第4節
~登場人物紹介~
道上 準貴:本作の主人公、高校一年生。イケメンだがオタク。
小室 江美:主人公の隣の席のクラスメイト。パソコン部。
喜田川 友哉:主人公の親友。黒縁メガネ。読み方は『ともや』
棚木 美月:準貴のクラスメイト。江美の親友。毒舌。
※この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません
その後は、普通に午前中の授業をこなしていき、今は四講時目の授業が終わったところだ。俺はというと、テーブルの上に自作のお弁当を広げている。そこに友哉が来て、同じく俺のテーブルでお弁当を広げる。机は俺のものを使い、椅子は前のやつのを拝借するのがいつものスタイルだ。昼食は食堂がないので、各自仲のいい奴らとおしゃべりをしながらお弁当を食べるのが通例だ。今日もいつも通り、友哉が俺の席の前に座り、二人でおしゃべりをしながら飯を食べる。ちなみに俺の前の席のやつは違うクラスのところへと行ってるため、友哉が座っててもなにも文句は言われない。
「なぁ準貴、やっぱり今日って部活あるんだよな」
「今日から一応あるって言ってたしな。一応行った方がいいんじゃないか?」
「楽しみなような、憂鬱なような」
「なんでだよ、昨日まで女の子いっぱいいるぜ、よっしゃー、って言ってたじゃねぇか」
「そうなんだけどよ、俺、パソコンとか全然できないし、大丈夫かな」
「それはちゃんと活動内容も聞かず入部したお前の責任だろ。それにうちは検定とかも一応あるし、機械音痴は克服しておいた方が身のためだぞ」
友哉の機械音痴、というかパソコンに対する無知さは折り紙つきだ。といえど三年間あるのだから、ゆっくり学習していけばよい、そんなことを考えていると、同じく隣でお弁当を食べていた小室さんがその話を聞いていたようで、
「えっと、もしかして、道上くん?」
「おぉ、どした?」
突然小室さんに話しかけられ、二人とも少しびっくりする。
「二人も、もしかして、パソコン部に入ったの?」
「二人も、っていうことはもしかして、小室さんも?」
「うん、私と美月ちゃんの二人」
二人、というのは小室さんの隣で一緒にご飯を食べている、小柄でショートヘアーで、朝小室さんとお話していた友達だ。当然名前は知らないが、美月ちゃんと言うらしい。
「えっと、道上くんと、喜田川くん?だっけ、私、棚木美月。よろしく」
俺たちの心の声を読んだのか、彼女は自己紹介をしてくれた。しかも俺たち二人の名前は既に知っていたらしい。俺は女子の名前を全然知らないというのに、彼女はもうクラスメイトの名前を把握しているのかな? 少し驚く。
「俺、喜田川友哉、二人とも、よろしく」
「はーい」
「よろしく」
友哉は自分の名前を一応述べて、それぞれがそれぞれの反応を示す。俺はというと、小室さんとは話したし、棚木さんも知っているようなので、別にいいか、と自己紹介は省略する
「二人も先生に誘われて?」
と小室さんが訪ねてくる。あれは誘われて、というか半強制的だった気もするが、安易に印鑑を押してしまった友哉も悪いので、何とも言えない。
「教室で部活入ろうか悩んでたところ、先生に紹介されてさ」
と喜田川が説明し、
「なんか半ば強制的に入部させられた感じだよ」
俺が付け加える。
「で、機械音痴なのに女の子がたくさんいるから入部したと」
「美月ちゃん、ちょっと」
と言いながらも小室さんも少し笑っている。おい、どう説明するんだよこれ、と思っていると、友哉は迷うことなく口を開いた。
「まぁね、って言っても機械音痴なのは俺だけで、準貴はめちゃくちゃ得意なんだぞ」
「ふーん、得意ってどのくらい?」
「なんか、色々知ってるぞ、最初の授業、俺に分かんないところ丁寧に教えてくれたくらい」
「お前、その説明はないだろ」
それじゃあ伝わるものも伝わらないような気がするのだが、彼的には話題を女の子の話ではなく機械音痴の話に持っていけたことで満足なのだろう、そのくだらない話術は少しだけ尊敬してやってもいい気がする。
「ま、俺たち二人は、とりあえず色々融通も利くみたいだし、暇してるくらいならお世話になろうかなってところだね」
「私たちも同じ感じかな。美月ちゃんと私となんか入ろうかなー、って話してたら、池田先生に勧められて。美月ちゃんはアルバイトあるんだけど、それでも大丈夫っていうから、一緒に入部したんだ。私は特にアルバイトとかしてないんだけど、帰宅部よりは就職とか進学に有利になるかなって」
「なるほど、俺たちはそこまで考えてはいなかったけど」
となると、以前先生が言っていた「うちのクラスの女子二人」というのは彼女たちで間違いなさそうだ。俺としてはちょっとラッキーな気もする。少し気になっていた女の子とお近づきになれるチャンスだ。まぁ、そううまくいかないってのも知ってるけどさ。でも少し期待しちゃうよね。
「ところで道上くん、お弁当美味しそうね」
棚木さんが突然、俺のお弁当を指差し、そう言った。
「そうか?どこにでもある一般的なお弁当だろ。冷凍食品ばっかりだし」
「でもその唐揚げ、冷凍じゃないでしょ。手作りの感じがする」
「そうなのか?準貴」
喜田川が疑問の声をあげる。
「よくわかるな・・・。唐揚げと卵焼きは自分で作ったやつだよ」
「へぇ、自分でお弁当作ってるんだ、道上くん、女子力高いね」
小室さんが恐らく素直に思ったのであろう感想を述べてくれる。俺としては少し誇らしげなのだが、何故か棚木さんが少し呆れている。
「あんた、このお弁当を見てその感想しかないの?おかずの一部が冷凍食品とはいえどきちんと彩りが考えられているってことに気が付かないと。それに見てみなさいよ、卵焼きの形、巻き方も綺麗でそれに、端を切り落としながらきちんと高さが均等で切り口も綺麗。唐揚げはそれ、冷めても美味しいように小麦粉の他に片栗粉を混ぜているのよ、それを朝早く起きて自分で作ることがどれだけ難しいことか」
「う、うん・・・」
棚木さんの力説に小室さん、どころか喜田川も少し引いている。だが作った本人としては、自分の料理を分かってもらえる以上の喜びはないだろう。
「てなわけで道上くん、唐揚げ一つちょうだい」
「えっ、私も欲しい」
「あんたはダメよ、もっと唐揚げのなんたるかを学んでから出直してきなさい」
「えぇー、美月ちゃんずるいー」
これは苦笑いするしかないだろう、二人にあげたいのはやまやまだが、そんなにあげたら俺の分がなくなってしまうので、とりあえず今回は一個、棚木さんに分けて我慢してもらう。いただきます、と言いながら棚木さんはパクリと一口で食べてしまう。
「・・・、ほら、ちゃんと下味もついてる。前日とかからちゃんと下準備しているのよ」
「こいつのツイッターの画像、料理ばっかりだもんな」
「いいだろ別に」
非リア充の俺は、料理を作ってくれる彼女もいないので、一人で自分の飯を作れるようにならなければならないのだ。しかし、一つ気になったのが、小室さんと棚木さんの二人、つい先月に友達になったという割にはとても仲が良さげだ。
「二人とも、もしかして中学校が一緒だったりするの?」
「美月ちゃんとは中学校三年間クラスが一緒で、その頃からずっと友達だったんだよね」
「唐揚げ美味しかったわ、ありがとう道上くん」
二人でばらばらの会話をしているが、なるほど、イメージ的には俺と遥みたいな感じなのだろうか。北高はそこそこ大きな学校だから、同じ中学からの友達が、同じ高校でもクラスが一緒になるということは比較的有り得ることなのだろう。それにしてもこの二人のこのこなれている感じは、見ていてとても微笑ましい。
「ってことは、四人が部活とクラス、三年間一緒になる仲間ってことになるのか」
友哉がそういうと、一様にしてそれぞれの顔を見回す。基本的に商業科、普通科共に三年間クラス替えはないので、このまま何事もなければ、いまのクラスが、卒業式までのクラスメイトになるはずだ。
「こんな女の為に部活に入った奴と、三年間一緒なのか、憂鬱ね」
「美月ちゃん」
先ほどの話がまだ続いていたとは、棚木さんはまだ忘れていなかったようだ。友哉も俺も完全に話をそらすことができたと思っていたのだろうが、残念ながら、そう甘くはなかったようだ。とはいっても言い訳はできない。どう言い訳しようと、それは事実なので仕方がないだろう。俺からは友哉が既に少しだけ顔がひきつっているように見える。
「ま、私は基本アルバイトが不定期だけど入ってるから、そんなに部活には顏出せないと思うわ。それでも一応よろしくね、準貴くん、あと、・・・誰だっけ」
「美月ちゃん」
「いいだろ、女の子がいっぱいいる部活に入りたいって思うのは、普通のことだろ」
友哉が突然強気の発言をする。
「開き直ったな、こいつ」
「最低、不埒な男」
「美月ちゃんってば」
小室さんもまた、苦労人なのかもしれない。彼女のせめてもの優しさが今は心に染みる。そして俺はちゃんと名前を呼んでもらえたのは、きっとさきほどの唐揚げのおかげだろう。人の心をつかむ道は胃袋から、ってのは、あながち間違いじゃないのかもしれない。




