第3節
~登場人物紹介~
道上 準貴:本作の主人公、高校一年生。イケメンだがオタク。
小室 江美:主人公の隣の席のクラスメイト。ポニーテールが眩しい。
喜田川 友哉:主人公の親友。細マッチョ。
棚木 美月:準貴のクラスメイト。優等生で頭がいい。
男子二人が部室を出ていったあと、残った二人で、男子がいるところでは話せないこんな会話をしていた。
「江美」
「なに?」
「あんた、準貴のこと好きなの?」
これは私の単なる興味だ。江美は昔から人見知りがちな性格で、いっつも私ばっかりと話していた彼女が、準貴に限っては随分と仲が良さげな気がする。中学の頃は男子と話すことすら珍しかった彼女がこんなにも仲良くしている男子がいるということ自体に少し驚きだ。席が隣だからというのもあるかもしれないけれど、それでも入学式の時に比べれば、随分と仲が良いように見えた。
「えっ、まぁいい人だよね。美月ちゃんみたいに意地悪しないし、優しいし、謙虚だし。バカでもちゃんと分かりやすくお話ししてくれるから」
「・・・私そんなに意地悪かった?さすがにちょっと傷つくわよ」
「意地悪っていうか。美月ちゃんの言ってることは難しいんだもん。準貴はそゆのちゃんと噛み砕いて説明してくれるから、そこらへんは優しいかなって思う」
そこは準貴の女性と話慣れてる、いや、遥ちゃんと話し慣れてる感じが上手い具合に生かされているのだろうか。
「まぁでも確かに準貴は優しさはあるよね。ところであんた、さっき言ってった準貴に家まで送ってもらったって、本当なの?」
「うん、私が頼んだの」
「えっ、意外に大胆なことするのね」
仮に私でもそんなこと頼まないわよ、と自分の中だけで彼女にツッコミを入れる。
「うん・・・。今思い返すとちょっとだけ恥ずかしいかな。でもなんにも言わず一緒に来てくれたから。ほんと優しかったよ」
「そう・・・、よかったわね。本当に準貴の家にメイドとして雇ってもらえばいいじゃない」
「えっ、それはさすがにちょっと」
「・・・冗談よ。じゃあせめて、ハンカチ買って返してあげたらどう?準貴のことだから、貰って喜ばないってことはきっとないわよ」
「そっか、そうだよね、うん。ありがと、美月ちゃん」
「いいえ」
そう言って江美がにっこりと笑った。
「美月ちゃんこそ、昨日友哉くんと帰ったんでしょ?」
「そうだけど」
「・・・なんかあったんじゃないの?」
そう言ってまた笑っているが、今度の江美は少しばかり生意気だ。
「・・・別になんもないわよ」
「ほんと?」
「ほんとよ」
「照れなくてもいいのに」
と言って悪気の無さそうに肘で私の横腹を軽く突いてくる。この何も考えて無さそうな感じがまたちょっとだけウザい。ま、そこがこの子の可愛いところでもあるんだけど。
「別に照れてなんかないわよ」
「そんな意地にならなくてもいいのに」
「・・・あんたの方がよっぽど意地悪いわ」
確かに昨日は友哉と二人で帰って、あの赤い自転車と一緒に帰ったけれども。特に何もなかった。強いて言えばすごく自転車が目立って恥ずかしかったくらいかしら。すれ違う人たちとかあの赤い自転車めっちゃ見てたし。普通の自転車屋で置いているものと何が違うのかしら。そんな話を友哉としながらバイト先に向かったのを覚えている。おかげで友哉にはバイト先が知られちゃったけど。まぁ、どうせ来ることもないだろうし、別に困りはしないけど。
「今日も一緒に帰るの?」
「知らないわよ・・・、あんたこそ今日も準貴に送ってもらうの?」
「それはないよ」
そりゃあそうだ。そもそも江美の家は五稜郭駅と逆方向なんだから。よく送ってくれたわね、準貴のやつ。
「・・・雨、止まないね」
「・・・そうね、むしろ少しだけ強くなってるかしら」
窓ガラスに叩きつけられる大粒の雨と、叫び声のように聞こえてくる風の音が、その天候の荒々しさを物語っていた。
「・・・私たち、今日、帰れるのかしら?」
「もしかしたら、今日学校でお泊りかもね」
彼女の冗談も、この天候では笑うことはできなかった。




