第3話 突然始まるお泊まり会
家の前に着いた。
「さあ早く中に入って」
2人で入るには傘は狭く、お互いずぶ濡れであった。
両親は仕事のため、家には誰もいない。
「服というものは濡れると肌にくっつくな」
「まあ、雨降るとべっとりくっついてきて不快だよね」
「ああ、不快というやつだな」
なんだかアイサの口調はどこか硬く感じた。
「アイサっていつもそんな口調なの?」
「よく言われるが、あまり分からないのだよ」
「そっか!」
きっと育った環境の影響だろう。
「今家誰もいないし、シャワー入っちゃってもいいよ!」
「お気遣い感謝するよ」
「じゃあ先入っていいよ!」
「不快感あるんじゃないのか? 一緒に入ればいいだろう」
この子は恥ずかしさとかはないのだろうか。
同性で年齢が近いといえど、今日会った人と一緒にシャワーを浴びるなんて私は恥ずかし過ぎた。
「私は大丈夫! 先入って!」
「そうか?」
納得してくれたかは分からないが、浴室へ行ってくれた。
「あの子と話すと調子が狂うな」
今日初めて会った謎の少女で、どこかほっとけないような雰囲気があるため家に入れたが、これからどうするのだろうか。
彼女は住む家がないみたいだから、ここを出たらまた外を彷徨うのだろうか。
「って、それ危なくないか? 事件に巻き込まれちゃいそう」
ここに泊まってもらうのが良いだろうか。
アイサがシャワーを浴びている間に私の服を置いておいた。
私の方が少し大きいが問題なく着られるだろう。
「アイサ! ここに服置いておいたから出たら黄色いタオルで拭いた後着てね〜!」
「親切にどうも」
そう返してきた。
冷たくしてる訳じゃないだろうが、可愛い返事には聞こえなかった。
「シャワー済ましたぞ」
そう言いながらドアを開ける音がした。
「じゃあ次私が〜って、なんで服着てないの!」
「今から着るところだ」
「じゃなく着てから呼んで!」
私は目を逸らしながらそう言った。
私に体を見られて恥ずかしくないのだろうか。
これじゃあ恥ずかしがってるのは私だけで、私が変みたいだ。
「今度こそ服着たぞ」
「アイサって前もこんな感じだったの?」
「こんな感じとは?」
「前も誰かの家に住んでたんでしょ?」
「ああ、1人暮らしの女性の家にな」
とりあえずは安心した。
「服着ないで普通に歩いたりしてたの?」
「どうだろうな。あまり意識してなかった。ああ、そういえばかなり昔、外出る時は服を着て歩かないとダメとは言われたな」
本当にこの子は何を言っているのだろうか。
「当たり前でしょ!」
「当たり前のことが分からなかったのだよ、私は。学んでいる所だ」
話せば話すほど謎が深まる。
そしてこの子への興味も強まった。
「とりあえず私もシャワー浴びてきちゃうから、あっちで座ってテレビでも見てて!」
「分かった」
濡れた体を軽く拭いたが、まだ不快感が残っているため早く浴びたかった。
シャワーを浴びて、服を着替えリビングへ向かうとアイサは眠っていた。
「疲れちゃったのかな?」
眠っていた少女を見ていると通知音が鳴った。
香恋からだろうか。
「香恋じゃないか」
通知を見ると両親からのものであった。
大雨の影響で2人は家に着くのが遅れるそうだ。
「晩御飯どうしよう、てかアイサどうしよう……」
とりあえず後でトラブルにならないよう友達が泊まりに来てる事を伝えた。
心配されないよう同じクラスの女の子と伝えておいた。
「お、返信はや」
案外簡単に許可してくれた。
そんな頻度は多くないが、友達が私の家に泊まりに来ることは何度かあったため抵抗感が無かったのだろう。
そんなことより私は心配だ。香恋が中々既読をつけてくれない。
ネットで見た方法でブロックされていないことは確認したが心配だった。
「私何か変なこと言っちゃったかな?」
明日からの学校が心配だった。
友達としていられなくなったらと不安になってきた。
そんな事を考えているとアイサが起きてきた。
「あれ、私眠ってしまっていたか?」
「あ、起きた! おはよう! 寝顔可愛かったよ」
「よく可愛いと言われるが私には分からないのだよ」
謙遜しているのか、わざとなのか。
アイサのことだから本当に分かってないのかもと思うようになった。
「なんか面白いね! あ、そういえばお父さんもお母さんもアイサが泊まること許可してくれたよ!」
「色々と助かるよ。えっと、ありがとう」
アイサは困惑した表情でお礼を言ってきた。
言葉と表情の違いに違和感があったが、それについて聞いたりはしなかった。
「そういえば2人とも遅れるってことでご飯を私達で作らないとなんだけど、料理できる?」
「料理ならできるぞ。昔田舎町のおばあと呼ばれる人に教えてもらった」
昔っていつだよと私は思ったが、口に出さなかった。
「そっか! じゃあ野菜切って欲しい! 私ご飯炊いておくから!」
冷蔵庫にある材料を見て野菜炒めを作れると判断した。
「分かった。何を切ればいい?」
「えっと、ピーマンと、にんじんと、キャベツかな!」
私は冷蔵庫から取り出しながらそう言った。
「分かった。愛を込めて作ろう」
「愛を込めて?!」
今までのアイサから出てくるような言葉ではなく驚いてしまった。
「どうしたのだ?」
「いや、なんかアイサの口から愛を込めて、って出るとは思わなくて」
「ああそれか、これはおばあの口癖だったのだよ」
そういうことか、色々な人の口癖がアイサに反映されているのか。
年が近く見えるのに濃い人生を歩んでいるように見えた。
「じゃあ、どんどん作っていこう!」
今日初めて会った2人の晩御飯作りが始まった。
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