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恋して動く君の時間  作者: 茉莉レイ


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第6話 確かな変化と無意識下にある感情

 時刻は22時を過ぎていた。

 未だに香恋からは連絡がない。


「アイサっていつも何時くらいに寝てるの?」


「私は周りの人間に合わせていたな」


「そうなんだ! 私23時くらいにいつも寝てるんだけど、それじゃ遅いとかある?」


「私のことは気にするな。問題ないさ」


 無理してないといいんだけど。


「じゃあ、そのくらいに寝よっか!」


「分かった」


 スマホを開いて動画を見ようとしたと同時にドアをノックする音が聞こえた。


「莉亜羅〜ちょっといいか〜?」


 お父さんだった。


「うん! 大丈夫だよ!」


「見てくれ! 理事長に早速許可もらえたぞ!」


 スマホの画像を見せながらそう言ってきた。


「え、早くない! もう?!」


「ちょうど向こうから電話してきてさ。ついでに言ったらこれだよ!」


 あまりに一瞬過ぎて感情の整理がつかなかったが、一安心した。

 

「じゃあ明日からアイサも通えるの?」


「学校の方まで行って書類書いたりしないとだから、まずはそれで行ってもらってって感じかな」


「了解! 伝えておくね!」


 私はそう言い部屋に戻った。


「アイサ! 聞いて!」


「なんだ? 妙にテンションが高いな」


「何とね! 理事長から入学許可でたよ!」


「随分と早かったな」


 アイサの表情はいつも通りであった。


「嬉しい?」


「ああ、嬉しいさ」


 アイサは表情を変えずにそう言った。

 これじゃあ本当に私が言わせてるみたいだ。


「嬉しいって言うのはね、こう胸の中からね、ぱあっ〜! って溢れ出る感じなの!」


「すごく抽象的だな。ぱあっ〜! ってのは何だ?」


「ん〜説明は難しいんだけどね、なんか溜まっているものが外に出ていく感じ」


「なるほど。トイレで用を足すみたいな感じか?」


「言い方! なんか汚いけど、まあ、そんな感じなのかな?」


 あまり認めたくなかったが、確かにそんな感じなのかもしれない。

 それにしても出してくる具体例が面白いな。


「そうか。確かに感情の放出は必ずしも非物理的なものでしか分からないとも限らないのか……」

 

 アイサはそう言い何か考えている様子であった。


「アイサ?」


「ん? 何でもないさ。感情というものは難しく奥が深いんだなと思っただけだ」


「まあ、深いよね〜」



「もう23時になったぞ。寝るか」


「あ、ほんとだ! あっという間だね!」


「ああ。今日は長い人生で一番濃いように感じたよ」


「何だかそれは嬉しいな!」


 長い人生ってまだ寿命の2割くらいしか生きてないだろうに。

 長く感じる人生だったのかなと私は思った。


「じゃあ、おやすみ」


「うん! おやすみアイサ!」


 私は床の敷布団に、アイサはベッドに寝てもらった。


 アイサはきっと気づいていないだろう。

 私と初めて会った時と今とではアイサの雰囲気が全然違うということに。


 あの子の事をもっと知りたい。

 今ある気持ちはただそれだけだ。


 今日1日の疲れからなのか2人は一瞬で眠りについた。




「莉亜羅〜? 浮かない顔してるね?」


「え、あれ? 香恋?」


「ん? そうだよ、大親友の日比野香恋だよ!」


 周りは放課後の教室のようで、生徒は私と香恋以外はいない。

 香恋とはパンケーキを食べて、トラブル発生して、連絡すらくれなかったはずじゃ……


「私って何してた?」


「帰りのホームルームから今に至るまでずっと寝てたけど?」


 寝ていた?

 つまり私は長い夢を見ていたのだろうか。


 パンケーキを食べ、家に帰ろうとした時アイサがいて、お泊まりする話になり、同じ高校に入ってくれる夢。


「パンケーキ食べに行かなかった? その後アイサがトラブっててさ」


「パンケーキ? アイサ? 何のこと?」


 香恋は分からないのだろうか、それとも私がおかしいだけなのか。


 いや、あれは夢ではない。ハッキリとしている。つまりこれが夢なのだろう。

 夢だと分かれば現実世界で聞きにくいことでも香恋に聞いてみよう。


「私ね、そのアイサってことお泊まりしたんだ」


「お泊まり? 女の子だよね?」


「そうだよ」


 私がそう答えるとパンケーキを食べた後の時のような表情になった。

 明らかに怒っている。それは私に対してと、きっと、アイサに対してだ。


「だ……」


「え?」


「いやだ……」


「何が嫌なの? 教えてよ!」


 夢ならどうなってもいい。私の中にあるモヤモヤを晴したかった。


「全部嫌なの! 莉亜羅を取られるのも、女の子と付き合ってイチャイチャするのも!」


 


「はっ! 良かった〜、やっぱ夢だ」


 香恋の口から衝撃の言葉を聞いたと同時に目が覚めた。

 身体中汗でびっしょりとしていて、心臓の鼓動も早くなっていた。


 まだ窓の外は暗く、時計を見たら3時であった。


「一旦水飲むか」


 アイサを起こさないようにそっと部屋を出て水を飲みに行った。


 夢とは言ってもかなり鮮明な夢であった。

 最後のあの言葉は香恋の心の中とは何も関係ないだろう。

 鮮明と言っても私の夢に香恋の心が反映されるはずもない。


 だとすると……

 あれは、私が思ってること?


「ないない!」


 恋愛経験はないし、女の子同士の恋愛とか、香恋と友達以上の関係とか考えたことすらない。

 けど夢で見たってことは、無意識のうちにとかあるのかな。


 まあ、考えたって仕方ないだろう。


「部屋戻るか」


 再び寝ることにした。



「おはよう莉亜羅。なんか顔色悪くないか?」


「だ、大丈夫……」


 結局あの後眠れないまま朝を迎えてしまった。

読んでいただきありがとうございます!


ぜひ、面白い、先を読んでみたいと思っていただけましたら、リアクション、ブックマーク、コメント等していただけると励みになります!

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