第3節
~登場人物紹介~
道上 準貴:本作の主人公、現在高校一年生。家事全般が得意。
高橋 遥 :主人公の幼馴染。元野球部マネージャーで現在諸事情で入院中。
小室 江美:主人公の隣の席のクラスメイト。パソコン部。ポニーテール。
喜田川 友哉:主人公の親友。黒縁メガネ。妹がいる。
棚木 美月:準貴のクラスメイト。江美の親友。
その日の放課後、友哉、江美、美月と俺の四人は予定通り、遥のお見舞いに行くため、函館病院へと向かっていた。函館病院は五稜郭駅の近くではあるのだが、少しばかり辺鄙へんぴな所にあると言える。何故かというと、それは病院が五稜郭駅から線路を跨いで向こう側にあるからだ。線路の向こうなら踏切を渡ればいいじゃないか、とも思うのだが、そううまくはいかない。前にも話したとおり五稜郭駅というのは比較的大きな駅だ。線路が三本、四本どころではない。貨物列車や待避線などを含めると約10本ほどになるだろう。近くに貨物駅(操車場ともいう)があるということも考慮され、踏切を作るわけにいかず。そこで昔の人が考え出した答え、それが大型の陸橋の建設だ。線路十本ほどを大跨ぎできる巨大なもので、真下には線路と送電線が複雑に張り巡らされている。だから函館病院が辺鄙な場所にあるというよりは、JR駅からの交通アクセスが少しばかり不便という方が正しいだろう。現に自家用車やバスで来るのであればそこまで苦労せずに済む。病院にはバス乗り場も結構大きなのが備わっているし、車を持っていないお年寄りなんかは公共バスを利用するのだろう。
そして、陸橋なのでもちろん、上り下りするための階段がある。俺と江美と美月は歩きなのでそれを渡るのにいちいち苦労することはないのだけれど、自転車のタイヤを浮かせ、それと二人三脚で階段を上る隣の友哉はちょっとばかし辛そうだ。
「・・・これ、結構キツいな」
「その自転車って結構重いのか?」
俺は友哉のその重そうに持っている赤く光り輝いている自転車を指差してそう尋ねる。
「いや、そんなことないぞ」
と言って友哉はその自転車を右手で軽々と持ち上げてみせる。
「じゃあ別にいいじゃねぇか。頑張れよ」
「自転車自体は軽いんだけど、それを持って階段を上るってなると話は別なんだよ。お前だって二階までテレビかなんかを持って上がるのは辛いだろ」
まぁ確かに。言い得て妙、と言ったところだ。それにこの陸橋、あまり幅が広いもんじゃないから自転車を持ってだと少し窮屈そうだ。それに送電線の上を通るくらいだ、それなりに高さもある。
「へぇ、俺はてっきりそういったゴツい自転車ってのはそれなりに重量があるのかと思ってたよ」
「こういった競技用の自転車ってのは軽さが命なんだよ。俺のはだいたい八キロちょいくらいだ」
と俺があまり関心がないことを熱心に語りだす友哉。その後もペダルがどうとか、タイヤがどうとか色々話していたが、俺は全て聞いているふりをして馬耳東風。興味がないことをそんな熱く語られてもな・・・。
「・・・ってな感じだ」
よく分からないまま、結局彼自身でその話をまとめてしまったようだ。
「ふーん、よーわからんが、結局、その自転車は軽いんだな」
「・・・お前、俺の話全く聞いてなかったろ」
と友哉が半笑いをして呆れる。八キロって軽いのか重いのかも俺にはよく分からん。よく俺が近所のスーパーで買う米袋が五キロなんだから、それくらいの自転車ってなるとなんだか普通に重たそうだけど。
陸橋を渡り、函館病院が目の前に見えてきたところで、美月が「なんかお見舞いの果物でも買いましょう」と提案し、先に近くの大型ショッピングモールに入る。ゲームセンターやドラッグストア、本屋や雑貨屋、洒落たカフェやレストランなどが数多くテナントとして併設されており、それなりに大きな商業施設のようだ。
「・・・こんなとこあるんだな。知らんかった」
俺がその大きさから感嘆の声をあげる。
「準貴知らなかったの?」
「そこそこ有名よ、ここ?」
俺が感動している傍から江美と美月の二人に突っ込まれる。函館市民的にはこれくらいは普通らしい。俺の住んでる北斗市ではなかなかこういった大型のショッピングセンターといったものがないので驚きだ。こういったとき、北斗市組の俺は函館市組の彼らに対してどちらかというとアウェーな感じが否めない。こんなとき遥がいればなぁ、と彼女が入院して少しだけ思うようになった。まぁ別に俺をバカにしているわけではないのだろうけれど、どうしても俺だけ田舎者感がある気がする。実際家は山と海の間だし仕方がないけど。
「で、何買うんだ?」
店舗の青果コーナーに入った一行が立ち止まり、俺がそう尋ねる。
「私、いちごが食べたいです!」
間髪入れずにそう江美が元気に言い放つ。俺も好きだけどね、イチゴ。でもこれ遥のお見舞いなんだよな・・・。と俺が内心思っていると、意外なところから賛成の声があがる。
「良んじゃない、いちご」
「そこは無難にりんごじゃないのかよ・・・」
先に賛成したのが美月。後にそう言ったのは友哉だ。美月はどうやら江美のいちご意見に賛成のようで、もうこれで決まりとばかりに買う気満々だ。だけど俺もどちらかというとお見舞いと言えばりんご派(お見舞い行くの初めてだけど)なので結果的に男女で意見が割れる形になった。
「ま、両方買えばいいんじゃないか。あいつ、あれば多分全部食うぞ」
「それもそうね」
と俺が折衷案を提案し、美月が目の前にあったイチゴを適当に入れる、俺はというと散々悩んだ挙句、選び抜かれた二つのりんごを美月の持っているカゴへと入れ、そのままレジへと向かう。
「・・・」
「どした?準貴」
きょろきょろと挙動不審な俺を少し面白がるように、友哉がそう尋ねてくる。
「いや、色々とめちゃくちゃ安いなって。ここで帰り買い物していこうかな」
「・・・主婦か。・・・いや、主夫か」
とまた友哉に呆れられる。
「準貴、女子力高いですねー。私も見習いたいです!」
「・・・あんたはそれしかコメントがないの?準貴は女子力の塊よ、いい加減分かるでしょ」
いや、俺、女子力の塊でもないんだよなぁ、と反論する間もなくレジに到着しまったので、買い物を手早く済ませる。この代金は後ほど、四人で折半することに決めた。
「・・・ちゃっかりチラシ貰ってるし。面白い人ねほんと」
清算を済ませた後、俺は備え付けであったセールチラシを一枚いただいた。卵安っ、でも割れたら困るし今日はやめておこう。そう思いながら一行は店を後にした。




