第1節
~登場人物紹介~
道上 準貴:本作の主人公、高校一年生。イケメンだがオタク。
高橋 遥 :主人公の幼馴染。野球部マネージャー。
小室 江美:主人公の隣の席のクラスメイト。パソコン部。
喜田川 友哉:主人公の親友。黒縁メガネ。読み方は『ともや』
棚木 美月:準貴のクラスメイト。江美の親友。毒舌。
池田 万理子:1年E組のクラス担任。教師。
※この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません
昼食を食べ終わり、後は五時間目と六時間目の授業が終われば学校は終わりとなる。五校目は数学で、昼食後ということもあり、うとうととしている間に授業が終わってしまった。一応、頑張ってノートはとったつもりなのだが、今見返してみると、一体なんて書いてあるのかさっぱり分からない。まぁ先生も、頑張って起きていようとしていた俺の努力は認めてくれるだろう。・・・後でノート、書き直さないとな。
それより次の六時間目は情報処理、という商業科特有の授業で、コンピュータールームを使用した授業だ。また友哉に色々と聞かれ、いろいろと教えなければならないのか。最初は教えるのも少し楽しかったのだが、最近は少し面倒になってきた。というのも当然、自分の課題も並行して進めなければならないので、他人に教えてばかり、というわけにはいかないのだ。
そう身構えてはいたのだが、六講義目は自習だった。担当の池田先生が何か用事があるらしく、授業の初めに顔を出して、
「高校生になったからには、なんか、抱負とかそういうのがあるはずだ。書いて印刷して提出。あんまり短いのはダメだぞ。私は少しこの場を離れるから、隣の部屋とかに迷惑をかけないように、静かにな」
とだけ言い残し、教室を出て行ってしまった。あの人、本当に教師なのだろうか、しかし確かに中学校に入学した後も、三年間の目標みたいなのを書かされた記憶もある。決して適当になっているわけではないだろう。適当に書き進め、開始からおよそ三十分が経ち、教室が少しざわつきはじめたところ、皆、書くこと書いて、終わりにするモードなのだろう。俺も暇なので隣の喜田川の液晶画面を見ると、あまり進んでいないようで、白い部分の面積が目立つ。
「おい、進んでなさそうだな、全然」
「なぁ、大文字から日本語に戻んなくなったんだけど、どうやれば直るんだ?」
そんな初歩的なところでつまずいていたらしい。俺は呆れながらAキーの隣にあるキャップスロックキーをポンと押す。
「お前、早く教えてくれよ、もう時間ないじゃんか!」
「分からないなら、聞いてくれれば教えてやったのに」
「お前、真面目そうな顔でキーボード打ってたから、話しかけたら怒られるかと思って」
「なんの遠慮だよそれ、ほら、とりあえず進めないとタイムオーバーになっちまうぞ」
急いで彼が文面を作り始める。彼は、文字を打つこと自体はそこまで遅くないのだが、おもいっきり下を向いているので、液晶画面の打ち間違いには気が付いていない。これは確かに時間がかかりそうだ、そう思いながら自分は今年度の抱負を適当に書き終えたので、インターネットを起動し、とりあえず「ニコニコ動画」と検索する。
「さすがに開けないか」
予想はしていたが、学校側でこういったサイトはロックされているらしい。当然と言えば当然だが、今までこんな暇な機会もなかったので、色々と検索してみる。小学校の頃は、「脳内メーカー」というサイトが流行っていたのを思い出す。ボックスの中に自分の名前を打ち込むと、その人の脳内イメージとやらが出てくるというなんてことないサイトだ。これは小学校や中学校のサイト検閲に引っ掛かることがなかったので、これをクラスのみんなで遊んでいれば、授業一時間なんて簡単につぶせたのだ。当時は、その人の脳内に「H」なんて出てくれば、「お前、変態じゃん」とかいう話になり、クラスのみんなで大爆笑できたものだ。しかし、今、それをやってもただただ虚しいだけだろう。これも大人になった証拠なのかもしれない。その後も「ツイッター」や「ユーチューブ」「ピクシブ」などと検索しても、それはすべて学校側ではじかれてしまった。そんなことをしていると、前方から「誰だー遊んでるやつはー、全部見えてるぞー」と声が聞こえたので、急いでブラウザを閉じるボタンを押す。いつの間にか、先生が帰ってきてたようだ。前方には、生徒のモニターが監視できる機能でもあるのだろうか、きっとあるのだろう。怒られるのではないかと少し焦っていると、俺の前の座席に座っている男子が、「おい、青山、エロいサイト見てんじゃねーよ」と隣の画面を見て茶化す。青山くんはというと「見てねえよ、ばーか」と言いながら教室内は笑いに包まれる。
「まだ、中学生気分かよ、でも助かったぜ」
俺は内心少しだけホッとする。
「出来上がった奴は、印刷していいぞ、名前が書かれてあることを確認して提出して教室に帰っていいぞ。パソコンの電源を落とすの忘れないように」
と先生が告げると、皆が一斉に印刷を開始する。
「おい、印刷ってどうやるんだ」
隣の奴は案の定だが、俺もタイミングをずらして、少し遅らせた方が込み合わずに済むだろう。少し遅れて、俺と友哉の二人が教室の後方にあるレーザープリンターに自分の「三年間の抱負」が印刷された紙を取りに行き、二人で先生のところに提出すると、先生に声をかけられる。
「おい、二人とも、ちょっといいか」
「はい、なんでしょう」
もしかして、先ほどのことを怒っているのだろうか、恐る恐る近づくと、どうやらそうではないらしい。
「二人とも、今日は部活に行く予定だったのか?」
「えぇ、まぁあるなら行こうと思ってましたが」
俺が答える、よかった、あの件は別に怒られなかったらしい。
「そうか、いや今日な、私はちょっと用事があって放課後すぐ学校を出なければならないんだ。そこで吉田に鍵を預けようと思ったんだが、今日、彼女学校に来てないらしくてな。申し訳ないんだが、休みにしても構わんか?」
「はい、俺は全然いいですけど」
「俺も、無いなら帰ろうと思ってましたんで、大丈夫です」
俺と友哉がそれぞれ答える。部長さん、どうしたのだろうか、この時期に風邪でも引いたのだろうか。
「ま、ほかの先生に頼むって選択肢も無くはないんだが、若いとどうも仕事が回ってきてな、すまん二人とも」
「いいえ」
今、やたらと「若いと」の部分を強調した気がするけど、恐らく気のせいだろう。というか、先生、年齢いくつなのだろうか。
「それでは、棚木と小室の奴にも伝えておいてくれ」
「えっ、俺らがですか」
「もちろんだ、よろしく頼んだぞ」
「はぁ」
「よし、話は以上だ、ホームルーム教室に戻りたまえ」
話しが終わり、二人でコンピュータ教室を後にする。
「準貴、今日の部活無くなったら、暇になるな」
「いいだろ、家にあとは帰るだけで。そういう日もあるだろ」
「まぁ、それもそうか。ところで、二人に伝言、お前に頼んだぞ」
「俺か? まぁいいけど」
二人、というのは当然同じ部活の小室さんと、棚木さんのことだろう。
「お前の方が席近いんだしいいだろ。それに俺、棚木にさんざん言われた後だから」
まぁ、あれだけ昼間に言われたらこうもなるだろう。彼女に悪気はないんだろうけど、さすがに少し友哉には同情する。
「わかったよ、言っておく」
「頼むわ」
二人は渡り廊下を渡り、教室に到着した後、それぞれの席に着いた。
帰りのショートホームルームでは、副担任の先生がやってきて、池田先生は、用事があるので先に帰ったということが告げられた。その後は簡単な事務報告と、「帰り道、気を付けてください」というありがちなセリフの後、帰りのホームルームは流れ解散となった。帰宅する奴は既に教室を出ており、なんだかのんびりした時間が教室に流れている。俺は隣の小室さんに要件を伝えるべく、隣を向いてみると、ちょうど棚木さんとおしゃべりをしているところだった。
「二人とも、ちょっといいかな」
「ん?どうしたの道上くん、部活のこと?」
俺に呼ばれた小室さんがふわっとシュシュで結ばれたポニーテールをなびかせ顔をこちらに向けてくれる。彼女は本当に髪が長い。床にもう少しで着きそう、とまではいかないが、ちょうどおしりの部分くらいまで毛先が伸びている。なびく髪は、なんかシャンプーのCMみたいだな、と一瞬思ったりする。
「そうそう、池田先生に伝言を頼まれてさ、今日、先生用事があって、部長さんもいないみたいで、部活はお休みにするって」
「そっか、わざわざありがとう準貴くん。ねぇどうする美月ちゃん?」
「そうね、今日はせっかくバイトも休みだし、顔を出そうと思ってたのに」
「俺もそのつもりだったんだけど、休みだっていうし、仕方がないな」
と彼女らに概ね、伝言を伝え終わると同時に後ろのドアから遥が教室に入ってくる。
「あっ、いた。準貴―、かえろー」
「お前、部活は?」
「なんか、今日は室内練習だけだから、マネは帰って大丈夫だって。なんか先生たち、用事あるらしくて」
「どこの部活もそうなのか」
「アンタのとこも?」
「うん、一応、そういうことになってる」
「てか、アンタ、そういえば何部に入ったの?」
そういえば、遥には部活のことをまだ言ってなかったっけ。遥は不思議そうにしている。俺は遥の質問にはあえて答えず、小室さんの方に視線を向ける。
「じゃあ、私たちも帰ろっか」
「そうね」
「えっ、三人とも、同じ部活?」
遥が不思議そうに訪ねると、
「あとあそこにいる、喜田川ってやつの四人で。うちら同じ部活なんだ」
と棚木さんが答えてくれた。棚木さんと遥は一応面識はあるようだ。
「へぇー、そう。美月ちゃんと、小室江美さんよね。美月ちゃんは後ろの席で何回か話してるけど、江美ちゃんははじめましてね」
「そだね、よろしく」
「そうだ、みんなでどっか出掛けましょうよ」
遥が突拍子もないことを言い出す。しかし小室さんも、棚木さんも
「いいわよ、マックでも行きましょ、お腹空いた。美月はどうする?」
「私は全然大丈夫」
「マックいいね!いこいこ!」
女の子三人でテンションが上がっているけれども、俺は・・・?
「あんたもいいでしょ?ほら行くわよ」
「えっ、ちょっと待って、俺一人? 友哉も連れていくぞ?いいよな?」
「もちろん」
当然かのごとく、遥がニコッと答える。笑ってるとこいつ可愛いのに。てか今少し、棚木さんが嫌な顔をした気がするけど、見なかったことにしよう。友哉は自分の席でスマホをいじっているので、彼を呼びに行く。
「おい」
「おう終わったか」
「行くぞ」
「行くぞって、どこに?」
「マック」
「なんでマック?」
「そりゃあ・・・、棚木さんが腹減ったからだろ」
「????? まぁ、いいけどさ」
こうして、異色の五人が学校を出て、駅近くのマックに向かうのであった。




