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1484 青春白書  作者: 吉倉 光希
 第2章 「北海道に梅雨はないと言ったな。あれは嘘だ。」
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第1節

~登場人物紹介~


道上 準貴:本作の主人公、高校一年生。イケメンだがオタク。

小室 江美:主人公の隣の席のクラスメイト。ポニーテールが眩しい。

喜田川 友哉:主人公の親友。細マッチョ。

棚木 美月:準貴のクラスメイト。優等生で頭がいい。


四人でお弁当を食べ終わった後、長い長い五、六時間目の授業を済ませた俺たちは、今、部室へと向かう渡り廊下を歩いていた。今日は美月もバイトがないようなので、久しぶりに四人揃っての部活動だ。

四時間目に体育があったのと、昼ごはんの後というのが絶妙に影響し合い、五時間目と六時間目の授業は起きているので精一杯だった。と言っても俺は一応授業を全部聞いて、プリントもすべて埋めておいた。頑張ったぜ俺。と言ってもクラスのやつらの9割近くは眠いながらもちゃんと起きて授業を聞いているようで、先生も居眠りについて注意することはなかった。


 「ねぇ準貴。何度もごめんなんだけど、また簿記のプリント見せてもらっていいかな?」


歩きながらそう尋ねてきたのは江美だ。彼女は案の定、というか隣の席でぐっすり睡眠をとっていたのが俺にも確認できている。


 「熟睡だったもんな・・・。まぁそう言うと思ってちゃんと持ってきたから」


 「えへへ、ありがと」


彼女も俺も、席が後ろの方なので、さほど目立ちはしないものの、最近はいつ先生に注意されるか俺は肝を冷やしながら授業を受けている。


 「あんた、中学の頃からずっとよね・・・。準貴、私にもプリント見せて」


 「別にいいよ。なんだ美月、写し損ねでもあったのか?」


 「まぁそんなところ。私、簿記ってどうも好きになれなくて。一応確認も兼ねてね」


彼女は国、数、理、社、英、どれをとっても一番の成績なのだが、専門科目はどうも苦手らしい。まぁ俺も得意ってわけではないけど、パソコンは人並以上にはできるかな、という感じだ。簿記も基本は話を聞いていれば理解できないことはない。隣に電卓があるんだから、計算間違いはほぼ起こらないだろうし、ケアレスミスさえ注意すれば大丈夫だ。


 「俺にも見せてくれよ準貴。今日のところわけわかんなかったんだよなー」


 「お前ら、簿記苦手すぎだろ・・・」


 「だってよー、手塚さん喋るのはえぇし、字汚ねぇしよ。俺らに理解させるつもりあるのかよ」


手塚先生というのは俺たちのクラスの簿記担当の先生で、天然パーマのいけすかないおじさん風の人だ。俺は嫌いじゃないけども、もっぱら生徒からの評判は良くない。理由は毎日のように宿題を出すから。そして家で復習をやってくることを前提の上で次の授業が進むため、少しでもやらないと授業に置いていかれてしまうのだ。


 「ねー。友哉もそう思ってた? 私手塚先生苦手だよー」


 「あんたはただ寝ていただけじゃない・・・」


 「違うもん。なんか苦手だからやる気起きなくて。やる気起きないと眠くなっちゃうじゃん?」


 「あぁー、まぁ確かに」


江美の言っていることも確かに一理あるかもしれん。ついていけなくなるとどんどんとやる気が起きなくなってしまい、仕舞には寝てしまう、というのも少しだけわかる気がする。理解できない話を聞いても結局よく分からないことの方が多いのも確かだ。


 「ねぇ準貴。思ってないなら別に江美の言うことを全部肯定しなくてもいいのよ?」


 「いや、気持ちは分かるよ? だって手塚先生って理解していることが当たり前って思ってそうだから、江美がこう言うのも無理はないよ」


 「それでもちゃんとわかってる人はいるんだから。江美はただ甘えてるだけよ」


 「もー、美月ちゃん冷たい!」


 「あんたが準貴に甘え過ぎなのよ」


そんな話をしながら曲がりくねった長い廊下を歩き、やっとの思いで部室に到着する。


 「こんにちはー」


部室のドアを開けると、やっぱりいつも通り教室の後ろの方で先輩たちが集まってお喋りをしていた。既にお菓子もジュースもセッティングされており、あとはとにかく喋るだけ、という感じである。


 「おー、みんな来たね」


後ろの方を占領している先輩と、部長の吉田さんと軽く挨拶を交わし自分の席に座る。この教室は横長の机にパソコンが二つ置かれる形で、一つの机に二人が座れるようになっている。一年生はその中の前の方で、いつも俺の前に美月、左に友哉、左前に江美が座っている。


 「ってなわけでプリント見せて準貴」


席について早々、前に座っている美月が後ろを向いて俺にプリントを要求する。


 「はいよ、ってかまずコンピュータの電源くらいつけてやれよ。パソコンが可哀想だろ。そもそもここ何部だっけ」


 「まぁまぁいいじゃない」


そう言いながら俺がカバンからプリントを取り出し、美月に手渡す。


 「美月ちゃん! 先に私!」


 「一緒に見ればいいでしょ」


江美が美月に喰ってかかる。そんなに写すのに必死なら起きていられそうな気もするけど。


 「・・・お前も手塚さんのこと言えないくらい字汚いよな」


 「先生喋るのが早いから丁寧に書いてられねーんだよ」


 「そうそう、それ。俺の場合、字書くのが遅いからトロトロしてると置いてかれるんだよ」


と友哉がぼやく。彼の場合字が綺麗な分、書くのに少し時間がかかるのだろう。


 「・・・そりゃあ困ったな。字の丁寧さを犠牲にするとかしかないだろ」


 「それは俺的に許せない」


 「ふーん。ま、こだわりは人それぞれか」


 「ってなわけでさ。二人ともプリント写し終わったら教えて」


と言って友哉と俺は適当にパソコンの電源をつけ、インターネットでも見て遊んでいることにする。最近は文字打ちゲームも、原稿打ちも飽きてきたので、先生がいないときはネットでも見て時間をつぶすことが多くなってきた。隣の友哉はというと、文字打ちゲームの初級をクリアするのが目標らしく、今はそれに向けて練習中だ。


 「・・・なぁ友哉。俺後ろで見てるから、ちょっとやってみろよ」


 「えぇー。やりづらいな」


 「まぁそう言うなって」


と言って友哉が自分のパソコンでゲームを起動させる。起動させると言っても、ネット上で配信されているFlashタイピングなので、起動というよりはサイトを開くと言った方が正しいのかもしれない。


 「よしっ」


と言って友哉が選んだのは練習モードの初級。これ以上難易度を下げることはできない、レベル1、いやチュートリアル的なニュアンスに近いものだ。


 「・・・・・」


 「・・・・・おっそっ」


彼がディスプレイに出てくるアルファベットを真剣にタイプする。しかし一生懸命にプレイしているところ申し訳ないが、お世辞にも早いとは言えない。いや、お世辞すら言えないレベルである。


 「・・・・・」


 「・・・・・」


ゲームを終えて出てきた結果はなんと、平均キータイプ数1・1/秒といういろんな意味で驚異的な数字だった。


 「どうよ」


 「どうって・・・。逆になんでそんな誇らしげなんだよ」


 「結構上手くできた方だぜ」


 「・・・多分俺、右手の小指だけで打ってても勝てるぞ」


 「お前がいくら早いからって、それはさすがに盛り過ぎだろ・・・」


 「いや、多分できる。見てろ」


そう言って今度は俺が同じゲームを起動させ、右手の小指のみでチャレンジする。


 「・・・・・」


 「・・・・・おっそっ」


 「・・・・・」


確かに。タイプしている自分が一番もどかしい。


 「・・・・」


 「・・・・」


そして頑張った結果は、平均キータイプ数1・4/秒だった。


 「俺、こんなのより遅いのかよ」


 「まぁこんなもんだ。まず友哉はキーの位置を覚えないと」


 「授業でもそれ言ってるけどよ、ブラインドなんちゃらってそんな大事なのか?」


 「ブラインドタッチだろ? 持っておくに越したことはないかな」


せっかく北高に来たのだ。それくらいできて卒業してほしいという先生方の願いも多少はあるのだろう。ってか北高に来たって、別にダジャレじゃねぇよ。


 「まずは手元を見ないで練習するところから始めるか」


 「そんなの無理だって・・・」


そう言いながら友哉ががっくりと肩を落とす。まぁあと三年あるんだ、そこで身につければいいだろう。


 「はい、準貴。プリントありがと」


俺らのゲームが終わったとほぼ同時に、美月がさきほどのプリントを渡してきた。


 「おぉ、全部写し終わったか?」


 「えぇ」


 「私まだ見てるのー! 美月ちゃんいじわる!」


そう隣で訴えかけているのは江美だ。まぁ多分そんなことだろうなとは思ってたけど。だってまだ貸してから数分しか経っていない。美月もなんでそんなことするのか俺には少しわからないが、とりあえず美月からプリントを受け取り、次はそれを友哉に手渡す。


 「じゃあはい、友哉。江美は美月から見せてもらえばいいだろ」


 「あっ、そっか。美月ちゃん」


俺はてっきり美月が見せてくれるのだとばかり思っていたが、どうやらそういうことではないらしい。


 「私は見せないわよ?」


 「・・・えっ?」


 「なんでさぁー!今日の美月ちゃんちょっといじわるだよ?」


まぁ確かに江美がそういうのも少し納得だ。別に減るもんじゃないし見せてやればいいのに、と俺は心の中だけで思っておく。


 「・・・あんたね、私はあんたのためを思って言ってるのよ?」


 「えー。私のためを思うなら尚更見せてくれてもいいじゃん」


 「・・・浅はかね。あんた、見せてくれてる準貴にちゃんと感謝してるの?」


 「うん、ちゃんとありがとって言ってるもん」


 「準貴はちゃんと授業中起きて、きちんとメモしてるの。私の席からあんたは見えないけど、きっと中学の頃みたいにぐーたら寝てるんでしょ?」


 「まぁ・・・、うん」


美月の指摘に江美が気まずそうに答える。


 「もーちょっとしっかりしなさいよ。あんた、今日のところ全く書いてないじゃない。始めからずっと寝てたんでしょ」


 「はい・・・」


美月の意外な説教に江美もちょっと涙目だ。まぁでもこうやって真面目に指摘できるほどの仲ってのは少しだけ羨ましい気がする。


 「なぁ、美月。江美も反省してるだろうしそろそろ許してやったら・・・」


そう俺が言いかけたのも束の間、美月が鋭い目つきでこちらを睨んでくる。


 「準貴も準貴よ。江美を甘やかしすぎ! また準貴が見せてくれるからいいやーって思ってるのよこの子は! 分かってる?!」


 「はい・・・、すいません・・・」


なんでか知らないが俺も説教を受ける羽目になってしまった。俺が少し気後れしていると、隣で友哉がケラケラと笑いだす。


 「やーい、準貴怒られてやんの」


 「あんたは黙ってなさい」


 「・・・でも美月ちゃんのそういうところ、俺は嫌いじゃないかも。なんつーかその友達想いなところ?ってのかな」


 「・・・うるさいわね」


友哉の言葉に美月が少し口ごもる。でもこう面と向かって言ってくれる人がいるってのは確かに恵まれているのかもしれない。


 「・・・ってなわけで分かった?江美」


 「はい・・・、次から頑張って起きてます」


 「私もずっと起きてろとは言わないから。せめて前半くらいは起きてないとホント留年になっちゃうわよ?」


 「はい・・・」


 「準貴も!江美を甘やかさない!分かった?!」


 「すいません・・・」


俺としては決して甘やかしているつもりはなかったのだが、美月の言うことに反論するところはなかった。本当は俺が江美に言ってやるべきだったのか・・・、と少しだけ後悔の念が残る。


 「ま、準貴はなんも悪くないけどね。あんたが寝てるのが悪いのよ」


 「・・・」


江美は少し疲れた様子で、返事すら周りの音にかき消され、聞こえないくらいだった。


 「いつ準貴が愛想尽かしてあんたを見放すか分かんないんだからね?」


 「別に俺はそんな」


 「ふえぇ・・・、それは困るぅ・・・」


と江美が本当に困ったときのような顔でこちらを見つめてくる。


 「あんた、なんか準貴にお礼でもしたらどう?」


 「・・・私、なにすればいいの?」 


 「そうね、例えばお弁当作ってあげるとか」


 「?!」


いきなり話が変な方向に行った気がするが。友哉はというと、一瞬だけこっちを向いてニヤッとした後、またプリントに視線を戻してしまう。


 「あぁ、でも準貴料理上手いからあんたの出番はないわね」


 「えぇ・・・」


 「準貴は江美にお礼されるとしたら、どんなことしてほしい?」


 「えっ」


そして突然、美月がこっちに話題を投げてよこしてくる。俺はというと、もちろんだが何も考えているはずもなく、咄嗟になにかを言おうとしたが、結局、やっぱりなにも出てこなかった。


 「えぇ・・・、いいよそんな。ただノート見せただけなんだから」


 「・・・見せたのは簿記のプリントだけ?」


 「いや・・・、国語と、数学と、英語もだけど・・・」


と言って江美を見ると彼女はとってもバツが悪そうに俺たちから目をそらす。


 「あんたね・・・」


 「仕方がないじゃん!」


 「もうこれはあれね。江美が朝から晩まで、エプロン姿で準貴の家でご奉仕くらいしないと無理ね」


 「・・・」


何をわけのわからないことを・・・、と思いつつ少しだけその姿を想像してみる。

・・・どの家事も俺がやった方が早そうだ、なんとなくだけど。でも、でも仮にそうなったとしたら、休日の休みの日に、彼女のポニーテール姿を一日中眺めながらぐーたらするってのも、少しだけ、ほんの少しだけ魅力的かもしれない。


 「・・・んなこと頼まねぇよ」


 「・・・いま、ちょっと想像したでしょ? 少しだけ間があったわ」


鋭いなこの人。俺の想像、というか妄想がまるで見透かされているようだった。というか、もしかしたら美月は俺ら二人でただ遊んでるだけなのか?冗談にしてもたちが悪すぎる。


 「・・・準貴がそれで許してくれるなら、別に私は・・・」


 「はぁ・・・。お前ら、俺らをいじって楽しいか?」


 「あら、バレた? だって昨日二人でなんかあったって言ってたから、もしかしたらそういうことなのかなって」


 「まぁ、確かに色々あったけどよ」


江美はまだなんのことか分かってないらしく、頭の上にクエスチョンマークが並んでいる。


 「気になるなら昨日なにがあったのか単刀直入に聞いてくれたほうがまだましだ」


 「だって、聞いたところで絶対答えてくれないじゃない」


 「・・・まぁ、そうだけどよ」


そう言って俺は呆れながら友哉の方に体を向ける、こいつが黙っているのもどうも気に喰わない。


 「なんなんだよ二人とも」


 「えぇ、俺なんも喋ってないじゃん。・・・まぁいずれ準貴に内緒で聞こうとは思ってたけどよ。・・・だって気になるじゃん。ハンカチ貸したって、どーしたんだよ。お前、江美のこと泣かせでもしたのか?今日遅刻してくるしよ・・・。絶対なにかあっただろ」


 「最初からそう聞いてくれよ・・・、変に疲れたわ」


こいつら、要するに俺ら二人が昨日色々あったことの内容が気になったのだろう。具体的にはハンカチを貸して、その後買って返すだとか、洗って返すとかいう内容のやつだ。それを知りたいがために、わざと俺らにちょっと変な話をふっかけて、どんな反応するかを観察しようとでも思っていたのだろう。


 「わかったよ。話せばいんだろ・・・」


そう言って俺は話を続ける。


「昨日、遥のことについて、俺と江美とで先生に聞かれたんだ。遥の事故の件についてなにか知ってることはないかって。それでまぁ色々あって江美が泣いちゃったんだよ。だから俺がハンカチとティッシュ貸して、その後家まで送って帰ったってだけだ」


「・・・その『色々』が聞きたいんだけどなぁ~」


と美月がニヤニヤした顔こちらを見てくる。


 「・・・それは江美本人に聞いてくれよ」


 「まぁそれもそうだな」


と友哉は納得してくれた。


 「ふーん、まぁいいわ。で、あんた、なんで昨日準貴にハンカチ貸してもらったの?」


 「えっ、昨日の話? 私がメイドさんするって話は?」


 「それはもういいわよ。あんた、そんな準貴の家でメイドさんしたいの?」


 「えっ、いや、え」


と言って江美ははじめて自分が変なことに巻き込まれていることに気が付き、やっと顔を赤くする。ってかさっきの会話でメイドさんって単語は一言も出てなかったんだけど、大丈夫かな。江美の中でなにかがメイドさんに変換されたらしい。


 「可愛いなぁ、江美ちゃん」


 「お前なぁ・・・」


友哉の独り言に俺がすかさず突っ込む。


 「だって、こんな子普通いないぞ?天然っつか」


 「・・・アホなだけじゃね?」


 「そこがいいだろ」


確かに、見る分にはちょっとだけ可愛いけどさ。確かにドジっ娘メイドっていう属性も無くはないか。※ただし二次元に限る、とか言われそうだけど。でも今はどっちかというと見てるこっちが恥ずかしい気持ちだ。


 「昨日でしょ?えっと、なんか遥ちゃんがこのまま目覚めないのかって先生と話してたら不安になっちゃって。あと準貴の隣で泣いて、準貴にうち、めんどくさい人だって思われたかもしれないなぁって思ったら、またさらに悲しくなっちゃったっていうか」


 「なるほどね、あんたらしいわ」


ようやく美月は納得がいったらしく、満足そうに座りながら両手を組み、背筋を伸ばす。まるで事件が解決された後の緊張感がほぐれた感じだ。


 「お前らも気になるなら普通に聞いてくれよ。メイドさんの話のところ絶対に要らなかっただろ」


 「なによ、メイドさんって。私、メイドの話なんて一言も言ってないけど」


 「・・・意地悪だな、お前ら」


まぁ変に秘密にしようとしてた俺らも悪いんだけどね。江美は気にしているのか、気にしていないのか、俺らの話を聞きながら終始目をぱちくりさせていたが、これで良かったのだろうか。


 「なにはともあれ、遥ちゃんの意識が戻って良かったな」


 「ほんとそれね。これが笑い話になったのも遥ちゃんが今朝目覚めたからってもんよ」


 「俺の話は無視かよ」


そしてどっと疲労感が押し寄せてくる。結局こいつら、俺らをおちょくって楽しんでたってわけか。まんまと一杯喰わされたよ。


 「で、遥ちゃんのお見舞いにはいつ行く?」


そう友哉が俺たちに問いかける。


 「私はバイトなければいつでもいいけど・・・。でも今日みたいに雨の日はちょっとね。入院先の病院って函館病院でしょ?」


 「そうだな。歩いて行くってなると晴れてるに越したことはない、ってか自転車でもそうか。今日が木曜日だから・・・。とりあえず来週の後半、晴れてる日って感じでいいんじゃないか。その頃には検査も多分終わってるだろうし」


 「私、来週の木曜日なら今週と同じくバイト入ってないから、そこあたりを一応目途って感じでいいんじゃない?」


 「オッケー。じゃあ準貴一応、遥ちゃんに来週の木曜日あたりってことで伝えておいてくれよ。江美ちゃんもそれでいいよな」


 「あっ、うん。大丈夫」


こうして四人が話し合い、来週の木曜、晴れていれば遥のお見舞いに行くことが決まった。四人で話し合ったというよりかは美月の都合を考えてちゃっちゃと決めたという方が正しいか。江美なんか見てると全然話聞いてなかった様子だし。


 「おーい、江美。大丈夫か?」


 「えっ、うん。ってかさ、さっきなんで私、メイドさんやるって話になってたの?ってか結局やらなくていいの?」


そう言って本当に分からんとばかりに首をかしげる。


 「・・・ほら、説明してやれよ」


 「準貴」


 「えっ、俺かよ」


友哉と江美が笑うのを堪えながら、俺に視線を向け、説明を促す。


 「説明って言ってもなぁ・・・。ってかなにを説明すりゃあいいんだよ。とりあえず頑張って授業中起きてような、って感じでいいのか。美月は本当に江美の将来のこと心配してるから。あとうちにメイド雇う余裕はないから大丈夫だ」


 そう俺がいい加減に説明する。合ってるのかこれで。


 「うん、多分そんな感じで合ってるんじゃないか」


友哉が俺の説明に可の判定を下す。しかし前の美月はというと、どうやら不服のようで、あまりいい顔をしていない。


 「私を巻き込まないでくれる?ってか私、エプロン姿とは言ったけどメイドさんとは一言も言ってないわよ」


 「美月ちゃんの説教もなかなか良かったよ。ほんと、友達想いなんだってのが伝わってきた」


 「あんたは黙ってなさいよ、いい加減にしないとぶっ飛ばすわよ」


美月が友哉の茶化しをすかさずぶった切る。


 「ひぇー怖い。準貴、トイレ行こうぜ」


 「・・・はいよ」


そうして俺らは美月の鉄拳制裁から逃げるように部室を一旦後にした。


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