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1484 青春白書  作者: 吉倉 光希
 第6章 「脚の綺麗な先輩は好きですか?」
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第2節

~登場人物紹介~


道上 準貴:本作の主人公、高校一年生。イケメンだがオタク。

高橋 遥 :主人公の幼馴染。元野球部マネージャーで現在諸事情で入院中。

小室 江美:主人公の隣の席のクラスメイト。少しだけアホの子。

石川 彩音:二年生の先輩。準貴の一つ上で普通科出身。


※この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。

 俺の家から徒歩でさらに一分ほどのところに石川先輩の家はあった。ここまで家同士が近いとは自分でも驚きだ。彼女の家に電気は灯いておらず、車が停まっている様子もない。


「ついたよ、あれ?お母さんまだ帰ってきてないのかな?ただいまー」


「お、お邪魔します・・・」


恐る恐る玄関の中へと失礼する。家の中に入るとまず、自分の家とは違うふんわりとしたやさしい香りが鼻孔をくすぐる。女の子の家ってみんなこんないい匂いがするのだろうか。そんなことを思いながら、自分の靴をしっかりと揃え、室内へと進む。


 「そこの椅子に座ってテレビでも見ててよ。ちょっと自分の部屋片付けてくるから」


と言って、先輩は居間の電気をつけた後、二階へと行ってしまった。仕方がないので、居間にある大きなソファーに座り、近くにあったリモコンでテレビの電源をつける。バラエティーを見ても自分にはよくわからないので、とりあえずニュース番組にでもチャンネルを合わせておく。上の階からは物音が聞こえ、なにやら先輩があわただしそうにしている。俺は失礼だと思いながらも部屋のなかをぐるりと見回す。清潔感のある真っ白な壁紙に自分の家にはないシャンデリアのような照明。ガラス製のテーブルに大きなテレビ、部屋の構造的にはダイニングとリビングとが別に設置されており、ソファの横には食卓テーブルらしきものがある。俺はとりあえず室内の照明がついているので、勝手ながら居間のカーテンを閉めさせてもらう。


 「あっ、ごめんねわざわざ。とりあえずご飯作ろうと思うんだけれど、なんか食べたいものある?」


 先輩が二階から降りてきたようで、何気なく俺に晩御飯のメニューを聞いてくる。しかし、さすがにそこまでしていただくのは失礼なので、丁重にお断りする。


 「いやいや、ご飯はいただけないですよ。遥の話してすぐ帰るんで、俺」


 「そんな固いこと言わないでさー。それに今、色々と食材買いすぎてちょっと困ってるんだ。私作るから食べていってよ」


以前に先輩とすれ違った際の大量の食材が余っているというのか、それなら最初から考えて買えばいいのに、と思ったがそれは言わないでおく。とはいえさすがに食べている最中に先輩のお母さんが帰ってきたりすると気まずいので、俺は固く断るのが無難だろうと思い、もう一度だけ断ってみることにした。


 「そうは言ってもさすがにご飯ごちそうになるのはまずいですよ。すぐ帰りますんで」


 「後輩くん、何食べたい?」


 「先輩、俺の話も聞いてくださいよ」


先輩は全く俺の話に聞く耳を持っていないようなので、少し疲れてしまう。


 「ね、いいじゃん。私一人だと寂しいし・・・。ね?いいでしょ?」


 「可愛い子ぶっても無駄ですよ」


と俺が彼女の冷やかしを一刀両断する。


 「ちぇっ、後輩くんには通用しないか。さすが遥ちゃんで鍛えられてるだけあるね」


 「別に鍛えられてはないですけど・・・」


 「いや、本当に食材多すぎて大変なんだよ。お母さん最近外食ばっかりで、私だけで食べる前にお肉とか腐っちゃうんだよ。・・・ちょっと言葉は悪いけど、腐らせるぐらいなら食べてもらいたいなって」


 「・・・そこまで言うなら、でも先輩、彼氏さんに怒られないんですか?」


 「大丈夫、大丈夫。黙ってればバレないよ。恭ちゃん家遠いし」


 「そういう問題じゃないでしょ・・・」


そう言いながら先輩は既に制服の上にエプロンをして、台所で料理を作る準備をしている。というか制服のままで料理をするのだろうか。俺は家に着いたら速攻で制服を脱ぎ、部屋着に着替えてから家事をするタイプなので、少しだけその姿に違和感をもってしまう。


 「ほら、何食べたい?私が好きなの作ってあげるから」


 「材料なに残ってるんですか?」


 「食材はだいたいあるから、食べたいもの作ってあげるって」


と言いながら先輩が苦笑いでこちらを見つめる。


 「そう言ったって、もし、材料がなかったら料理をリクエストされたところで作る側が困っちゃうじゃないですか。まぁ今の俺の気分と、短時間で簡単にできるってことを考慮するなら・・・。生姜焼きとかどうです?豚肉があればの話ですけど」


 「豚肉はあるけどさ・・・。後輩くんなんか作る側の人みたいだね。わかった、今日のメニューは豚の生姜焼きでーす」


いつも親父が突拍子もない破天荒な料理のリクエストをしてくるおかげで、こういうことは無意識に考えるようになってしまっているようだ。まぁ人様のおうち、ということもあるのだろう。


 「俺、どっちかっていうと、作る側の人間なんですよ。あ、じゃあ俺、生姜すりますよ」


 「えっ、まぁ助かるけどさ」


と言いながら、俺も少しだけ気合を入れ、学生服の上着を脱ぐ。ちなみに学ランの下はYシャツだ。白なので料理の際に汚れる心配もあるが、洗えるので、学ランを汚すよりはましだろう。Yシャツの腕をまくり、先輩と同じくキッチンに並ぶ。うちより一回りほど大きな水回りに、立派な冷蔵庫やガス台がついている。


 「・・・先輩?どうしました?」


 「いや、ちょっと・・・。恥ずかしいかなって」


 「なに言ってるんですか。それよりすりがねと生姜の場所教えてください」


 「あ、うん・・・」


と先輩は少し顔を赤くしながらそれぞれの場所を教えてくれる。二人でキッチンに立って各々作業をしていると、やっぱり先輩がこちらの方をチラチラと見てくる。俺は生姜をすりおそしながら、先輩に尋ねてみる。


 「どうしたんですか?お肉切らないんですか?」


 「いや、なんか人に料理しているところ見られるのって緊張するなって」


 「そういう可愛さアピールはいいですって。そうだ、せっかくですしちょっと野菜も一緒に炒めちゃいましょうよ」


 と言いながら俺は(一応先輩の承諾を得て)冷蔵庫の中を確認し、キャベツと人参など適当な野菜を選び、もう一本の包丁を使って食べやすいサイズに切ってしまう。


 「・・・後輩くん速すぎ。私まだお肉切ってるからちょっと待ってよ・・・」

先輩はというと、なぜだか少し涙目だった。


その後、俺はお肉の油が服に撥ねると面倒なのでリビングへと退散する。しばらくテレビを見ていると、先輩がご飯をリビングへと運んできてくれた。


 「はい、お待たせしました」


お米は既に炊き上がっていたようで、炊き立ての美味しそうな白米が山盛り茶碗によそわれている。


 「ありがとうございます。なんだかすみません。結局晩御飯まで作っていただいて」


 「大丈夫だよ。結局お母さん、多分今日も外食だろうし、お米余るのももったいなかったから」


と言いながら、二人でリビングのガラステーブルに並べられた食材の前に座る。いただきますをした後、俺は先輩の作ってくれたごはんをありがたくいただこうとする、のだが、ふと先輩のおかずの皿に目をやってみると、どうみても先輩の方のおかずの量が少ないことに気が付く。


 「・・・先輩、そんな食べないから貧血起こしちゃうんですよ」


 「そんなことないもん。ちゃんと食べてるよ」


と言いながらも、豚肉の枚数だって俺より少ないし、ご飯に至っては俺の半分くらいにしか盛られていない。


 「てか、俺自身、こんな食べきれないですよ」


 「普段恭ちゃんに盛ってるくらいだよ?」


 「先輩の彼氏さんは現役の高校球児でしょ?俺、このままだと残しちゃいますよ。白米はともかく、先輩ちょっとおかず食べるの手伝ってくださいよ」


 「えーっ、まぁ後輩くんがそう言うなら・・・」


と言いながら、俺の皿から渋々豚肉二枚と野菜炒めを持っていく。それでも俺の方が少しだけ多いのだが、まぁいいだろう。


 「それにしても、緊張した・・・。後輩くん、料理マズかったりしない?」


 「美味しいですよ」


言いたいことがないことはないが、人様からいただいたご飯なので、文句は言わないのがマナーというものだろう。と言っても料理自体はほぼ満点に近い出来だ。あとは恐らく味の好みの問題だろう。さすが、彼氏のために一生懸命料理を勉強した女の子というだけあるなと感心する。


 「先輩、料理上手ですね」


 「・・・後輩くんには負ける気がするけどね。お母さんいないんだっけ?」


 「まぁ。親父が超絶料理下手くそなんで、俺が作るしかないんですよ」


 「なるほどね。なんか手際が私とは違ったもん」


そう言いながら先輩が野菜炒めの玉ねぎを箸で持ってみせる。


 「ほら、見てこの玉ねぎ。うっす!包丁で切ってこの薄さになるの?」


 「まぁ、料理慣れれば嫌でもそうなりますよ」


 「あれくらい薄いよ。ほら、コンd」


 「先輩。それ以上言ったら俺、ご飯残して出ていきますからね」


 「・・・ごめんってば」


先輩なりの冗談だったつもりなのか、彼女は少しだけ笑って見せる。


 「先輩、なんかところどころ下ネタ挟んできますよね」


 「きっと恭ちゃんのがうつっちゃってるんだろうね。今自分でも言ってて少し恥ずかしかったもん」


 「なら、言わなきゃいいのに・・・」


と言いながら、先輩は耳まで赤くしてむいてしまう。よほど恥ずかしかったのだろう、自分から言っておいて。その後、先輩はというと「いやー、あっついね」と言いながら手のひらで自分をあおいでいた。先輩の素の性格がこうでないというのはなんとなく分かるが、だからと言って、彼氏さんの影響をここまで受けるものなのだろうか。確かに一年以上も一緒にいれば少なからず互いが影響し合っていてもおかしくはなさそうだが。先輩の彼氏さんはがっつり肉食系とは言ってたものの、どこまで肉食系なのだろうか。俺は一生地面に生えてる草食って生きよう。そう密かに心の中で決めた。


 「ふう・・・。いっつもは恭ちゃん、私がご飯作ってるときはリビングでテレビ見てるから。今日は後輩くんが隣にいてちょっと緊張しちゃったよ」


 「手伝っては・・・くれないですよね普通。邪魔したら悪いですし」


 「うーん、多分料理に興味がないだけだと思うけど」


 「ところで先輩、具合良くなりました?」


だいぶ顔色は良くなったように見えるが、少しだけ心配だ。


 「大丈夫、元気だよ」


 「すみませんほんと、晩御飯までごちそうになっちゃって」


 「いいって、いいって。謝りすぎだよ後輩くん。そうだ、じゃあ今度後輩くんのご飯食べさせてよ」


 「それはちょっと嫌ですね・・・」


 「なんでさー」


 「だって、作りづらいじゃないですか。隣に人いたら」


 「私、今日その状況だったんだけど?」


そう突っ込まれながも、俺らはそれなりに楽しい夕食の時間を過ごした。

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