第2節
~登場人物紹介~
道上 準貴:本作の主人公、高校一年生。夏は嫌い。暑いから。
高橋 遥 :主人公の幼馴染。元野球部マネージャーで現在諸事情で入院中。
小室 江美:主人公の隣の席のクラスメイト。夏は嫌い。日焼けするから。
喜田川 友哉:主人公の親友。夏は好き。川でバーベキューを計画中。
喜田川 智花:友哉の双子の妹。市内の女子校に通っている。
棚木 美月:準貴のクラスメイト。夏もバイト戦士。
池田 万理子:一年E組のクラス担任兼パソコン部顧問。教師
2
「なんかごめんな。部室の掃除手伝ってもらう形になっちゃって」
「全然大丈夫だよー。どうせうちも暇だったし。準貴の言う通り、家に帰っても引きこもりだから」
「まだ言ってる・・・。だから俺の偏見で予想を言ったのは悪かったって」
一階のゴミステーションまでの廊下を少し拗ねた様子の江美とのんびり歩きながらそんな話をしていた。先生に掃除を頼まれた後、教室で先生に呼ばれた俺を待っていた友哉と、二人で雑談でもしていた江美と美月を捕まえて手伝ってもらったってわけだ。さすがにあの広い教室を一人で掃除するってのは面倒なので三人を巻き込んだ形になった。申し訳ないと言えばそうだが、俺一人でやるってのも自分が可愛そうなのでそこはいいということにした。
「でもうちらが手伝わなかったら準貴一人だったんでしょ?それはさすがに可愛そうだよ」
「まぁそうなんだけどさ。今日はほんと助かったよ」
なんだかんだ言って江美は優しいなぁと思いながら彼女のその長いポニーテルをぼんやり眺める。さらっとした髪の毛を後ろで、今日は黒いバラのついた髪留め(後で友哉に聞いたらバレッタと言うらしい)でまとめていた。
「??なんか髪の毛についてる?」
「なんもついてないよ。ごめんごめん」
ぼーっとしている俺を見て、彼女はふふっと笑ってみせた。
「ところで江美ってさ」
「なに?」
こうして二人で歩いていると、やっぱり彼女の背の高さが際立つ。江美の背が高いのか、俺の背が低いのか、あるいは両方なのか今は考えたくないが、彼女自身も身長のことを気にしているのかもしれないということもあり、今まであまり深くは突っ込んでこなかった。
「江美ってやっぱり同級生と比べると背高いよな?」
「えっ、そうかな?」
「いや、俺もよく分かんないけど。多分高校一年生の女子の平均よりは上だと思うぞ」
高校一年生の平均身長を知らないから何とも言えないが、美月や現在入院している遥よりはだいぶ高いように感じる。クラスの女子の中でも恐らく一番かその次くらいには高いだろう。
「うーん。よく分かんないけどそうなのかな?」
「だって、こうやって並んで歩いてても俺とほとんど変わんねぇじゃん」
そう言ってガラス越しに写っている二人の姿を見る。・・・ほぼ横並びなのがとっても虚しい。
「・・・もしかして、うちに隣歩かれると迷惑?」
そう言って江美が少し淋しげな顔をする。
「いや、そういうわけじゃないんだけど。・・・そんな泣きそうな顔しないでって」
「えへへ」
まぁ嫌というより、正直情けない、と言えばいいのだろうか。遺伝だから仕方がないといえば仕方がないのだが、親戚からも「あんまり背が伸びないね」と言われた時は正直返す言葉がなかった。
「ちなみにさ。聞いちゃ悪いかなって思って聞いてなかったんだけど、江美って身長いくつ?」
「なんで遠慮するのさ。別にいいのに。えっとね・・・。確か百六十四センチかな?」
「・・・ほげっ」
危うく何かを吐き出しそうになる。単純に彼女があと1~2センチほど成長すれば追い抜かれることになる。
「うちもうちょっとで準貴に追いつけたりする?」
「やめてあげて」
その嬉々とした態度と輝かしい目つきから彼女に悪気がないのは十分伝わってくるが、その言葉は十分に俺の心に突き刺さっている。
「そんな気にしなくてもいいのに。って言っても気になるものはしょうがないっか。でも凖貴そんな小さく見えないよ?」
「そんなもんなのか?」
「ごめんね準貴。もしかして前うちが言ってたこと気にしてる?」
「前?」
「その、準貴のこと小柄だとか言ったこと・・・」
あぁ、確かにそんなこと前に言われたな、と思わず苦笑いがこぼれる。だいぶ前に小柄とか言われてガチで凹んだ時は本当にどうしようかと思ったが、最近は彼女に悪気がないのも分かり、少しずつながら仲も良くなってきているのでそんなに気にならなくはなっていた。
「まぁ確かにもっと背がデカくなればいいなとは思ってるけどさ。江美が前言ったことは関係ないよ。ただ隣歩いてそう思っただけ」
「準貴は背のこと気にし過ぎだよー。うちはむしろ自分より小っちゃい人の方が好きかもかなぁ」
「変なの」
「変とか言うなし」
もしかしたら江美はショタ好きなのか?とか勝手に考えてみる。男にも女児好きってのがあるくらいだし、女にもきっと男児好きってのがあるのだろう。年齢と背を同列に語って良いのかは分からないが、小柄な男子がモテる日ってのはいつか来ても良いと思う。
「・・・いまうちがショタ好きだとか考えてたでしょ」
「・・・なんで分かるんだよ」
「なんかそういう顔してた」
「どんな顔だよ」
「うち、別にそういうのじゃないから」
そう言って彼女は少し照れながらもしっかり否定してきた。自分が今どんな顔をしていたのかが全く想像できないけど、そういう顔をしていたらしい。
「ってか準貴ってそういう話分かる人だったもんね。なんか見た目がっぽくないから全然イメージ湧かないんだよなぁ」
「どういう意味だよ」
「だって普通、ショタとかロリとか使わないでしょ」
「あぁ、そういう意味ね。俺ってそんなオタクに見えない?」
「どっちかって言うと友哉くんの方がそっちっぽいよ」
「あぁ・・・。まぁ分かる」
そっちっぽい、というのはきっと友哉の見た目が少しオタクっぽいということを言っているのだろう。別にひょろっとしていて黒縁メガネだからと言うわけではないのだが、その雰囲気がということだ。
「ねぇ。準貴ってなんでオタクになったの?」
「突然だな。確か中学二年とかの頃かな。夜中起きてたまたまテレビ付けたらよく分かんないアニメがやっててさ。それを毎週欠かさずに見るようになってからかな」
「なるほどねー。中学の時期に女の子がいっぱい出てくる深夜アニメを欠かさず見てたってわけね」
「・・・まぁ。女の子がたくさん出てくるやつではあったけど」
なんか女の子しかいない無人島に主人公の男の子が謎の嵐に巻き込まれて辿り着いたとかいう話たっだ気がするけど当時のことはよく覚えていない。母親が亡くなり、部活をやめてから少しだけ夜更かしするようになったのがきっかけだ。最初はとりあえずこんな時間にアニメなんてやってるのか、という単なる興味程度だったのだが、いつの間にやらそれを毎週に見るようになり、そして録画するようになり、ネットで調べるようになり、残念ながら今に至っていた。
「準貴は深夜アニメ派なんだね」
「まぁそうなるのかな。そういう江美はどうなんだよ。ってか江美はどこまでそういうの知ってるかとかよく分かんないからなんとも言えないけど」
「うちはゲーム派かな。ポケ○ンとかドラ○エとか。あとはモ○ハンもやるし」
そのほかにも彼女の口からよく分かんないゲームノタイトルが何個か出てきたが、全てを把握することはできなかった。
「・・・それってただのゲーム好きじゃねぇのか?」
「まぁそうかも」
「で、なんでオタクになったんだ?」
「えー。なんでって・・・。自然に?」
「自然になるものなのか」
そのゲームの熱意とやらを少しだけでも勉強に移すことができれば・・・。と思い彼女の顔を見やる。まぁそうは言っても勉強に熱意を注げる人なんてそうそういないか。
「でもアニメとかも見るんだろ?こないだお見舞いに行ったとき、遥がなんか言ってた気がするんだけど」
「まぁ、そういうのも見ないこともないけど・・・。私はどっちかっていうとその」
そう言って彼女が少し言葉を濁す。
「???」
「その、準貴があんまり見なさそうなやつ」
「というと、あれか。男ばっかのやつか」
「まぁ間違ってないけど・・・。言い方あるっしょや」
そう言って江美が怒ったように頬をふくらませるが、全然怖くない。彼女が言ってるのはその、いわゆる視聴ターゲットが女性の、作中に男性が多く出てきて、女性キャラが出てきても一人とかのいわゆる少女マンガチックなやつだと思う。それこそ友哉の好きそうな自転車競技のやつだったり、ニートの六つ子だったりじゃないのか。俺自身、そこまで詳しくないから分からないので少し偏見があるかもしれない。だが同時にオタクと言ってもいろんなジャンルがあるんだなと改めて実感する。
「あ、予め言っておくけど、その、腐ってはいないからね!」
「誰もそこまで言ってないだろ・・・」
そう言って彼女がまた頬を膨らませる。
「しっかし、ただのゲーム好きがアニメも好きになるもんなのか?」
深夜アニメは好きでもゲームはそこまでしたことがなかった俺としては少し疑問だった。彼女の言っていたゲームも半分くらいはちんぷんかんぷんだったし、俺がやるものといったらあとはサッカーとか野球のゲームを少し友達の家で遊んだことがあるくらいだった。
「準貴はゲームとかしないの?」
「まぁポ○モンくらいなら少しやったことはあるけど」
「何時間くらい?」
そう言って江美が比較的、今までにないくらいの真面目な顔で訪ねてくる。
「何時間って・・・。遊んだゲームの時間なんて覚えてねぇよ。江美は何時間か覚えてるのか?」
「うん。一番やりこんだのだと500時間くらいかな?」
「・・・500?」
その数字にいまいちピンとこない俺。
「分じゃなくて?時間?」
「時間だよ。うちのことバカにしすぎじゃない?」
「いや、数学苦手でしょ?」
「時間と分の違いくらいわかります!」
「だとしても、そんなにやることねぇだろあのゲーム・・・」
そんな話をしながらゴミステーションに着いた俺たちは少しゴミが入っているゴミ箱をひっくり返し、部屋を出た。その帰り道は親切に江美が500時間のプレイ内容を事細かに説明してくれたが俺にはさっぱり分からなかった。色違いポ○モンを見つけたり、ゲームの中の全国図鑑を埋める、というところまでは俺にも分かったのだが、その後は、性格とか、厳選とか、個体値とか種族値とか。よく分からん用語が出てきたあたりで聞いているふりをすることに決めた。彼女はこれが勝負を大きく左右するとか言ってたけど、結局よく分からなかったので、説明がある程度終わったところで、気になるところだけ質問することにした。
「・・・勝負するって言ってもさ。江美、誰か友達と対戦したりするのか?」
「今のゲームはオンラインで世界中の人と対戦できるんだよ。だからそれで見知らぬ人と遊んでるかな?」
「へぇ。今のゲーム機ってすげぇんだな。じゃあ対戦してるのは顔も知らないよく分からん見知らぬ人ってことか。リアルの友達ではないんだな」
「ぃや・・・。その・・・。リアルではないけどさ・・・」
そう言ったきり、江美は部室に着くまで機嫌が悪いままだった。
・・・女の子って難しいわ。
その後、いろいろあって、部室に無言で入ってきた俺たちをよそ目に残っていた二人は教室の前方にあるホワイトボードの前でこちらも談笑をしていた。なぜかは分からないが綺麗に掃除したはずのホワイトボードが少しだけ汚れていた気がする。
「おかえり二人とも。・・・って、なんで両者無言なんだよ」
無言で入ってきた俺たち二人の様子を疑問に思ったのか、友哉が美月との談笑をやめてこちらに話しかけてきた。
「いや、まぁ色々あったんだよ」
「準貴が悪いもん」
「この短時間でなにがあったんだよ」
そう言って友哉が苦笑いを浮かべ、隣にいる美月も少し呆れ気味だった。
「まぁ別にうちはそんな怒ってないけどね」
「ならいいじゃない」
「でもなんか気に喰わない」
「なによめんどくさいわね・・・」
「わかった。じゃあ俺らがどっちが悪いか判断してやる」
そう意気揚々に言い放ったのは友哉だった。彼曰く、その話の内容を聞いて、友哉と美月がどっちが悪いか判断してくれるらしい。若干くだらないとは思ったが俺も暇だったので適当に話してみることにした。
「だって準貴、うちのこと引きこもりのゲーマーで、友達のいないただのバカだと思ってるんだもん」
「そうじゃねぇだろ」
「・・・合ってるじゃない」
俺の隣で、美月がさらに冷たいツッコミを入れる。容赦ねぇなと思いつつ、俺が少しおおざっぱではあるが廊下での出来事を簡潔に友哉と美月の二人に話した。
「・・・」
「・・・」
俺が話しているあいだ、二人ともところどころニヤつきながらも話を聞いてくれた。
「江美が悪いわ」
「準貴が悪い」
そう結論付けられたのは比較的すぐだった。言わずとも分かるかもしれないが、前者が美月で後者が友哉。
「判断する側の意見が割れてどーするんだよ・・・」
「いや、だってその通りじゃない」
「美月ちゃんひどい!」
「さすがにひどいよな。世の中言っていいことと悪いことがあるってもんだよ」
「友哉くんまで?!」
友哉は言っていることは間違いではないが、それを本人の前で言うのは失礼だ、というわけらしい。なんというかその、俺こんなひどいこと言ったっけ?
その後、二人に向かって怒っている江美を美月と友哉がいじっている間、俺は教室を出るため換気用に開きっぱなしになっていた全ての窓の施錠をした。そして再び三人の前に戻ってくると、傍の机の上にお金が置いてあることに気が付く。
「・・・おい、これ誰のお金だ?こんなところに置いておくなよ」
「あぁそれか」
そう言って江美いじりを中断させた友哉と美月がこちらを振り返る。
「それね、池田先生が今回のお掃除のお駄賃だって言って」
「いや、お駄賃って・・・。さすがに先生からお金貰うのはマズいだろ」
今回の掃除の謝礼、ということなのだろうけれどもさすがに気が引ける。というか二人はなんとも思わずこれを受け取ったのか。
「これで四人で昼飯でも食べろだってさ。まぁ結構デカい教室を居残りまでして四人で掃除したんだから別にいいんじゃねぇか?一応断ったんだけどさ。なんかいいからこれで飯食ってこいって言われて帰っちまった。これから会議とかで急いでるんだと」
「いや、でもよ・・・。本当にいいのか?」
「そう思うなら後でこっそりお礼でも言えばいいじゃない。他の生徒に聞かれないようにさ。先生も江美と準貴にはありがとうって言っておいてって」
そういうことらしい。気前がいいな先生と一瞬思ったが、本当に気前がいいなら千円札を人数分の四枚くれそうなものだが。なにか意図があるような気もするが、誰もそれに関しては気にしていないようなので、俺もそのままスルーすることにした。
「じゃあ分けましょうか。出っさなきゃ負けよー、じゃん」
「・・・ちょっと待てや」
しれっとジャンケンを始めようとする美月を俺が急いで制止する。
「どうしたの準貴」
「なんでジャンケンする必要があるんだよ」
「・・・チッ」
「美月ちゃん、怖いって」
俺が美月と友哉の顔を見て呆れていると、美月は江美を諭すように肩をポンポンと叩いていた。
「やっぱり準貴はあんたには甘いわよ。これからどんどん甘えなさい」
「えっ、そう?」
何を言われているかよく分かってない江美に対して、友哉がケラケラ笑っていた。
「お前らさぁ。1000円札3枚をじゃんけんってさすがに鬼畜すぎない?さっきのゴミ捨てとはわけが違うだろ」
「ごめんって。俺らだってそんなに鬼じゃないさ。ちゃんとじゃんけんの結果はどうであれ、三千円は四等分するつもりだったよ。・・・だたちょっとやってみたら、お前と江美ちゃんがどうなるかって話をしてただけなんだって」
「尚更たちわりぃよ・・・」
こいつらが親友なのか少し疑いたくなってきたが、まぁ友哉も美月もきっと良識はあるやつだと俺は思ってるしそこらへんは多分安心して大丈夫だろう・・・。多分。
「突然ですがあんたに問題です。3000円を4人で割ったら一人当たりいくらになるでしょう?」
「えっ、えっとね・・・。3000円を4人で分けるんだね」
「これ分かんないとあんたの取り分無いからね?」
「そんなぁ。だって・・・。あれっ、3÷4って割り切れないじゃん」
・・・多分。美月は良識あるやつだと俺は思っている。いや、思っていた。ってか江美も江美で分数とか小数の勉強をし直したほうがいいと思う。授業中の昼寝のプロフェッショナルなだけある。俺も一瞬戸惑ったが、これ普通に割り算できるじゃねぇか。
「ところでどうする?これからどっか食べにでも行く?」
「まぁ俺は全然いいけど」
「私も今日はバイト休みだからどこか行くなら全然いいけど」
「えぇ・・・。割れなくない?」
一人涙目になりながら指を折っている人がいるが、多分両手の10本じゃ足りないだろうな。そんな彼女を横目にしながら3人で会話を続ける。
「じゃあまたマ○クでも行く?」
「いや、やめといた方がいいんじゃね。ってか個人的に行きたくない」
「どうして?」
「いや、だって今日は午前授業でマックとかそこらへんのファーストフードの店に学生がたむろしてるだろ?それに午後から部活ある生徒たちは家に帰らないでそこで時間つぶしたりも考えてるだろうからさ。俺ならきっとそうするって感じだけど」
「・・・それもそうか」
そう、今日は終業式と掃除のみの午前授業。お昼を食べずに学生たちは帰宅することになる。そして運動部の人たちは三時から再び学校に来なければならないので、どこかで時間をつぶさなければならない。JRを使って通学している人からしてみればいい迷惑なもので、この空白の時間を恐らく友達とどこかでつぶすことを考えるだろう。そうなると駅前のマ○クだとか、そこらへんのファーストフードの店など北高周辺は軒並み満席だろう。俺としては出来る限り人ごみは避けたい。ゆっくりできないし、なにより先輩方が多いというのと、運動部の人たちのノリがあまり好きではなかった。よくあの人たちはあんなわけのわからないテンションで何時間も盛り上がれるものだと野球部の頃から今に至るまでずっと思っている。
「現金四等分して好きなもの食べるって感じでいいんじゃね?」
「それも味気ないなぁ・・・。せっかくの夏休みなんだから」
「私は別にそれでもいいけど?」
俺的には人ごみのなかご飯を食べるのは極力避けたい。ゆっくりできないし、学生らしくないと言われればそうかもしれないけどこればっかりは譲れなかった。あと自炊が一番安上がりだというのも理由の一つ。
「じゃあ俺うちでタコパしよーぜ」
「・・・タコパ?なんだそれ」
初めて聞く単語に少し耳を疑う。
「たこ焼きパーティだよ。俺うちにでっかいたこ焼きプレートあるから、それを使って美月ちゃんにたこ焼き焼いてもらおうぜ。3000円はその材料費ってことでどうよ」
「要するに場所はあんたうちってことね」
「そゆこと」
友哉がノリノリでそんなことを言っていた。美月がたこ焼きを焼くってのがよく分からないがそれよりもっと気になる点が一つ。
「それじゃあ四人でお前家に押しかける形になるけどいいのか?」
「大丈夫大丈夫。母親は居間にいるかもしれないけど、どんどん友達連れてきなさいとかいう人だから。あとは別の部屋に妹がいるかもしんねぇけど別にいいだろ?」
「俺は大丈夫だけどさ・・・」
おうちの人に気を遣わせてしまわないだろうか。しかしそんな心配をよそに、友哉と美月が自分のバッグを手に持ち、教室を出る準備をする。友哉はしっかり机にあったお金をポケットの中に仕舞い込んだ。
「よっしゃ、それじゃあ出発だな」
「そうね。友哉の家ってのがちょっと憂鬱だけど、行きましょうか」
「友哉くんの家だね!レッツゴー!」
いつの間にか機嫌も元通りになった江美も行く気満々のようで、勢いよく自分のカバンを背負った。微妙に腑に落ちないところはあったが、とりあえず俺だけ帰るわけにもいかないので、3人についていくことにした。
その後、溶けるような暑さの中、スーパーでたこ焼きの材料を買った俺たちは、学校からほど近い友哉の家へと向かうのであった。




