第4節
~登場人物紹介~
道上 準貴:本作の主人公、高校一年生。オタクで小柄。料理上手。
高橋 遥 :主人公の幼馴染。元野球部マネージャーで現在諸事情で入院中。
石川 彩音:同じ高校の一つ上の先輩。近所のスーパーでバイトをしている。
道上 将貴:主人公の父親。料理は下手だが仕事ではそこそこ偉い人。
道上 智子:主人公の母親。主人公が中学二年のときに交通事故で他界している。
※この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。
その後病院を出た俺は、特に寄り道もせず五稜郭駅へ向かい二十時台の上磯行の列車に乗り込んだ。土曜日ということもあり制服姿の学生はほとんどおらず、車内は遊び帰りの私服の高校生か、あるいは部活動帰りの高校生たちだった。五稜郭駅の次の駅にあたる七重浜駅は、大型ショッピングセンターのほか、カラオケ店や大きな室内遊戯場(ラウ○ドワンとかいうやつ)の近くの駅ということもあり、そこでの乗り降りはそこそこ多かった。しかし、七重浜以外のそのほかの駅はやはり閑散としていた。真っ暗闇の外を眺めながら終点上磯駅に着いた自分は、駅に停めてあった自転車に乗り、夏の生ぬるい風を肌で感じながら自転車を漕いだ。
家に着いたら既に親父は帰ってきており、いつも通り家でテレビを見ながら今日は居間のテーブルに仕事用のノートPCやら、資料やらを広げていた。
「ただいま」
「おう、おかえり。随分遅かったな。友達と遊びに行ってたのか?」
「まぁそんなとこ。それより作り置きも作ってなくてすまん。軽くでいいなら今から用意するけど食べる?」
「本当に軽くでいいよ。食ってきたから。・・・そうだな、お茶漬けでも作ってくれ」
それくらい自分で作れよ・・・、とも思ったが親父にはそれすら作れないかもしれないという懸念もあり、結局自分が弁当を作る際に余った冷や飯にお茶漬けのふりかけを乗せ、やかんにかけたお湯を沸騰するのを待つ。
「七夕のお菓子はどうなったか知ってるか?」
俺が行くときに設置しておいたお菓子の山の段ボール箱がさきほど見たときは消えていたので多分親父がどうかしたのだろう。
「あぁ、それなら俺が帰ってきたときには中身はもうほとんど残ってなかったよ。残りは全部食ってダンボールは物置に置いといたよ」
「そっか、サンキュ・・・」
俺の楽しみにしてた駄菓子ェ・・・。俺が毎年七月七日、地味に楽しみにしていた駄菓子たち。今年は全部親父の胃袋へと吸収されてしまったようだ。とりあえず今年初めての試みだったがとりあえずは上手くいったようだ。来年からは俺の分もちょっと残しておかないとな。しばらくするとやかんのお湯が沸騰したので、それをご飯にかけ、お茶漬けの完成だ。親父、これくらい自分で作れるようになろうぜ、とも思ったが、きっと親父も本気を出せば料理の一つや二つできるのであろう。ただ今はその本気を出していないだけだ。やかんに満水入れて火をかける親父の本気ってどんなものなのだろうか。家とか全焼しなきゃいいけど。
「ところで、外食ってなに食ってきたんだ?」
「職場の近くの店のラーメンだよ。まぁ腹一杯にはならないにしろ、久しぶりに旨かったなぁ。真夏に熱々のラーメンってのも悪くない」
夏にラーメンか、暑苦しいな・・・。そこは冷やし中華とかもあるだろうしそっちにしておけよ。そう思ったと同時に親父の発言はちょっとした閃きにもなった。
「・・・ラーメンか。いいな」
「なんだ、お前も食いたいのか?」
「・・・よっしゃ、今から麺とスープ買ってくるわ」
思い立ったら即行動が吉だ。これで明日の遥へのお弁当は決まりだ・・・。きっと遥もびっくりするだろうな。まぁお米じゃないけど誰も麺類はダメなんて言ってないからきっと大丈夫だ。
「今から行くのか?なんなら今から車でもいいぞ」
親父も突然のことに驚きはしてるものの、いつもの俺なので特に止めようとはしなかった。
「大丈夫大丈夫!それより親父、今日じゃなくて明日函館病院まで車で送ってくれるか?」
「突然だなおい・・・。大丈夫だけど時間的に乗せていくだけって感じになるけどそれでもいいか?遥ちゃんのお見舞いだろ?」
「そうそう。行だけでいいからさ。それじゃ、行ってくる」
そうして俺は少しドタバタしながらも再び出掛ける準備をする。
「暗いからな、車気をつけろよ」
そう言って俺は急ぎ足で家を出た。確かスーパーの営業時間は大丈夫だったはずなんだけど。まさか自分もこんな夜に、お店に行くことになるとは思ってもいなかった。しかもこれで昼間と合わせて本日三回目だ。
「あいつ、そんなラーメン食いたかったのか・・・?。ま、無性にラーメン食いたくなる気持ちは少しわかるけどさ」
家で親父がそんな風に思ってるとは思いもせず、ひたすら夜の道を自転車で走った。明日のお見舞いの構想を頭の中で考える俺の頭上には、七月七日の満天の星々が光り輝いていた。




