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1484 青春白書  作者: 吉倉 光希
 第5章 「フラグクラッシャー」
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第2節

~登場人物紹介~


道上 準貴:本作の主人公、高校一年生。イケメンだがオタク。小柄。

高橋 遥 :主人公の幼馴染。元野球部マネージャーで現在入院中。

石川 彩音:二年生の先輩。以前に会った彼女はギャルっぽい姿。


※この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。

 そのあと、二度寝しようか迷った挙句、制服に着替えた後、居間のソファーで少しだけ仮眠をとって学校へと向かった。ソファーで寝たところで、睡眠の質的は最悪。二度寝にしてはあまり効果があったとは思えない、中途半端な仮眠だった。眠い目を一生懸命見開きながら電車に乗り込む。家を出るのが少し遅れたこともあり、車内には結構な人がいた。いつもの自分の席が空いていなかったので、仕方がなく車内中央の誰もいないボックス席に座る。

俺のいつも乗っているこの、キハ四十形七百番台車両は、車両両端にデッキがついている。中に入ると、左右に横長の対面椅子と奥にボックス席が複数、そしてまた左右に対面椅子のあと、デッキがついているといった形だ。ボックス席は人と人との距離が近いのでどうも苦手だ。隣に座られる分にはいいのだが、対面で膝と膝がぶつかりそうなくらい近いのが自分は好きになれず、いつも対面椅子の端に座るのだが、今日は既に人でいっぱいだった。

 ボックス席で、ラノベを読んでいると、向かいの席に誰かが座ってきた。遥がいないと、俺は当然一人なので、俺の向かいにも人が座ることはある。


 「ちょっと、おーい、男子高校生―」


と声をかけられたので、顔をあげると、目の前にはうちの制服を着た女子高生が座っていた。というかどこかで見たことあるような。


 「あなた、遥ちゃんと仲良いわよね?」


 「はい、ええと・・・。どちら様ですか?」


 「あぁ、私? 石川彩音。あんた、道上準貴でしょ?知ってるから」


 「あぁ。あの卵の人」


彼女、以前にあったことがあると思ったら、俺と卵の取り合いをしたあの同じ高校の先輩である。今はきちんと胸当てもして、スカートの丈は短いながらもまぁパンツが見えそうとまでは言わないくらいの長さである。髪は同じくサイドテールで化粧は依然と比べ、少し薄めな気がする。


 「そうそう、あの卵の人だよ。そんでさ、あなた遥ちゃんと仲良かったよね?」


 「まぁ、はい」


 「前、一緒に買い物しに来てたでしょ? 面白いよね二人とも、夫婦みたいで」


 「はぁ・・・」


俺は彼女の一方的なトークに少し気後れしてしまう。一体なにが目的で俺に話しかけてきたのかが全然見えてこない。


 「あなた、なんか反応薄いわね・・・」


 「先輩の方こそ、朝からどうしたんですか。初対面の俺になにか用ですか?」


 「あ、えっと君、遥ちゃんが今、入院中で意識不明ってのは知ってるよね?

」

 「まぁ、もちろん」


 「それでさ、色々遥ちゃんのこと聞きたくて声をかけたんだ」


 「そういうことですか。なら最初に言ってくださいよ。びっくりするじゃないですか」


 「めんごめんご」


と全然気持ちのこもっていない謝罪を受ける。


 「ところで石川先輩って、何年生ですか?」


 「私?二年生だよ」


マジか。てっきり三年生かと思っていた。なんというか、以前の印象と風格から三年生だと勘違いをしていたようだ。俺が駐輪場で倒れた自転車を直した時は、「何様だよこいつ」と思ったものだが、今の彼女を見る限り、そんな女王様のような雰囲気はひっそりと影を潜めている、そこらへんにいる普通の女子高生だ。スーパーで会ったときより、比較的優しそうな感じはする。女の人って、化粧でこんなにも印象が変わるものなのか。


 「石川先輩、でもよく初対面の人にそんなノリで話しかけられますね」


 「彩音でいいよ後輩くん!」


 「いや、そういうわけには・・・」


 「私も準くん、って呼ぶから」


 「やめてください」


どうにも調子がつかみづらい。というか準くんって、何年ぶりに呼ばれただろう。その呼ばれ方は鳥肌が立つのでやめてほしい。


 「準貴でいいですよ」


 「えー、つまんないの。意外とドライなんだね、準貴って」


 「先輩こそ、俺が初めて見かけたときよりたいぶ印象違いますよ」


 「初めて?あぁ、あの卵のときね。まぁ彼氏がそういうのが好きらしいからさ。少し化粧濃いめでスカートがっつり短くして、怖かった?」


 「怖かったですよ・・・、俺も卵、欲しかったんですけど、譲っちゃいましたもん」


 「ハハハ、ごめんね。あの日は彼氏が家に来る予定でさ、いっぱいご飯作ろうって張り切ってたんだよ」


 「なるほど」


彼氏のためにそこまでして、と思ったが、それも彼女なりの努力なのだろう。電車は既に上磯駅を出発しており、彼女は上機嫌で彼氏さんのことなど、色々と話を続ける。そしてその最中、先輩が足を組みなおすたび、スカートの奥の太ももがチラっと見えて、無意識のうちにそれを目で追ってしまう。


 「準貴、初対面のくせに脚見すぎ」


 「・・・すみません」


さすがにバレてしまっていたようで、ジト目で彼女がこちらを見てくる。


 「あれ、正直なんだね。てっきり見ていないって否定するかと思ったのに」


 「嘘はつきたくないんで。先輩も落ち着きないですよ。黙って足は揃えててください」


 「いや、なんか君の目線が面白くて」


 「・・・」


完全に遊ばれていたらしい。しかし男性が女性の脚や胸、スカートの中を無意識のうちに見てしまうことは、仕方がないと俺は思うんだけれども・・・。でも見ないようにしないといけないんだろうな。


 「で、何だっけ。私の太ももの話だっけ?」


 「違いますよ。それは彼氏さんとでも語り合っていて下さい」


 「恭ちゃんはもうがっつり肉食系、って感じだから。話すより体で語るタイプかなぁ」


 「朝から話題が艶めかしいんですよ。違うでしょ、なにか俺に聞きたいことあるんじゃなかったんですか」


 「そうだった」


ほんと、話題が全く進まないので、こちらも少し疲れてくる。


 「そうそう、でね。恭ちゃんのことなんだけど」


 「なんですか、惚気ですか。もう早く本題に入りましょうよ」


 「違うって、これが本題なの」


 「はぁ・・・」


もう、ほんと疲れてくる。


 「恭ちゃん、野球部のエースでピッチャーなんだよ」


 「あぁ、そういうことですか」


やっと、彼女がなぜ俺に話しかけてきたのかが分かった気がする。


 「恭ちゃん一応、野球部のキャプテンだから・・・。私も協力できることは協力してあげたいなぁって。さっきも言ったんだけれども、遥ちゃんについてなにか知ってることがあったら、教えてほしくて」


 「彼氏さんに頼まれたんですか?」


 「まぁそんな感じ。で、とりあえず幼馴染の君に話を聞いてみようかな、ってことですよ」


 「それはわかりましたけど・・・。俺は一体、なにを話せばいいんですか?」


 「うーん、なんかある?」


 「なんかって・・・」


いきなり聞かれることが呆然としずぎていて俺も少し戸惑ってしまう。どのあたりから話せばいいのだろうか。というか、この人に話しても大丈夫なのだろうか、悪い人ではなさそうだが。とりあえず、無難なところから話していこう。


 「そうですね・・・。遥のやつ、事故の一ヵ月くらい前からマネージャーが辛い、ってことは話してましたね。でもその原因がなんなのか、ってことまでは分からなくて」


 「うんうん」


 「それで、もしかしたらマネージャーの仕事の内容がキツくて、疲れてたんじゃないかって、俺と友達で話していました。でも本当の原因が何かは俺にもわかりません・・・。あくまでこれは予測です」


 「一年生だもんね、きっと大変だったんだよねー、仕事」


石川先輩もこの説明で、話の概要は理解してくれたようだ。


 「先輩、今では彼氏さんの彼女ですけど、先輩自身が、野球部のマネージャーをやろうとは思わなかったんですか?」


 「野球部は基本、部内恋愛禁止だからね。マネージャーをやりながら恭ちゃんの彼女はできないんだよ。だから最初はマネージャーやろうかなって思ってたんだけど、うちはそうじゃない方法で恭ちゃんを振り向かせようって決めたんだ」


確かに、二人の間でいざこざがあったときなど、チーム全体に迷惑がかからないように部活動内での恋愛を禁止しているのというのは理にかなっているような気がする。しかしそれにしても、彼女の行動力には驚きを禁じ得ない。普通なら、お近づきになるため、マネージャーになって、って考え方が一般的だと思うが。


 「先輩って、今二年生なんですよね。彼氏さんは三年生で・・・。二人の間に接点とかあったんですか?」


 「そういうのは特になかったけど・・・、なんていうか、運命の出会いっていうか、さ」


と言いながら石川先輩はポッと顏を赤くする。なんだよこの乙女、惚気まくってるじゃねぇか。けど、今こうして一緒にいるってことは、うまくいったってことなのだろう。


 「先輩の行動力には少し驚きますよ。なんの接点もない先輩を彼氏にするなんて」


 「まぁ、ちょっとスカート短くして、色仕掛けってやつだよ」


 「手段は問わないタイプなんですね」 


 「違うよー。恭ちゃんがそういうの好きって話を聞いて、めっちゃ努力したんだから!」


 「ほかになんか努力したこととかあるんですか?」


 「そうだなー。料理上手になったり、ちょっとギャル風のメイクしてみたり、あと髪染めたり」


 「やっぱりそれ、地毛じゃなくて染めてるんですね。アウトですよ」


 「セーフだよ、セーフ。可愛いからオッケーなの」


どう考えてもアウトなのだが、これを地毛と言い張って、なんとかなっているのだろう。というか、この人と話をしていればなぜか話題が脇道に逸れてしまうのだが、なぜだろう。俺が主に色々と質問してしまうのも悪いが、それにノリノリで答える彼女も彼女だろう。そうこうしているうちに、あっという間に五稜郭駅に着いてしまう。


 「もう、着いちゃった。うけるー」


 「うけませんよ、こんなもんでいいんですか?話って」


 「全然足りないよー、そだ、じゃあ今日の帰り、六時の電車に乗ってよ!まだいろいろ聞きたいことあるから」


 「えぇ・・・、六時ですか」


六時というとそれなりに遅い時間だ。どれだけ学校で待ってないといけないのだろう。


 「お願い!色々恭ちゃんに教えてあげたいんだって」


 「わかりましたよ、俺が有力な情報知ってるとは限らないですけど、それでもいいんですか?」


 「大丈夫だよ! それじゃ、六時に駅集合ね!」


と言って、彼女は五稜郭駅の駐輪場に向かって走っていった。彼女はここから自転車で学校まで向かうのだろう。しかし、ここまでどうやって自転車をもってきたのだろうか。普通に上磯からここまで一時間はかかりそうなものだが。

 俺はというと、自転車はないので、当然一人で歩いて学校に向かうことになる。変な先輩だなぁと思いながら、また会う約束をしてしまったので、帰りにまたいろいろと聞かれるんだろうなぁ。そう考えながら歩みを進めるのであった。


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