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1484 青春白書  作者: 吉倉 光希
 第4章 「その願いの先に」
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第2節

~登場人物紹介~


道上 準貴:本作の主人公、高校一年生。イケメンだがオタク。

高橋 遥 :主人公の幼馴染。野球部マネージャー。

小室 江美:主人公の隣の席のクラスメイト。パソコン部。

喜田川 友哉:主人公の親友。黒縁メガネ。

棚木 美月:準貴のクラスメイト。江美の親友。毒舌。

 結局、学校に着いたのは一時間目が始まる時刻よりも少し遅かった。雨ということもあり、学校まで走る気力も湧かなかった。しかし、不思議なことに授業はまだ始まっていない。そしてクラスの皆が、俺が教室に入ってきた途端、少しざわついた気がする。なにかあったのか?と疑問に思いつつ、バッグの中に入っていたタオルで濡れた髪の毛を拭く。そして自分の席へと向かうと、小室さんが真剣な顔でこちらを見てくる。


 「おはよう、小室さん」


 「おはよう、準貴くん」


 「授業まだ始まってないみたいだけど、なんかあったの?」


 「準貴くん、まだ聞いてないの・・・?」


 「お前、ツイッター見てないのか?」


友哉まで神妙な顔つきでこちらに近づいてきた。俺が遅刻してきたのがそんなに珍しいのか、それにツイッターなら昨日の夕方に見たのが最後だ。いつもなら朝の電車で見たりするのだが、今日は信之助とおしゃべりをしていたからか、スマホはほとんど触っていない。


 「ツイッターか?昨日の夕方に見たけど、それ以降は」


 「昨日の夜、五稜郭駅で事故があったらしくてな、人が線路に落ちたって」


 「線路に落ちたなら上ってくればいいだけの話だろ。それにいま授業が始まってないのと何が関係してるんだ?」


俺が不思議そうにしていると、小室さんが彼女のスマートフォンの画面を見せてくれた。


 「これがニュースの記事なんだけどね、線路に落ちたの、女子高校生らしいの」


 「で、今朝から先生方が皆、忙しそうにしててさ。俺がさっき、学級日誌取りに職員室に行ったたんだけど、後にしてくれって言われちまって。池田先生、朝のホームルームにも来てないんだぜ。それで、今たまたま学校に来てないのが」


 と友哉が言いながら、うちのクラスのひとつだけ誰も座っていない席を見る。


 「遥、学校来てないのか・・・」


いやまさか、と思いつつ、五稜郭駅にビニールシートが張ってあったのを思い出す。そういうことだったのか。少しだけ嫌な予感がする。


 「それでね、遥ちゃんにメッセージ送ってるんだけど、いまのところ誰も返事来てなくて」


 「まさか、遥が線路から落ちたってのか、っていうかその女子高生、いまどんな状態なんだ?」


 「ニュースでは、近くの病院に搬送されて、意識不明の重体って書いてあるけど・・・」


小室さんが不安そうにそう教えてくれた。三人で話していると、棚木さんも心配そうな面持ちで、こちらに近づいてきた。


 「それに、遥ちゃん、ツイッターの更新が昨日の夕方で止まっているのよ。だから準貴が、なにか知らないかなって、みんなでずっと話してたんだけど」


 「すまん、俺は特になにも。いま二人から初めて聞いて、驚いてるよ」


 「そっか。お前も学校来るの遅いから、どうしたのかって話してたところでさ」


 「俺はただ単に乗るバスを間違っちまって、てんやわんやだったんだ。それで学校遅刻って感じだ。でも確かに遥のやつ、いつも乗ってくる電車に乗ってこなかったから、おかしいなぁとは思ってたんだよ」


と三人に現状を報告しながら、スマホに目をやると、メールが数件来ている。


 「・・・。親父じゃない人から?」


このご時世、メールを使う機会は昔ほど多くなくなった。今はメッセージで届くのが主体だ。メールといえば、親父か、あるいはスパムの類のものばかりなので、あまり目を通さないのだが、無題のが一件だけあったので、宛先を確認してみると、


 「・・・遥から」


 「!?」


三人だけでなく、クラスの皆が、俺の方を注目している気がする。


 「受信日時・・・、昨日の夜だ。題名:無題 本文:空欄・・・」


 「空メールってやつね・・・」


 「あいつ・・・、ウソだろ?」


遥に限って、と言いかけた一瞬、今朝の信之助の言葉を思い出す。


 『もしかしたら・・・、ってことも有り得るかもしれない』


最悪のシナリオが、頭をよぎる。もしかしたら、本当にもしかするのかもしれない。


「なぁ、小室、棚木、あいつ、野球部のマネージャーのことでなにか、相談したりしてなかったか?」


 「特にそういった話は聞かなかったけど」


 「わたしも」


二人がしばらく考え込んで、個々の答えを出すも、めぼしい情報は浮かんでこない。


 「空メールって、なにか伝えたいことがあったんですかね」


小室さんがふとそんなことを口にする。画面を占める空白が今にもなにかを訴えかけてきそうだ。しかし俺にはそれが何かが、残念ながら今は分からない


 「俺がもし、これを見て、なにかアクションを起こしていれば」


と言いかけたところで、友哉がそれを制止する。


 「何言ってんだよ。今それを考えたところで、現状が変わるわけでもないだろうし、それにまだ遥ちゃんって決まったわけじゃない。気にし過ぎだよ」


 「そうよ、友哉の言う通り。遥ちゃん、まだ家で寝ているだけかもしれないし。だから。ここで考えたって仕方がないわ」


 棚木さんが少し優しい顔で友哉の言葉に追加する。


 「・・・」


しかし、分かってはいても、やりきれない。そんな気持ちが自分の中を蝕んでいく。


 長い沈黙を破ったのは、一時間目の終わりを告げる鐘だった。少し遅れて、担任の池田先生が教室に入ってくる。


 「すまん、遅れた、申し訳ない。少し事情で立て込んでいてな。次の授業は国語の予定だが、それも一応自習だ。途中で別の教科の先生が来るかもしれない、そのときはその指示に従うように」


と告げた後、友哉に近づき、日誌を手渡す。


 「はい、学級日誌だ。すまんなさっきは」


 「いえ、でも先生。これって・・・」


友哉が不安を口にする。


 「あぁ、恐らく君たちの思っている悪い予想は当たっているだろう。私たちもまだ詳しいことは把握しきれていない状況だ。もう少し待っていてくれ。分かり次第、必ず報告する」


と言い残し、足早に教室を去っていった。


 「行っちゃいましたね・・・」


 「悪い予想は当たってるって、本当なのかよ」


 「そう言うってことは、きっと遥ちゃんなのね・・・」


 「・・・」


先ほどの池田先生の言葉が、またさらに気まずい沈黙へと教室内を陥れる。


 「あー、もうやめだやめだ。準貴、ちょっと付き合え!」


 「おい、どこいくんだよ」


 「外の空気吸いに行くんだよ」


 「外雨だぞ?」


 「うっせぇ、いくぞ」


 「おい、ちょっと待てよ」


小室さんと棚木さんは、だいぶきょとんとした顔をしていたが、友哉はそんなことお構いなしだ。俺は教室から強引に引っ張り出されてしまう。


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