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1484 青春白書  作者: 吉倉 光希
 第4章 「子の心、親知らず」
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第5節

~登場人物紹介~


道上 準貴:本作の主人公、北高商業科一年生。りんごの皮むきが得意。

高橋 遥 :主人公の幼馴染。元野球部マネージャーで現在諸事情で入院中。

石川 彩音:普通科二年生の先輩。スタイル・性格が良い故、彼氏もいる。


※この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。

 両手に大きな荷物(中身はお菓子だが)を抱えながら五稜郭駅に着いた頃には既に十九時を過ぎていた。十九時台は二本電車があり、先方の早い時間の電車は既に出てしまったので、乗るのは半過ぎの電車だ。と言ってもあと十分もすれば来るのだからそんなに待たなくても大丈夫そうだ。病院を出てから雨は降っているものの、しとしとと静かなものなので、そこまでカバンの中身や紙袋の中身の心配はしなくても大丈夫そうだ。一応病院で遥から大きめのビニール傘を借りてきたのが幸いだった。

電車までの時間、中のベンチは人でいっぱいなので、駅の玄関フード(風除室ふうじょしつ)のようなところでスマホをいじっていると、外から雨に濡れた見慣れた女子高生が入ってくる。


 「・・・後輩君じゃん。こんな遅い時間に珍しいね」


 「・・・先輩こそ、どうしたんですかその恰好」


言わずとも知れた通り雨の濡れ透けイベントである。そしてその女子高生というのはもちろん石川先輩だ。女子の先輩で知り合いなんて彼女くらいだからな。彼女は俺たちの一つ上の先輩にあたり、今日もきっと彼氏さんとデートでもしてきた帰りなんだろう。なんで傘差さないでここまで来たの?って激しく突っ込みたくなるのだが、・・・これはこれでアリなのかもしれない。北高の白い夏服から透ける透明な肌、そしてやっぱり目を惹く胸元とそれを支える地味すぎず、派手すぎない下着。(ちなみに水色)ホントに透けるんだな、と少しばかり感心してしまうと同時に張り付いた制服がやっぱり官能的で、目を離したくてもそこに釘づけになってしまうそんな先輩の姿が目の前にあった。


 「傘持ってなくて、このくらいの雨ならいけるかなー、って思ったんだけど結構濡れちゃった」


 「・・・バカなんですか、まぁ確かに雨足は強くないですけど」


俺は彼女への視線をごまかすように外に目をやり、窓の隙間から雨雲を見上げた。


 「後輩くん、タオルとか持ってないよね?」


 「・・・残念ながら持ってるんですよ」


そう言って新品同様のフェイスタオルをカバンから取り出し、先輩に差し出す。


 「後輩くん超準備いいね。ありがたく使わせてもらうね。・・・パイナップルの匂いがする」


 「人のタオルの匂いを嗅がないでくださいよ」


バッグのなかにさっき買ったパイナップルと一緒に入れてたせいだろうか。パイナップルの匂いがするタオルを想像するとちょっと面白い。ちゃんとジッパー付きの袋に入れていたんだけどな。それにしても貸したタオルの匂いを嗅がれるというのは貸す側としては少し複雑だ。


 「わざと嗅いだわけじゃないよ?! 髪拭いたらたまたま匂いがしただけで・・・」


 「そんな必死にならんでも、先輩が変態なのは分かってますから」


そう言って少し先輩をからかう。


 「変態じゃないもん。ってか前とか後ろとかも拭いていい?」


 「俺に了解とってどーするんですか。どうぞご自由に」


そう言って彼女は遠慮なく首、胸元、おなか、背中とびしょ濡れになった全身をくまなく拭いていた。おなかとかチラチラ見えてるんだけどそんなの彼女はお構いなしだ。


 「・・・セーラー服の下っていきなり下着なんですか?」


 「そーだよ。人によるけど、ってかあんまりじろじろ見ちゃだめだよー?」


 「いや、これを見るなと言う方が無理な話でしょ・・・」


そう言って自分の行為を無理矢理正当化する。しかしこの場合はやっぱり俺が悪いんですよね、そうですよね。見えるけど見ちゃダメなんですよね。でも許してください、男の性なんです。分かってても目を逸らせないんですよ。ほんと許してください。


 「後輩くんにはちょっと刺激が強すぎるかなー。ほれほれ」


しかし俺の言い訳と視線に先輩は怒ることなく、むしろ悪戯っぽい目をしながら最初から取っているセーラー服の胸当ての部分に指をかけ、ひらひらと俺の前に見せつけてきた。なんだこのビッチ、引っ叩いてやろうか。それは俺の美的感覚的に違うんだよな、と黙りながら彼女を見ていると、さらにエスカレートし、今度は太ももをタオルで拭きながら短いスカートをひらひらとさせる。


 「・・・後輩くんもウブだねぇ。ほれほれ」


もう色々と見えそう、というかいまちょっと水色のなにかがスカートから見えたような気がする。なんでこの先輩はこんなにも能天気なのだろうか。なんか今日いいことでもあったのだろうか。


 「・・・ごめんなさい。ちょっとそれ以上やると先輩のこと好きになっちゃいそうなんでやめてもらっていいですか」


 「・・・それは私の求めてる反応と違うなぁ」


そう言いながらも少し面白おかしそうに笑っていた。最後に髪の毛の水分をとってとりあえずはおしまいのようだ。


 「・・・タオルいいですよ。はい」


そう言って俺が手を伸ばすと、先輩は驚いたようにタオルを抱くように身を引く。


 「えっ、後輩くんこのタオル持って帰るの?!私の汗と雨が染みついたこのタオルを持って帰るっていうんだね?!」


 「めんどくせぇ・・・」


俺も少し迂闊だったがこの反応は心底めんどくさい。俺的には先輩のカバンに入れたらびしょびしょで教科書類とかダメにならないようにビニール袋持ってる俺が持ちますよっていう意味だったのだけれど。理論的には俺は正しいことしているはずなのに、一般倫理的には確かに変態かもしれないな、自分。


 「じゃあ先輩のバッグのなか入れます?教科書ふにゃふにゃになりますけど?」


 「・・・そういうことなら早く言ってよ」


 「考えれば分かるでしょ・・・」


そう言ってまた先輩は笑いながら俺にその汗と雨とやらが染みついたタオルをこっちに手渡してくる。俺はとりあえず変態だと思われたくないのですぐにビニールに入れて口を縛って空気を抜いた後、カバンに仕舞う。


 「先輩えらいご機嫌ですね」


 「へっへー♪わかる?でもこれ後で恥ずかしくなるやつだね。さっきなに後輩くんの前でやらかしたんだろうって」


 「ならやんなきゃいいのに・・・」


多分、本当になにかいいことがあったのだろう。俺が聞かずとも後でどうせ彼女自身から惚気だすだろう。そう思いその時は無視を決めた。その後、上磯行の電車の改札が始まったので、俺たちは駅員さんに切符を切ってもらい、改札をくぐり階段をのぼっていく。


 「後輩くん、この時間に帰りだなんて珍しいね。寄り道でもしてたの?」


俺の後ろを歩く彼女がそう聞いてきた。


 「まぁ寄り道といえば寄り道ですね・・・。遥のお見舞いに行ってました」


そういえば先輩には遥のことを全然喋ってないな。あの先輩の家に(不用意ながら)泊まった日以来、彼女に会うのは初めてで、実に二週間ぶりくらいか。まぁ学年も違えば科も違うのだから仕方がないのだけれど。そう思いながら先輩の反応を伺った。


 「へぇ、そっか。遥ちゃんどんな感じだった?」


どんな感じだった?と聞かれても回答に困るな・・・。俺なりに自分の頭の中であの彼女の状態を表現する言葉を探してみる。


 「そうですね・・・。とりあえず元気ではなかったですね。今の先輩とは真逆な感じです。あとケガも結構ヤバめな具合で今年中に退院できるかどうかって感じです」


 「そっかー。やっぱりそうだよね。ってなると卒業は一年先になるのかなぁ。寂しいね、せっかく一緒に入学したのに」


 「まぁそもそも北高に戻ってくるかも怪しいですけど・・・」


そう、彼女が北高に戻ってくる保障なんてどこにもないのだ。他の学校に転校する可能性だってあるし、なんならどっかの高校の定時制に移る可能性だってある。彼女がどういう考えなのかはまだ聞いていないが、あの様子、あの態度だと北高に戻りづらそうにしているのは何となくだが伝わってくる。


 「そっか。じゃあそこは後輩くんの説得次第だね。ファイトだよ、応援してるから」


なんだそれ、とは思ったが遥にこのことについてちょっと聞いてみるくらいはしてみてもいいだろうか。五番ホームに着いた俺たちはちょうど入ってきた二両編成の電車に乗り込む。この時間はスーツ姿のサラリーマンや一般市民の姿もちらほらとは見られるが、あとは基本学生が大方を占めている。


 「ってか後輩くん、そのでっかい紙袋はなに?」


そう言って空いてる座席に座った後、彼女が俺の肩掛けの紙袋を指差す。


 「あぁこれですか?七夕のお菓子ですよ」


 「そっか、もう明日なんだ」


 「先輩のおうちはもう用意しました?」


 「うーん多分ね。それにもし無いとしたらバイト先で明日の夕方までに適当に買い揃えるよ」


先輩は駅近くの小さなスーパーでバイトをしているのでそこで買うってことなのだろう。


 「先輩働いてる姿全然見たことないですけど、本当に働いてるんですか?」


 「働いてるよ!ってかなんなら今日これから閉店までシフト入ってるもん」


 「・・・こんな遅くからバイトですか」


 「さっき連絡来てねー、ラストに入ってくれないかって。きっとヘルプかなんかだよ。もう、せっかく京ちゃんと一緒にいたのに」


 「・・・やっぱりデート帰りだったんですね。どうりで機嫌良いなって思ってました」


あと制服の胸当てないとか、まつげがめっちゃ長いとかでなんとなく察しはついていた。化粧は雨のせいであんまりキレイに整ってはいないけど。


 「実はそうでもないんだけどね。だって普通に考えてバイト入らなきゃもっと京ちゃんと遊んでたんだから、むしろテンションガタ落ちだよ」


 「その割には結構嬉しそうですけど。・・・その幸せいっぱいオーラは見ててちょっと腹立つくらいですよ。俺、リア充大っ嫌いなんで」


 「後輩くん、ひどい」


だけど俺の蔑みさえ今の彼女には幸せに感じられるようだ。俺の向かいでずっとニヤニヤしながらスマホをいじっている。


 「・・・エヘヘ」


 「(うわぁ・・・)」


一人でスマホ見て笑ってるよこの人。携帯を覗き込む彼女の顔は、頬の筋肉が緩みっぱなしだ。っつか惚気るなら一人でやってくれよ・・・。だがここで気にしては自分の負けだ。彼女が気になるのは山々だが、俺も彼女を気にしないようにスマホに目をやる。親父からは特になにも連絡が来てないので朝言っていた通り晩御飯は不要なのだろう。とりあえず今日の晩御飯をどうにかしないとな。お菓子の紙袋があるせいでどこに行くのも少し億劫だ。適当に家にある残り物でどうにかしよう。


 「エヘヘ・・・」


 「先輩うるさいですよ。なんなんですか一体、惚気るなら静かにしてくださいよ」


 「いや、ごめんごめん。つい幸せ過ぎて」


 「・・・聞いてほしいんですか?」


 「もう、後輩くんこそ聞きたいくせにぃ」


そう言って向かいの先輩が俺の足をバシバシ叩いてくる。


 「めんどくさいですね。なにいいことあったんですか」


 「これ見てよこれー」


と言って先輩が見せてきたのがピンク色の二段弁当の写真だった。上の段はおかずで、ハンバーグやしゅうまい、プチトマトやミートボールなど。下の段には白いご飯と海苔で文字が型取られており「大スキ♡」なんて書かれている。


 「で、これがなんですか?」


 「京ちゃんのツイッターだよー♪」


もう、ほんと、帰りたい。ハイテンションで話してくる先輩に呼吸を合わせるのはとても骨が折れるってもんだ。要するに自分(石川先輩)の作ったお弁当をSNSにアップしている先輩(先輩の彼氏さん)を見て幸せをかみしめてる構図だった。


 『彩音の作ってくれた愛妻弁当。マジ感謝』


そして驚くのはイイネ!の数、25。どんだけ友達いるんだよ。ってかこのイイネ全部石川先輩じゃないのかとすら思えてくる。俺なら間違いなく「Bad」とかつけてそうだけど、ツイッターにBadの機能がないのがとても残念だ。


 「良かったですね」


 「ドヤぁ。後輩くんも羨ましいでしょ」


と彼女がドヤ顔で胸を張る。まぁ確かにここまで一生懸命お弁当を作る先輩の一生懸命さには素直に尊敬だ。ご飯を作ることの大変さは身に染みて分かっているつもりだからこそ、先輩のうれしい気持ちもわかる気がする。お弁当の彩り的にもうちょっと野菜食わせてくれよ、とも思ったのだがこの嬉々としている先輩を目の前にして、水を差すような真似は俺にはできなかった。


 「羨ましいですね。先輩の彼氏さんは世界一幸せ者ですよ」


 「でしょ、でしょ?! もうやだ後輩くん褒めるの上手なんだからぁ」


このアマ、俺がなんにも言わなければ少し調子に乗りやがって。でもこれだとビッチなのか、一途なのかちょっとわからなくなってくる。さっきビッチって言ったばかりなんだけど、なんかこっちのほうが間違いなような気がしてきた。


 「で、それを見てずっとニヤニヤしてたと」


 「いや、だって嬉しいじゃん。誰かに作ったものを喜んで食べてもらえるってさ」


 「まぁ言わんとしてることは分かりますけど。そんなスマホ画面見ていつまでもニヤニヤすることでもないと思いますけどね」


 「後輩くんも誰かにお弁当作れば分かるよ」


明日、遥に弁当を作ってそれをわざわざ届けに行く予定の俺に言われてもな。


 「・・・俺、明日遥に弁当作ってやんなきゃいけないんですけど、なんかオススメとかありますかね」


 「入院中の彼女にお弁当かー。仲良いねぇ二人とも」


 「真面目に相談してるんですけど!」


 「そうだねぇ。私、今遥ちゃんがどんな感じなのかよく分かんないけどとりあえず海苔切って『大スキ』って白ごはんに乗せておけばきっと感激されること間違いなしだよ」


そんなことしたら食べるものも食べてもらえなさそうだけど。ってか彼女に相談した俺がバカだったのか。やっぱり自分で考えないとダメか。そう思い先ほどズボンのポケットに無造作にしまったメモを取り出す。海苔文字のくだりはこの際一切無視だ。


 「・・・この『あとなんか』ってのをなににしようか迷ってて」


たんすい化物のところには適当にスパゲッティを弁当用に入れてやろうとは思っているのだが、この特に指定のない「あとなんか」ってなにを入れればいいのか未だに迷っていた。


 「そこはいっつも後輩くんが入れてるおかずでいいんじゃないの?ってか多分だけど、遥ちゃんはそのお弁当に美味しさとか求めてないと思うけどね」


 「・・・じゃあなにを求めてるんですか。作る側としてもマズいより美味しい方がいいってのは当然じゃないです?」


 「そりゃそうだけどさ。・・・ニブチンだねぇ後輩くん。ほんと、遥ちゃんには同情するよ。話したことないけどさ」


ニブチンじゃなくて論理的思考力に長けていると言ってくれ。感情論的な話は俺は苦手だ。多分、先輩が言ってるのはそういう類の話なのだろう。


 「じゃあ要するになんでもいいってことですか?」


 「そう、なんでもいいの」


その「なんでもいい」ってのが一番困るんだけどな。本当になんでもいいのか問い詰めたくなるが先輩にそれを聞いてもどうしよもないだろう。なんでもいいと言われるくらいなら無理難題なおかずを言われた方がまだマシだ。作り手としては具体的ななにかが浮かび上がってこないものほど難しいものはないと思う。


 「じゃああり合わせで作った適当なお惣菜とかでいいんです?めちゃくちゃ地味になりそうですけど」


 「・・・むしろそこに手作りのものを入れようとしている後輩くんがちょっと尊敬だよ。だから本当になんでもいいんだって。ってか多分だけど、遥ちゃん的にはお弁当なんて無くたっていいんだよ。後輩くんが呑気に手ぶらでお見舞い行っても遥ちゃん的には嬉しいんだと思うけどね」


 「・・・何言ってるんですか。お弁当なかったらなんで俺が病院に行ったのか分からないじゃないですか」


 「・・・そこまで答えは出てるのになんで分からないかなぁ。ほんと、遥ちゃんも幼馴染がこんなので大変そう」


 「こんなの言われた・・・」


なんだかすごいバカにされている感じは伝わった。要するに手ぶらで行けと。手ぶらで行ったら遥に「なんで作ってこないの?バカなの?」とか言われて追い返される構図しか想像しかできない俺のイマジネーション力が問題なのか。先輩の言ってることは何週考えても結局同じ結論に辿り着くので、「手ぶらでお見舞い」は却下、ということにした。もういいよニブチンで。先輩の言ってることは本当にわけわかんないし。


 「後輩くんがもし彼女できてさ、その人が朝早く起きて一生懸命作ったお弁当があって、『作ってきたんだけど食べてくれる?』って言われたら味がある程度アレだって食べるでしょ?『俺に彼女なんてできるわけないし』ってのは今回なしね」


 「まぁ度合いにもよりますけどね。要するにその人が頑張って作ったって事実が大切ってことですか」


 「まぁ・・・、今回の遥ちゃんについてなら半分正解って感じじゃない。予想だけど」


 「・・・ますますわけわかんなくなってきた」


なんで満点じゃねぇんだよ。もう一生女子とか理解できる気がしない。


 「ま、それは後輩くんが分からなくても大丈夫なことだから。頑張ってね、明日」


そう言って先輩は自分の胸の前で拳を力強く握った。結局なにを言いたいのかは分からずじまいだった。


 上磯駅に着いた後、車掌さんに切符を渡し、先輩と二人で改札を出る。外はそれほど強くはない、霧雨のような雨が降っていた。


 「ねー後輩くん。バイト先まであいあい傘してくれない?このままだとまた濡れちゃうから」


 「・・・折りたたみあるんでこれ貸しますから」


そう言って俺はカバンの中から青い折り畳み傘を取り出す。ってかこの人彼氏がいるのにちょっと言動が不注意すぎない?やっぱりビッチなのか。どんな男にもこういった態度をとっているのであれば少し心配だ。


 「後輩くんのバッグって何でも入ってるんだね。四次元ポケットかな?」


 「タオルと傘入ってたくらいで大袈裟ですよ」


そう言って駅のすぐ近くのスーパーへと先輩を送った後、俺は買い物しようか迷った挙句、持ち物も多いし天気もあまり良くないので今日はそのまま帰ることにした。


 「じゃあね、後輩くん。この傘いつか返すから!」


 「・・・先輩こそ、帰り道気を付けて」


 「帰りは車だから大丈夫!」


俺の心配を背に、先輩は大きく手を振って小さな商店の裏口へと消えていった。その後大きな紙袋が濡れないように遥から借りたビニール傘を差しながらゆっくり帰途へとついた。家に着く頃には雨はだいぶ弱まり、空には少しではあるが星たちも確認することができた。


 「七夕かぁ。明日はお菓子貰いにくるガキのためにも、織姫おりひめと彦星ひこぼしのためにも、ついでに俺のためにも晴れてくれないと困るからな。空気読めよ、お前」


そう俺はこの広い夜空に物申した。

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