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Das Heldenlied   ヘルデンリート 20 Die Hymne  作者: Siberius
ノエルの章
18/59

ノエル――フォルネージュ

そして一行はモンターノ山を登りだした。

生徒たちはしばらくするとオークと遭遇した。

オークは醜く、豚のような顔に二足歩行するモンスターだった。

オークは土属性を持っており、風の魔法に弱い。

「オークの弱点は風だ。誰か風魔法が使える者は?」

カウル先生が助言した。

「はい、私が使えます!」

声を上げたのはルドミラだった。

「エリゼーネか。よし、やってみろ」

カウル先生がゴーサインを出す。

ルドミラは風の魔力を集めた。

魔力が紋章となりられていく。

それはほかの人が見ても洗練されていて美しかった。

ルドミラは風の刃「風刃」を杖先から出した。

風の刃はオークの首に向かった。

ルドミラの風刃はオークの首を切断した。

オークの首が落ち、胴体が倒れる。

「ルドミラちゃん、すごい!」

ノエルが称賛した。

他のものからも賛嘆の言葉が出た。

マジェンダ先生はわざわざ前に出てきて。

「威力、狙い、共にいい水準だね、エリゼーネ。さすがに自主トレーニングしているだけはある、見事な風魔法だよ」

「はい、ありがとうございます!」

「オークが出たと聞いてね。慌ててすっ飛んできたよ。だけど、エリゼーネほどの術者なら、オーク程度相手にならないね。それじゃ、あたしは後ろに戻るよ」

マジェンダ先生は下がっていった。

ルドミラは日々魔法の腕を磨いている。

ルドミラの魔法適正は「風」だった。

ルドミラの将来の希望は魔道士の軍隊「魔法師団」に入ることである。

ルドミラは体力トレーニングにも余念がない。

生徒たちはまたオークと遭遇した。

その数は二体。

オークは手に剣を持っていた。

ルドミラは前に出ると、風の刃を作り出し、オークの胴体に向けて放った。

オークの胴が風の刃で一刀両断された。

オークは真っ二つに両断されて絶命した。

さすがのルドミラもオーク二体を切り裂く風の魔法は大きな力を使ったらしい。

少し、疲労があるようだ。

生徒たちはモンターノ山を上に目指して登った。

そこでは鬼のようなモンスター、オーガと遭遇した。

オーガはまだこちらに気づいていない。

「ふっ! このぼくがオーガごとき一撃で仕留めてみせようじゃないか!」

「一人で、相手をするな、ガルドーナ! エリゼーネ、シュタンツ、三人でオーガを攻撃しろ!」

カウル先生からの指示が出る。

トビアス、ルドミラ、ノエルの三人がオーガと対峙した。

「三人で相手をするまでもない。ぼくの火球で即死だ! くらいな!」

トビアスが火球をオーガに向けて放った。

炎が爆炎を巻き起こし包み込む。

「どうだ! ぼくの前にい敵は……!? なんだって!?」

トビアスが驚いた。

オーガは軽いやけどを負った程度で平然と立っていた。

オーガは人間の存在に気づいた。

逆襲しようと近づいてくる。

「風刃!」

ルドミラが風刃を発射した。

オーガを止めることはできたものの、風刃はオーガの体を傷つけただけだった。

「ウソ、効いてないの!?」

続けてノエルが氷の弾を出す。

「氷結弾!」

ノエルの氷の弾がオーガの顔面に直撃した。

オーガは命絶えて倒れた。

「いい魔法だったぞ、シュタンツ。よし、この調子で腕を上げていけ」

「はい!」

ノエルが返事した。

「そろそろ、昼の時間だな……全生徒に通達する! 我々は昼食に入る! この少し先に場所があるから、そこで昼食を取ろう!」

カウル先生が全生徒に命じた。


生徒たちは各自グループを作って昼食を食べ始めた。

ノエルとルドミラは家から持ってきたお弁当箱を開けてそれぞれ昼食を食べようとする。

「ここ、いいか?」

そこにセリオンがやってきた。

二人はにっこりとほほんで。

「うん、いいよ!」

「ええ、いいですよ!」

「ありがとう」

セリオンはノエルの隣に腰を下ろした。

「二人とも、お弁当を持ってきたのか。何が入っているんだ?」

セリオンが尋ねた。

「私はサンドイッチを持ってきたんだ」

「私はパスタ……スパゲティーです」

ちなみにパスタはノヴァ―ルの国民食である。

「ふーん、そうか。ちなみに俺はアップルパンとクリームパンだ」

「セリオンさんは料理はしないの?」

ノエルがセリオンに聞いた。

「いや、俺は料理を作ることもできる。テンペルでは後方業務に必ず派遣されてな、そこでみっちり料理を仕込まれる。もっとも俺は母さんから料理を教わったんだよ」

「そうなんだ。テンペルってすごいところなんだね」

セリオンはパンを開けて食べ始めた。

「ねえ、セリオンさん。よかったら私のサンドイッチも食べる?」

「いいのか?」

「うん、ぜひ食べてみて!」

「それじゃあ、一つ……ああ、おいしいな!」

「えへへ、そうでしょ?」

「それじゃあ、セリオンさん、私のパスタもどうぞ」

「ありがとう、ルドミラ。それじゃあ、いただくよ。うん、おいしいな。パスタによく味がしみ込んでいる」

三人は和気あいあいと昼食を食べた。

それをおもしろくない顔でトビアスが見ていた。

セリオンはその視線に気づいた。

「? どうしたんですか、セリオン様?」

ルドミラが心配そうに。

「いや、別になんでもない。二人とも食べ物を分けてくれてありがとう。おいしかったよ」

「セリオンさんになら、いつでもあげるよ?」

「欲しくなったらいつでも言ってくださいね」

ノエルもルドミラもニコリとほほえんだ。

三人は楽しく昼食を終えることができた。



生徒たちは山を八割ほど登った。生徒たちは登山で疲労していた。

「もう少しで、モンターノ山の頂上だ。よく頑張ったな。あと少しでこの登山も終わりになるぞ」

カウル先生が励ました。

生徒たちは最後のがんばりをしようとした。

その時である。

そこに赤いシカのような体に、大きな一本の角を持っているモンスターが現れた。

「なっ!? なぜこんなところにこんなモンスターがいる!?」

カウル先生が動揺した。

それはモンターノ山に生息していないはずのモンスターだった。

「アイゼン・ホルン(Eisenhorn)!」

セリオンが生徒たちの前に躍り出た。

「カウル先生! ここは俺に任せてください!」

「……わかった。君に任せる」

セリオンはアイゼン・ホルンと対峙した。

アイゼン・ホルンは

今の生徒たちが相手をすれば、死傷者を出しかねない。

このモンスターは非常に攻撃的だった。

アイゼン・ホルンが角で突っ込んできた。

セリオンはそれを横によけてかわす。

アイゼン・ホルンはすぐに対応し、再びセリオンに角で突っ込んできた。

「そんな攻撃が当たると思うな」

セリオンは大剣を振り、アイゼン・ホルンの角を切断した。

アイゼン・ホルンは角を失って動揺した。

セリオンはその隙を逃さなかった。

セリオンはアイゼン・ホルンの首をはね飛ばした。

ガタッとアイゼン・ホルンが倒れる。

「まあ、こんなものか」

セリオンが大剣を下に向ける。

「さすがだな、セリオン君。青き狼の異名はだてではないな。このモンスターは今の生徒たちでは相手にできなかっただろう。みなを代表して感謝する」

カウル先生が頭を下げた。

「気にしないでください。こんな時のために俺がいるんですから」

「そうだな。生徒諸君! 今のセリオン君の戦い方をよく覚えておくように! 本当の戦士の戦いとはこういうものだということをな!」

「「「はい!!!」」」

生徒たちの中から返事が返ってきた。

一人、トビアスがおもしろくなさそうな顔をしていた。

生徒たちはその後山頂に到達した。

山頂にはきれいなエメラルド色の湖があった。

「うわー! すごくきれい! そうだよね、ルドミラちゃん!」

とノエル。

「ええ、本当ね。こんなきれいな湖なんて私は初めてよ」

生徒の中にはスケッチブックを出して、スケッチする者もいた。

その時、湖の水が膨れ上がった。

「うわあああああ!?」

「きゃああああああ!?」

生徒たちの悲鳴がこだました。

湖の上に氷の竜が現れた。

氷竜フォルネージュ(Forneezch)である。

青い体をして二本の角を持ち、海竜のような胴体をしていた。

「こいつは……氷の竜か! おかしい! こんな奴は例年いないはずだ! まずい! 生徒たちを避難させなくては!」

カウル先生はすぐに生徒たちを湖の近くから避難させた。

だが、一人だけ氷の竜に立ち向かう男がいた。

「トビアス・ガルドーナ! 何をしている! 早く下がれ!」

「お断りします、カウル先生」

トビアスが拒否した。

「こんな奴、ぼくひとりで倒してみせますよ!」

トビアスの動機はセリオンへの嫉妬だった。

あんな奴にできて自分にできないことはないと思っていた。

「バカなことはよせ!」

カウル先生が叫んだ。

トビアスは剣を持ち、火球を作り出してフォルネージュを攻撃した。

炎の爆発がフォルネージュを包んだ。

「やった! ははは! 氷の竜なんてぼくの敵じゃ!?」

爆炎の中から、氷雪の息がトビアスに吹き付けられた。

「うわああああああ!?」

トビアスの体が氷雪に覆われていく。

トビアスの体から生命力が奪われていく。

カウル先生はとっさに斬撃を放って、フォルネージュを攻撃した。

フォルネージュは息を中断した。

「大丈夫か!?」

カウル先生がトビアスに駆け寄って、背負い、湖から離れた。

「おまえの相手は俺がする」

セリオンは大剣を構えてフォルネージュを威圧した。

「カウル先生! その子をこっちへ運びな!」

マジェンダ先生が結界を作って生徒たちを避難させていた。

「マジェンダ先生、この子はどうだ?」

「氷雪の息にやられて、生命力が大幅に低下しているね。まずは体を温暖魔法で温めないとね」

マジェンダ先生はトビアスを暖かい光で覆った。

トビアスの氷雪がしだいに溶けていく。

生徒たちはセリオンとフォルネージュを見つめていた。

両者は互いに威圧を繰り返していた。

その均衡が破れた。

フォルネージュはしっぽでセリオンを攻撃した。

「そんな攻撃!」

セリオンはフォルネージュのしっぽを見切ってよけた。

フォルネージュの攻撃はからぶった。

フォルネージュが口に氷の魔力を集中させる。

フォルネージュは口から冷凍光線をはいた。

冷凍光線はセリオンの周囲を薙ぎ払った。

「そんなものは当たらない!」

セリオンは大きくジャンプして、冷凍光線を回避した。

セリオンは大げさによけたため、冷凍効果をくらわずにすんだ。

フォルネージュは続いて氷雪の息をはいた。

セリオンはすばやく横によけてかわす。

セリオンの反撃。

セリオンは大剣でフォルネージュを斬りつけた。

しかし、フォルネージュの体は硬く、傷をつけるだけで精いっぱいだった。

「くっ! 硬いな!」

フォルネージュの反撃。

フォルネージュは大きく口を開けてかみつこうとしてきた。

セリオンはタイミングを見計らって回避した。

フォルネージュは多くの氷の槍を生成した。

多連・氷結槍である。

回避は不可能。

迎撃できなければ氷の槍に貫かれて死ぬ。

セリオンは追いつめられた。

セリオンは氷の槍を見つめた。

セリオンの目は闘志であふれている。

セリオンは絶望していない。

氷の槍がいっせいにセリオンに向かって放たれた。

「効かないな、そんな攻撃は」

セリオンは蒼気をまとうと、蒼気の波で氷の槍をすべて粉砕した。

フォルネージュの時が止まった。

フォルネージュは再び氷雪の息をはいた。

セリオンは蒼気を前面に展開し、フォルネージュの空いている口を蒼気の刃で貫いた。

フォルネージュが絶叫を上げた。

フォルネージュが落ちた。

フォルネージュの体は青い粒子と化して消滅した。

「おお……見事だ……」

カウル先生が感嘆した。



帰り道、トビアスは無言だった。

トビアスは歩くことができるくらいに回復していた。

トビアスはザコを倒したくらいで氷の竜を倒せると傲慢にも思った。

トビアスに残ったのはセリオンへのさらなる嫉妬だった。

トビアスの考えではあいつにできて、自分にできないはずがないのだから。

今回のモンターノ山の訓練は生徒のためになる経験が多かった。

それ以外にも不測の事態が発生したことも。

氷の竜が山頂にいるという情報はなかった。

それを知っていたらモンターノ山に生徒を連れて行かなかっただろう。

ではなぜ氷の竜が現れたのか? 

その事実をカウル先生は消化できなかった。

何者かの陰謀……

それがカウル先生がたどり着いた答えだった。

モンターノ山行きとちょうど同じくして氷の竜が現れた。

生徒への危害を考えていたのは明らかだ。

だが、誰が?

教師のうち誰がやったのか? 

モンターノ山行きは教師と生徒しか知らなかったからだ。

カウル先生はベネデット学院長に報告書を出した。

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