャリア官僚、軍の兵士、一般騎士などしか公務は解放されていない。

貴族は高い学校教育を受けられるが、平民は学校に通ったこともない者がほとんどだった。

ルブリアナにもスラムはある。

ルブリアナのスラムは一言でいえば貧民の町、見捨てられた場所、である。

セリオン、ノエル、ルドミラ、アンジェラ、ローザはスラムに来てまず掃除した。

ごみを集めたり、ぞうきんでふいたりする。

スラムの住民は「貧民」と呼ばれ、失業者や貧しい者が多かった。

無産者という言い方もある。

これは仕事をしている人々を「生産者」ととらえることによる。

スラムでは犯罪率が高い。

セリオンたちはまとまって行動することにした。

一人の少年がセリオンにぶつかろうとしてきた。

セリオンはその瞬間に。

「スリだな?」

少年は驚愕した。

少年は逃げようとするが、セリオンのバカ力の前に手を解放させてもらえない。

「くっ!? は、離せ!」

「……いいだろう」

セリオンは少年の手を離した。

少年はすぐさま人垣のなかに消えていった。

「おお、毎度、毎度すまないねえ。今日もきれいにしてくれるのかい」

「パオロ(Paolo)さん、お久しぶりですね」

「シベリウス教の神様はすばらしい。正教の神様はわしらには何一つしてくれなんだ。わしらは一方的に侮蔑され、見捨てられた。わしらはスラムにしか居場所がないから、掃除してくれると助かるよ」

「パオロさん、最近きちんと体をふいていますか? 服は洗ってますか?」

とアンジェラが尋ねた。

「まあわしはできておるな。もっともおまえさん方が来てくれるようになってからじゃがのう。だが、スラムにいるすべて者がそうとは限らん。衛生観念がない者も多い。おおそうじゃ、一つ頼みたいことがあるんじゃが……」

「なんですか?」

「妻のコンスタンツァ(Constanza)の墓をきれいにしてやりたくてのう。最近はあまり重労働できなくてな。どうじゃろう、わしの代わりに墓をきれいにしてやってはくれんかね?」

「ええ、わかりました。そうですね……セリオン、ノエル、頼めるかしら?」

「わかった。じゃあノエル、俺といっしょに墓地に行こう」

「うん!」

二人は歩いて墓地までやってきた。

墓は簡単に見つかった。

石板が置かれている。

その中には遺骨が納められていた。

名前を見るとコンスタンツァと書かれてあった。

「よし、これだな。じゃあ、きれいにするか」

二人はバケツに水を入れたりぞうきんでふいて墓をきれいに掃除した。

セリオンとノエルは戻ろうとしたとき、担架で人が運ばれていった。

「あれは……」

「? どうしたの、セリオンさん?」

セリオンは数秒死体を見ただけだったが、明らかにその死体は血を抜かれていた。

そこにスーツを着た、一人の男が現れた。

「失礼……セリオン・シベルスク殿で?」

「そうだが……あんたは?」

「失礼しました。私は白虎会の者。名はファブリツィオ(Fabrizio)、ドン・ベルナルディーノ(Don Bernardino)の部下です。私のあるじがあなたに会いたがっています。どうか話を聞いてはくれないでしょうか?」

「わかった、聞こう」

セリオンはファブリツィオについて行って白虎会の建物まで案内された。

建物は四角で、白く塗られていた。

セリオンとノエルはボスの部屋へと通された。

ボスのベルナルディーノはスキンヘッドにラフなスーツを着用していた。

二人はソファーに座るよう促された。

「おまえがセリオン殿か? 私はベルナルディーノ。この白虎会のボスをやっている」

「それで、俺に話とは何なんだ?」

ベルナルディーノは一呼吸置くと。

「最近、何者かがスラムの住民を襲っている。死体からは血が吸い取られていた。一説には吸血鬼のしわざと言われている。どうだろう、報酬は出す。この事件を解決してもらえないだろうか?」

ベルナルディーノが鋭い眼光を見せた。

「わかった。スラムの平和は俺たちが望んでいることでもある。力を貸そう」

「おお、ありがたい!」

スラムの治安は白虎会が担っていた。多少荒いところはあるが警備や護衛などもやっている。



夜、ジョヴァンニ少年は一人でスラムを歩いていた。

ジョヴァンニにとっては初めての失態だった。

まさかスリに失敗するとは……

ジョヴァンニはある気配を感じた。

「なんだ? 誰かいるのか?」

それは何も答えない。

それがジョヴァンニの前に姿を現す。

「ひっ!? 化け物ー!?」

それはすばやく動いてジョヴァンニに喰らいついた。

翌日、ジョヴァンニの死体が発見された。



夜の見回り。セリオンは夜のスラムを見回りしていた。

謎の存在が襲ってくるようにあえて一人で歩いていた。

影が動いたような気がした。

「? 何かいるのか?」

セリオンは影に問いかけた。

返事はなし。

影がその姿を現した。

「!? こいつか!?」

異形魔いぎょうまジェヌーヴァ(Genuva)である。

ジェヌーヴァは口を開くと、セリオンにかみつこうとしてきた。

セリオンはとっさに反応して回避する。

ジェヌーヴァは異形の怪物だった。ジェヌーヴァはどくろの顔、翼、蛇のような下半身を持つ怪物だった。

「こいつが犯人か!」

セリオンは大剣を出した。

セリオンはジェヌーヴァと対峙した。

ジェヌーヴァは触手を出してきた。

ジェヌーヴァの体から槍のように触手が飛びてできた。

セリオンはとっさに横によけてかわした。

ジェヌーヴァはさらに触手を伸ばして薙ぎ払ってきた。

セリオンは大剣でそれをはじき飛ばした。

ジェヌーヴァが口に闇をたくわえた。

ジェヌーヴァは口から闇の息をはいた。

セリオンは光輝刃を出して闇の息をやり過ごした。

ジェヌーヴァはセリオンに重力を加えてきた。

セリオンはとっさに後ろに跳んだ。

とたんにセリオンがいた位置が爆ぜた。

ジェヌーヴァが重力で圧力を加えてきたのだ。

ジェヌーヴァが重粒子を収束する。

ジェヌーヴァはセリオンに狙いを定めた。

ジェヌーヴァから重粒子の砲撃が行われた。

これは命中すれば肉片一つ残らない威力を持っている。

セリオンは横に跳びのいてビームの射程から身をかわした。

「くっ!? なんて威力だ!」

ジェヌーヴァは闇の波動をセリオンに向けて放った。

セリオンは光の大剣でそれに斬りかかった。

光と闇がスパークを起こす。

「この程度!」

セリオンは光の大剣で闇の波動をかき消した。

ジェヌーヴァが手を前にかざした。

ジェヌーヴァは闇爆を放った。

「うおあ!?」

セリオンが闇の爆発で吹き飛ばされる。

セリオンは空中でくるりと回転し、闇爆の衝撃を抑え込んだ。

そして鮮やかに着地する。

「? なんだ?」

セリオンは警戒した。

ジェヌーヴァが口に何かをため始めた。

これはセリオンにとって未知の攻撃だった。

セリオンはとっさに横に跳んだ。

ジェヌーヴァから凶酸の息が出された。

「酸か!」

ジェヌーヴァが凶酸を口から何度も発射した。

セリオンはそれを軽やかによける。

ジェヌーヴァの凶酸は大地を腐食させた。

「これをくらえ! 光波刃!」

セリオンは光の刃をジェヌーヴァに向けて出した。

光の刃はジェヌーヴァに命中し、切り傷を作る。

ジェヌーヴァから黒い血が流れた。

ジェヌーヴァは痛みに苦しんだ。

「今だ!」

これを好機と見たセリオンはジェヌーヴァに接近し、光の大剣でその首をはねた。

ジェヌーヴァは倒れて崩れ落ちた。

そしてどす黒い粒子を放出して消滅した。



ドン・ベルナルディーノはセリオンに莫大な報酬を出した。

ジェヌーヴァが消えたことで、スラムの人々は安心して活動することができた。

スラムの人々は他者に感謝するということを忘れていたのだ。


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