馴染み始めた日常×兄弟喧嘩
明けましておめでとうございます。約一か月と長いこと更新が止まってしまいすみませんでした。
また、ぽこぽこ更新しますので呆れずに楽しんで下されば幸いです。
あの大騒ぎから数日が経った。
「皆、ご飯持ってきたから器出して」
数日たっても、やっぱりアンとの距離は縮まらないけど……でもドゥとトロワは何となく世間話が出来るくらいには仲良くなったかなぁと思っていたりするんだけど。実際彼らがどう感じているかは分からない。
「分かったんだな」
アンとドゥとトロワにはここ数日、畑作りを手伝ってもらっている。特に私がするのは少々難しい枯れ葉集めとか、薬草集めとか、他にも色々とね。その代わり私は彼らに食事と住む場所を提供しているわけで……。
「さっさと寄越せっつーの!!」
「……」
老木の幹を使わせていただいて温泉横に建てられた物凄く小さい小屋から、アンとトロワが顔を出しいつもの様に文句を叫び、そして始まる食事風景。
「はいはい。さ、器出して?」
一応たんまりと両手いっぱいに持ってきたのだけど、この調子じゃ足りるかどうか……。
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騒がしい食事も終わり、また各々の作業に戻っていく私達。
私は地下源泉にある泥を掻き集め畑に運び、たまに見つける化石みたいなのは今のところドゥに頼んで彼らの小屋に保管してもらっている。アンはブツブツ言いながらも畑を耕してくれているし、ドゥは発見した植物や石、化石なんかを保管したり手入れしてくれる。……そしていつも気が付くとふらふらっとどこかへ消えてしまうトロワは、意外なことに動物たちに好かれるらしく小動物たちに教えてもらったとかで食べられる木の実や割と簡単に育つ種やもう亡くなってしまった動物の骨や毛皮を貰って来たりして、たまに私に分けてくれるから何となく悪い子ではないのだろうと思う。
「なぁ、もうそろそろ畑になんか植えろよ」
本日何度目か忘れたが、兎に角地下源泉から戻り手に持っていた泥をよいしょっと畑の一角へ置いた瞬間にそれを黙って見ていたアンが、私作の木製鍬を杖の様につきながらそう言った。
「ん?もうそんなに耕してくれたの?」
そう言いながらもそろりと視線を動かせば、確かに予定していたよりも結構広い範囲が耕されて、地下源泉の土や森の木の葉とミックスされてふかふかの土に様変わりしていた。
「おぉ!!ってトロワ……君ねぇ自由過ぎるでしょ」
その時、ちらりと視界の端に何か……じゃなくてトロワが映り良く見れば、彼は自分の持っていた種や何かの実を何処から持ってきたのか知らないけれど綺麗な石で囲んだ内側に埋め、しっかりと自分の場所を確保していた。
「あぁぁぁ!!」
そしてその事実にやっと気が付いたらしいアン。真面目に驚いたらしく杖にしていた鍬を放り投げ、トロワへ向かって走り出す。そして始まる兄弟喧嘩……はぁ、まじか?
「……ええっと、ドゥ?あのさ、取りあえずこの畑意外と広いし皆で使おうか?トロワみたいに石でも何でもいいけど自分のテリトリーは分かりやすくちゃんと印を付ければ大丈夫だと思うし」
温泉の横に立つ小屋のさらに隣。そこには巨大な桶がある。私のいる温泉は高温の為、彼らが直接手を触れることが出来ないため、少しの間冷ます目的で地面を一畳くらいの大きさに浅く掘り、そこに老木の破片と石ころを敷き詰めお湯を溜めて使っている。
そこで拾ってきた石や化石や薬草になりそうな草を洗い、乾かしていたドゥは私の声を聞くといったん手を止め……いまだに喧嘩を続ける自分の兄弟を見つめながらぽつりと
「その方が良さそうなんだな」
とだけ言うとまた作業へと戻ってしまった。
「……」
えっ?!それだけ?!止めてくれないの!?彼が2人を止めてくれると思い話しかけたのに空振りに終わった私はどうしたら良いのか分からずに……とりあえずまた泥運びに戻りましたトサ。