第1節
~登場人物紹介~
道上 準貴:本作の主人公、現在高校一年生。家事全般が得意。
高橋 遥 :主人公の幼馴染。元野球部マネージャーで現在諸事情で入院中。
小室 江美:主人公の隣の席のクラスメイト。パソコン部。ポニーテール。
喜田川 友哉:主人公の親友。黒縁メガネ。妹がいる。
棚木 美月:準貴のクラスメイト。江美の親友。毒舌だけど根は優しい。
1
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
六月があっという間に過ぎていき、今日は七月五日、午後の六時を過ぎたところ。七月とは言ったものの北海道の夏は本当に短いため、まだまだ夏という実感はできずにいた。むしろここのところは本州でいう梅雨っぽい季節が続いていた。
俺と友哉、江美、美月のいつもの四人はというと、以前、遥と五人で一緒に食事をしたことのある五稜郭駅前のマクドナルド、通称五駅マックにいた。しかし、以前のような楽しげな雰囲気は微塵もなく、俺を含め、全員の顏は暗いままだ。
「・・・お見舞い、行かない方がよかったのかもな」
「・・・うん、そんな気がする」
先ほど、函館病院に遥のお見舞いに行ってきたところだった。何故皆して暗い顔をしているのかをこれから話そうと思う。いや、行くまでは皆、遥との再会を楽しみにしていたはずだったのだが。何故このようになったのかの説明、と言った方がいいのかもしれない。
「・・・そうね。なんというか、精神的にくるものがあるわね」
そう、別に遥の怪我が深刻すぎて、というわけではない。なにがあったのか、それを今から話していこうと思う。
2
時はさかのぼり、その日のお昼休み。いつも通り、俺と友哉は俺の席で昼飯を食べ、隣では美月と江美が同じように昼ご飯を食べていた。
「ねぇ準貴。遥ちゃんのお見舞い行くのって今日よね?」
「そうだな」
隣の席で江美と一緒にいる美月からの質問に、そう俺は答えた。部室でのお見舞いの計画から二週間が経過し、もう暦は七月を指す頃にまで突入した。今年もう既に半分が過ぎ去ってしまい、あと少しで夏休み、というところまで来てしまった。変わったことと言えば少し夏らしくなった、気がする。しかしまだそこまで暑くはないのであまり実感は湧かない。目に見える変化は学校の制服が冬服から夏服へと移行しつつあり、いまはちょうどその移行期間なのだ。そのため、教室には夏服と冬服の男女が入り混じっている少しだけ奇妙な風景である。来週の月曜日から完全夏服が適用される予定だ。
「そう言えばお前、遥ちゃんに連絡したのか? 今日お見舞い行くぞって」
爽やかな半袖で既に夏服に移行完了をしている友哉が、恐らく確認の意味を込めたものを俺に質問してくる。
「だいぶ前にきちんと言ってあるよ。天気が良い、晴れた日の授業終わりに四人で行くって言ってある」
遥とはあれ以来、スマホでメッセージの交換をしており、再来週くらいの晴れている日にお見舞いに行きたいということは既に連絡済みだ。ここのところ雨続きで、結局今日の今日まで日程がずれ込んでしまったのだ。彼女が目を覚ましてから今日で二週間が経過したが、精密検査で大きな異常は見られなかった話しまでは聞いている。しかし、体が無事だった、ということではなく、彼女は駅のホームからの落下の際、左手と左足を骨折してしまったため、暫くの間は入院生活が続くということは既に分かっていた。
「だけど、骨折ねぇ・・・。学校来られるまでは相当時間かかりそうだけど」
友哉がそうぼそりとつぶやく。自殺であれば確かに命が助かってよかった、と言えるところだが、誤ってホームから落下し、その結果骨折というのであれば、きっとそれは不運な部類だろう。ホームから線路までの高さはおよそ一.二メートルほどだろうか。結局、自殺なのか、事故なのか、というのは俺も、先生も、三人も、まだ誰も聞いていないはずだけど。
「骨折ってどのくらい入院すれば治るんですかー?」
江美が俺らにそう聞いてくるものの、俺だってその答えを知っているわけではない。むしろこっちが聞きたいくらいだ。江美の質問に友哉が顔をしかめる。
「うーん。高校生だし、骨がくっつくまでそんなに時間はかからないと思うけど。でも骨折の場合、本人のリハビリの努力次第ってのもあるからなぁ。一概にどのくらい、とは言えないけど・・・。足だけだとだいたい半年もすれば退院できるんじゃないか?」
「半年かぁ・・・」
その言葉に、江美も、俺も同じような顔をする。半年、となるとだいたい退院の目安としては年明け前後になるだろう。
「半年後・・・。冬休み明け、ってもう三学期だよな?」
「そうね。もう少しで二年生になるところよ」
俺のつぶやきに美月が答える。そうなってくると、遥と一緒に進級というのはもう、ほぼ絶望的と言っても過言ではないだろう。
「・・・遥ちゃん、超頑張って超人的なスピードで治るって有り得ないかな?」
「あんたね。遥ちゃんはサイボーグじゃないんだから・・・」
あいつの場合、なんとなくそういうことはやってのけそうだけどさすがに無理か。あいつキズの治りとかめちゃくちゃ早かったし。確か小さいころ、転んでケガしても次の日にはケロっとして体育で徒競走やって一位だった記憶がある。まぁ昔の話だけど。
「なぁ友哉。半年で退院できるって何が根拠なんだ?」
「えっ?根拠か?前に妹がキャンプ行った時に同じようなケガをしてだいたい入院してたのが半年くらいだったから、そんくらいかなぁって」
ふーん、と友哉の言葉に耳を貸しながら弁当のおかずに手を付ける。
「妹って、いくつ年下なんだよ」
「妹って言っても俺と同い年だよ」
「・・・お前、双子だったのか」
「まぁ、そうなるな」
・・・なんか羨ましいような、そうでもないような少し複雑な気分だ。俺の中のイメージの「妹」というのは、いくつか歳が離れていて、自分のことを「お兄様」とか「お兄ちゃん」とか「クソ兄貴」なんとか言って慕ってくれるようなそんなイメージだ。容姿が可愛いかどうかはともかくとして、同い年の双子の妹というのはあまりピンとこない気がする。・・・まぁでも、よく考えればあのライトノベルの主人公とその妹も、双子ではないにしろ、早生まれの兄と遅生まれの妹というのもあるから有り得なくはないのだろう。・・・さすがですわ、お兄様。なんて一回でいいから言われてみたいな。もう俺には絶対に叶うことのないそんな夢だけど。・・・まぁでも、正直言って諦めているわけではない。親父が再婚したりすれば有り得ない話ではないからだ。再婚相手に連れ子がいて、それが義理の妹になる。その場合、俺は立派な兄になるのだ。そんなマンガやラノベも・・・、あったな。でも貞操帯付けてる妹はちょっと特殊すぎるし。あと、男装して弟だって言われても、俺、きっとわかんないだろうな。まぁでも、妹さえ、いればいい。っていうのは確かに一理あると思う、これだけでグッと惹きつけるなにかは確かにある。一人っ子の妄想を掻き立てるなにかが。
「はぁ・・・。いいよな、一人っ子は」
俺が妹論争を一人脳内で繰り広げている中、友哉がそんな発言をする。正直言ってこれは聞き捨てならななかったので、俺が当然のごとく食って掛かる。
「お前、一人っ子がどれだけ大変か分かってないからそんなこと言えるんだぞ」
「それを言うならお前だって、双子がどれだけ面倒かってのも分かってないよな」
そう言って友哉が俺に箸の先端を向けながら話を続ける。
「例えばだぞ、お前が親戚からお年玉を一万円貰ったとする。でもな、双子だとそれが単純に半分ずつになるんだよ。相手からすれば喜田川家の子供あげる額は一万円で一緒でも、こっちは貰う額が半分の五千円になるって、卑怯だと思わないか?」
「・・・それは確かにちょっと嫌だな」
「それにだ。妹なんてちっとも可愛くもなければただ邪魔なだけだ。面倒事は俺に押し付けて、得することは全部俺より先に済ませちまう。それに親や親戚なんかはあいつが女だからって理由だけで妹ばっかり贔屓しやがる。・・・兄妹ってそんなもんだよ」
「・・・俺の夢を壊すようなことはやめろよ」
それはできれば聞きたくない話だった。俺も薄々は気が付いていたけどさ。ただ、やっぱり一人っ子の考えがあるってのも確かだ。今はもうないかもしれないが、小さいときであれば兄妹二人でお留守番なんてこともあったかもしれない。そうなると、やっぱり一人より二人の方が楽しいし、心細くないだろう。あとはそうだな、二人で同じゲームを買って通信プレイで遊んだり、テレビゲームを一緒にやったりできるのも兄妹の特権なんじゃないかって思う。まぁそんなことを言っても、俺には兄妹のいる生活というのは体験できないし、また、友哉は一人っ子の生活というのがどういうものなのか分からない以上、これ以上話してもどうしよ%




