第2話 終章②
~登場人物紹介~
高橋 遥 :主人公の幼馴染。元野球部マネージャーで現在諸事情で入院中。
「はる、学校戻るのね」
準貴が帰った後の病室。取り残されたような形になった私とお母さん。しばらく二人とも沈黙していたけど、ふとお母さんが口を開いた。
「うん」
「・・・準貴くんとそういう話したの?」
「そう」
「・・・そう。仲良いわね、二人とも」
「・・・あのね、お母さん」
「なに?」
「・・・」
準貴とした約束。このまま私のつく嘘が真実になる。そう考えると少しだけ怖くなった。そして、残念ながら今本当のことを話す勇気が私にはちょっとだけ足りなかった。
「・・・いいわよ。話しづらかったらまた今度でいいわ。今は学校に戻るって聞けただけで安心だから。・・・準貴くんのためにも早く治さないとね」
「・・・準貴は関係ないって」
「ふふっ、そうね。ところで一つ聞いていい?」
「なに?」
母が急に真剣な面持ちで、しかし少し小さな声で聞いてきた。
「・・・二人とも、付き合ってるの?」
「・・・なによ、それ。付き合ってないわよ」
「準貴くん、私は良いと思うけどなぁ」
いいと思うって、一体何を根拠に言ってるんだろう。私だって何日もずっとお見舞いに来てくれた準貴には感謝もしてるし、色々相談に乗ってはくれて、仕舞には病室ででラーメンまで作って。確かに優しいし、ちょっと嬉しかったけど、色々みっともない自分も見られたわけだし、なんかその、世間一般でいう「付き合う」ってのとはちょっとだけ違う気がする。
「お父さんもきっと賛成してくれるわよ」
「だから、そういうのじゃないって」
とりあえず否定しておかないと。そう思いとりあえずそう言っておいた。その後は母と取り留めのない世間話に花が咲いた。私の意識がなかったときの話からお兄ちゃんの話、あとは私が短冊に書いたことの話なんかもした。お母さん、私と準貴の書いたお願いごとをちゃんとチェックしていたみたい。「あんた、貧乳になりたいの?」って聞かれて少しびっくりした。そのほかにも色々話はしたけれど、私の今後については何も触れてこなかった。だからかな、おしゃべりが少し楽しいって思えた気がする。
その後、私たちのお喋りが一段落する頃には夜の九時を過ぎていた。お母さんも「また明日ね」と言って家に帰ってしまったので、一人やることなくぼーっと窓から見える星空を眺めていた。
私が目を覚まして、過ごしてきたこの一ヵ月近く。最初は嫌なことの連続だった。変な機械での検査が終わった後は尋問の日々。知らない人がたくさん来て、勝手に喋っては勝手に帰っていった。学校の先生もたくさん来たけど結局全部無視した。私は私、あんたたちには関係ない。どうせ私のことを自分勝手の構ってちゃんだと思ってる大人連中ばっかりのような気がして仕方がなかった。お前らはどうせ私の心配なんかしてない。まぁそう思われてもやむを得ないことをした自覚はあった。でも大人たちだって、こんな手のかかるやつ、めんどくさいって思ってたんだろう。大人ってのはすぐに顔に出すから嫌いだ。そのくせに自分は善人ですよって近寄ってくるその態度、嫌いになるには十分だった。
でもあいつだけはちょっと違った。私の泣き顔見てブサイクだの、みっともないだの散々言ってくるくせに、顔を出しては私になんか食わせて帰っていく、そんなやつ。私のことを女子として見ていなさそうなのはちょっと腹立たしいけど、この遠慮し合わない関係は嫌いじゃない、むしろちょっとだけ楽しいとすら思えた。この真っ白な何もない空間で過ごす日々も、悪くないかもしれない。そう思ってると、スマホからあいつからのメッセージを知らせる通知が来る。
『仲直りしたかー?』
誰と、とは書いていない。多分私の親のことを言ってるのは分かっていた。なんて返そうか悩んでいたけれど、その後に送られてきたスタンプがなんか私をバカにしてるように見えたので返信をかえすのはやめた。なによこのスタンプ。ニヤニヤしながらこちらを見ているキャラクターとそれを送ってきた準貴を思い浮かべると少しイラッとした。
『うるさい、バカ』
そう送信し、スマホを切った。その後何件か何かが来ていたが全部無視して布団の中に潜った。昨日の昼に私からの連絡を無視したのはちょっとだけ不安、じゃなかった。不快だったからそのお返しで今度はこっちが無視してやる。そう思って少し時間は早いけど寝ることにした。
「・・・色々あったし、さすがに今日は疲れたわ」
今日のことを一つずつ振り返りながら、彼女の意識は夢の中へと消えていった。
第三巻へ続く。




